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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
79/114

ロングライド

ヌルーン王国の東に隣接するネルーン王国、

その首都ベーレンでは

投獄されていた重罪人たちが一斉に、

馬車に乗せられ移動させられていた


甲冑に身を包んだ騎士たちが護衛する中、

鉄格子をはめられた馬車に向かって

人々が石を投げつけている


中には、全身が焼けている者たちもいる。

死刑囚なので、治療も適当だったのだろう


しかし、彼らが逮捕される原因となった

人物たちは、もはやこのベーレンには居なかった



.......時は3日ほど遡る.......



目の前に広がる、早朝のへリング海を眺めながら、

ストゥーカは大きく深呼吸した



「はああー、馬車に揺られること丸々3日...

 ついに、ネルーン王国の

 最北端にたどり着いたわ!

 もはやこの地域は、ほとんどヴィーランドの

 一部みたいなものらしいわね

 人間もほとんど住んでないし、ここで

 あなたたちの人化を解いても大丈夫だと思う。

 今まで窮屈だったでしょ、

 ほら、元の姿に戻りなさいな

 私たちは、防寒着に着替えてくるから」



結局、力士の姿のフーセンドラゴンは、

移動力に難ありだったので、

貸し切り馬車でネルーン王国の北端に

たどり着いた。


ネルーン王国は、

南はルーンの内海に面しているが、

北のほうは西海とつながっているへリング海に

面している。

さらにその北方は、ドラゴンが大量に棲む

ヴィーランドと呼ばれる魔境だった



ストゥーカは着替えるために、

木立の中に入っていった。

2人のフーセンライダーはその場で着替えた


ストゥーカが戻ってきた頃には、少年ボケコラと

2人の力士は人化を解いていた


鼻先から、眼窩の上部にかけて隆起した

精悍なフォルムの頭部、

全長はもはや15メートル近く、

翼を広げた幅は20メートル近くあるだろう。

燃えるような赤いレッドドラゴンを見て

ストゥーカが言った



「ボケコラ、なんだか久しぶりに会った気分だわ

 人化したときの少年も可愛いけど、

 ドラゴンの姿もやっぱり可愛いわね」



ボケコラが言った



「そなたの姿こそ、まるでエスキモーのようだぞ

 そのような厚着で、ちゃんと我に跨れるのか? 

 それにしても、フーセン先輩、相変わらず

 シャークマウスペイント描いてんすね」



体内のフーセンガスを膨らませて、

上空に浮かぼうとしている

2体のフーセンドラゴン


その丸い腹にはやはり、

ピンク色の口内にズラリとギザギザの歯が並んだ

シャークマウスペイントが施されている。

鱗がない濃紺色のゴムのような体表、

まっすぐ伸ばした長い首の先端の頭部は、

のっぺりとしてサンショウウオのようだった。


全長20メートルを超える巨大な風船と化した

フーセンドラゴンの上に、エスキモー姿の

フーセンライダーがジャンプして飛び乗った。



フーセンライダーが言った



「このペイントは敵から恐れられたものさ。

 魔法使いのチームを乗せて

 地上に雨あられと攻撃魔法を振りそそぐ

 その姿はまさにガンシップ!

 しかし、被弾してフーセンガスに引火したら

 大爆発を起こすという両刃の剣...

 だからこそ、こういうペイントでも施して

 常にハイテンションにならなければ

 やってられなかったのさ」



フーセンドラゴンも言った



「まあ、我々のことを

 スーサイドウェポン(自殺兵器)と呼ぶ

 心無い者もいたが、我々は常に大きな戦果を

 挙げてきたのだ。

 それはそうと、このまま北に飛んで

 ヴィーランド沿岸沿いを西に進み、

 西海沿岸にたどり着くという計画...


