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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
81/114

ロングライド3

翌朝、一行はブーカ船の船長室で目覚めた。

このニシン漁船で、

最も居住環境が良いこの船室を、

船長は彼らに提供したのだった。


ちなみに船長は、夜を徹して

ヴィーランド近海から西へ船を撤退させた


まあ、最も居住環境が良い船長室と言え、

6人も入るとさすがにギュウギュウだ。

一つだけあるベッドの上には、ストゥーカと

少年ボケコラが寝ており、床には、

力士二人とマネージャー二人が隙間なく

寝転がっている


ストゥーカは、ベッドの上で、ボケコラの小さな

身体を抱き枕のように抱いていた。

まだ、ボケコラは寝息を立てている。


タンクトップとスパッツ姿のストゥーカは

起き上がると、

力士とマネージャーたちに言った



「さすがに、ヴィーランドの大部分は

 過ぎたかしらね。後、2時間ほど飛べば

 西海にたどり着いて、その後、5時間ほど

 南西に飛んで西海沿岸の

 ロール都市国家連合にたどり着くでしょう。

 さて、今日も無事にロングライドが出来ることを

 祈りましょうl



どうやら、ブーカ船はここから南下して、

ヌルーン王国に行き、塩漬けニシンを

売りさばくみたいだ。


船長は、お礼にニシン樽を一つくれた


力士2人と少年ボケコラは、人化を解き、

上空にフーセンドラゴンとレッドドラゴンが

出現する


ボロボロの防寒着を着たマネージャー、もとい

フーセンライダー2人が空高くジャンプして

フーセンドラゴンに飛び乗った


同じくボロボロの防寒着を着て、ニシン樽を

抱え、背中に槍を背負ったストゥーカが言った



「それじゃあ、無事にヌルーン王国に

 たどり着いてね。

 くれぐれも、私たちのことを他言してはダメよ、

 今後は、欲を出してヴィーランド近海まで

 近寄らないこと、

 世話になったわね、さよなら」



船長にウインクして、上空に大ジャンプする

赤毛の女竜騎士の姿を、船員たちはポカーンと

見ていたのだった



「さて、再び私たちはドラゴンたちの

 注目の的になったわね。

 今日は、何体のドラゴンたちが

 絡んでくるのかしら」



しかし、予想に反して、遠くかすかに見える

ヴィーランドの陸地からは

何者も飛んでこなかった


流れるように過ぎていく眼下の

へリング海の海面を、3つの影が並んでいる。

そして、しばらく、それはそのまま

変わることがなかった


 

もう、そろそろへリング海を抜ける頃だろうか?

一行が安堵しかかったその時、


眼前に見えてきたのは、待ち構える

巨大なダークドラゴンだった



フーセンドラゴンが言った



「....伝説の暗黒竜セルフトークだ。

 別名”引き籠り竜”

 最後の最後に、我らは奴を相手に

 しなければならぬらしい」



それは全長30メートル近いグレートドラゴン、

その力強い巨体は闇を纏ったような黒色で、

頭部には魔族の上位種族のような角が

二本生えており、

顔の両側に水かきのようなものが張り出している


ズラリと並んだ牙を見せつけて威嚇しながら

その暗黒竜は言った



「ふむ、昨日....た、た、立て続けに...

 ドラゴン...どもを....

 けけ、け、蹴散らしていった....

 というのは貴様らか....いや、一人の時は

 饒舌なのだが....

 だ、だ、だ、誰かに向かって...

 しゃべるときは...どもって...しまうのだ」



ストゥーカが言った



「暗黒竜セルフトーク、私たちは

 あなたと戦う意思もなく

 その必要も感じないんだけど。

 一応、お願いするけど、

 私たちを見逃してくれない?」



こちらに向けて、直立するような姿で

ホバリングするセルフトークが答えた



「ワシがこうして...

 で、でで、出向くということで...

 他のドラゴンどもは....

 お、お、おとなしくしておる...

 その手前...戦いもせずに去っては....

 かっ、かっ、か、カッコ悪いではないか...

 だから誤解するな...ひ、ひ、一人の時は、

 ワシは...とても饒舌なのだ」



槍を構えながらストゥーカが言った

その赤い瞳は爛々たる闘志に燃えている



「今までどおり、引き籠って自分相手に

 ベラベラしゃべっていれば痛い思いをせずに

 すんだのにね、昨日ボコったドラゴンたちに

 泣きつかれたのかどうかは知らないけど、

 邪魔をする相手はなぎ倒すまでよ!

 ヴィーランドから出るための通行料だと思って

 相手をしてあげるわ」



セルフトークから吐き出されたダークブレスは

まさに暗き炎、

レッドドラゴンの炎のように高温ではないが

いやらしい暗黒魔法の力が付与されている


ボケコラは、暴流のようなダークブレスを紙一重で

かわしながら、ダークドラゴンに向かっていった



「ダウナー系の問題を抱えているのが

 多いな、ダークドラゴンは...

 メンヘラだったり、 躁鬱だったり、

 引き籠りだったり」



ボヤくボケコラの背中からジャンプする

ストゥーカ、

続けて、フーセンドラゴンからも

フーセンライダーがジャンプする


3人の竜騎士が、

伝説の暗黒竜セルフトークめがけて

降り注いでいったのだった




///////////////////////////////////////////




キオミは洞窟の入り口から出て背伸びをした


この入り口を除いて、この高い岩山のてっぺんは

平で、まるで闘技場のようになっている


そろそろ日も低くなって、夕食時だ


ふと目を凝らすと、空のはるか彼方に何か

3つの点が見える


しばらく見つめていると、その点はどんどん

大きくなってこちらに向かってきている


やがて、2匹のフーセンドラゴンと

1匹のレッドドラゴンが

目視できるようになった


キオミは腰が抜けるほど驚いた



「え?あのレッドドラゴンって

 ボケコラじゃない?

 あ、それと気球の町の

 フーセンドラゴンだわ」



キオミは必死に手を振った


全員が、暗黒竜セルフトークの

ダークブレスに付与された暗黒魔法の

瘴気によってフラフラだった


かろうじて意識を保つボケコラが言った



「....信じられぬ、あれはハイエルフの

 キオミではないのか?

 我は夢うつつをさまよっておるのか?

 でも、もはや限界だ、あの岩山のてっぺんの

 平なところに着地するしかない....

 しっかりしろ、ストゥーカ!」



しかし、ストゥーカはボケコラの背で

半ば気絶していた


やがて、キオミとドラゴンたちは再会した


フーセンドラゴンが説明する



「我々は、暗黒竜セルフトークとの戦いで

 ボロボロだ... 

 竜騎士3人は意識が朦朧としている、

 ハイエルフの娘よ、彼らを

 治療してやってくれ」



キオミが言った



「はあ?あの伝説の暗黒竜セルフトークと

 戦ったって!

 それで、セルフトークはどうなったの?」



ボケコラが答えた



「もちろん、海に沈めてやった」



キオミが言った



「しれっと大変なことを言うんじゃないの!

 グレートドラゴンをぶち倒すとかあんたたち

 何を成し遂げちゃったのか分かってんの?」



それは、マックス一行がレイデンにたどり着いた日

ストゥーカたちもついに、西海沿岸にたどり着いた

のだった!




 

 

 













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