 まあ、確かにドラゴンが多数いる

 ヴィーランド付近を飛んでいれば目立たぬが

 危険も盛りだくさんだぞ

 

 縄張りに侵入されたと思って、ドラゴンたちが 

 こちらに向かってくる可能性が大だ、

 その背に人間を乗せていると分かれば、

 なんらかの興味を引くだろう。

 もしかして、攻撃的になるやもしれぬぞ」



エスキモー姿のストゥーカは、ボケコラに

乗りながら言った



「マックスたちが西海沿岸に

 向かうだろうってのは私の推測だけども、

 船で行きつく場所としては

 そこしか考えられないわ。

 ティルクの故郷のレイデンもあるし、

 何よりも今のところは、プラウダール体制の

 圏外だからね。

 それに、こちらも、連日の馬車移動で

 固くなった身体をほぐさないといけないから

 多少の戦いは大歓迎よ!

 んじゃあ、ロングライド、行きますか」



レッドドラゴン、ボケコラが大きな翼を

羽ばたかせた。

2匹のフーセンドラゴンが、口を大きく開けて

体内に空気を取り入れた


フーセンドラゴンの口内から

取り入れられた空気は、体内の破滅の炎で

熱膨張し、尻の辺りの開口から吹き出て

その反動推進でどんどん加速していった


こうして、3匹のドラゴンと

3人のライダーたちの姿は、

ネルーン王国の最北端の海岸から

ズンズンと遠ざかっていったのだった




///////////////////////////////////////////




数時間ほど飛んでいると、はるか彼方に

陸地のようなものがボンヤリと浮かび上がってきた


そして、一匹のドラゴンがまっすぐに

こちらに向かってきた


竜騎士としての脅威の視力でストゥーカは

すぐに気が付いた



「あれって、レッドドラゴンよ!

 ボケコラ、あなたも同種のドラゴンに

 会うのって久しぶりじゃない?

 さて、こちらに難癖をつけてくるのかしら?」



しばらく、そのドラゴンは一行から

少し距離を保ち平行に飛行していた


しかし、ふいに近づいてきた


ボケコラよりも少し大きいくらいだろうか?

一行に緊張が走る


そして、そのレッドドラゴンは言った。


大気を重く揺るがすような声だが、

その言葉はルーンの共通語だ



「あらあ、坊や、人間の女なんかを背に乗せて

 何をしているのかしら?

 もしかして、そいつにたぶらかされたのかしら?

 レッドドラゴンのくせに、こんな

 しょうもないデブ女に構ってないでさ、

 あたいと少し遊んでかないかい?」



デブ女と言われて、ストゥーカは分厚いフードを

脱いだ


険しい目で、隣のレッドドラゴンを見据える



「誰がデブ女だって?そういうあんたこそ

 下腹がボケコラよりも出てるわよ。

 ちなみに、私の場合は

 厚着しているだけだからね!

 ほら、見せてあげる」



ボケコラの背に跨りながら、防寒着を脱いでいく

ストゥーカ


フーセンドラゴンの一匹がたしなめる



「おいおい、早速、挑発に乗るでない!

 防寒着を脱いでしまったら凍えてしまうぞ!

 そこのレッドドラゴンよ、我々のことは

 放っておいてくれ、ストゥーカも早く謝るのだ」



しかし、ストゥーカとレッドドラゴンの雌は

同時に言った



「外野は黙ってて」 「外野は黙ってな」



初夏なのに、この地域の上空は結構な

寒風が吹きすさぶ。

しかし、モロともせずにストゥーカは

毛皮を脱ぎ棄て、タンクトップの薄着姿になった


長い赤毛を激しい風に後ろ向きになびかせ

挑発的な笑みを浮かべるストゥーカ


レッドドラゴンの雌は、

ボケコラと並んで飛びながら

ドスの利いた声で言った



「だからなんだってんだい!

 少し痩せてるからって調子に乗んじゃないよ!

 人間風情が、あたいの坊やを

 返してもらうからね」



ボケコラがぼそりとつぶやいた



「先が思いやられる...」








 




 

 




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