スターチェイサー3
ウォーヘッドたちの頭上には、
ゴールデンドラゴンの大群が旋回している
個々の強さではスターチェイサーには
及ばないまでも、
それに近い力を持つドラゴンたちが数十匹、
とても、自分たちが敵う相手ではない。
しかも、彼らは結構、怒っていた
特に、彼らの中で、一回り大きな
ゴールデンドラゴンの美丈夫が
結構ぶち切れていた
「あのクソ女4人組はどこに行った?」
朗々たる大声が大気を揺るがせる
ちなみに、チームチャーリーの4人は、
平な岩山の頂上で例外的にポツンと
盛り上がった岩場、
(決闘する前に、スターチェイサーが
佇んでいた場所だ)
その岩場に洞窟の入り口のようなものを見つけ、
そこに静かに隠れている。
小柄な老人の姿になったスターチェイサー、
つまり、村長サークが言った
「おーい、ボブや、一体なにを
そんなに怒っているのかね?」
ボブと呼ばれた、
その大きなゴールデンドラゴンが
サークの前に降り立った
長い首を白鳥のように曲線を作って
村長サークを見下ろすボブ
「村長、聞いてくださいよ!
あいつら、今朝、ワイバーンを無理やり
連れて行きやがったんだ!
いや、この兄ちゃんたちは丁重にこちらに
頼み込んでたんだが、
ワイバーンを貸すことに難色を示していた
村人たちを、あいつら、
密かに納屋に連れ込んでシメやがったのさ!
特に俺がどんな目に会ったか!クソ、畜生、
絶対に許さねえ、許..許さ...る許さん!」
全長20メートルを超すその巨大な
ゴールデンドラゴンは涙を流していた
サークは言った
「まあ、お前さんは男衆の中では
一番イケメンだからの...
辛かったろうな、ワシにもお前さんの
気持ちはわかるぞい。
でも、ワシに免じて許してくれりゃい!
皆の衆も、怒りを飲み込んで、
村に帰るのじゃ」
しかし、上空のゴールデンドラゴンたちの
怒りは、なかなか収まりそうになさそうだ。
ウォーヘッドたちは身をすくませていた
しかし、ふいにマックスがカラカラと笑った
ゴールデンドラゴンたちは、
グイっと効果音が鳴ったかのように
マックスのほうを一斉に見つめる。
しかし、マックスは笑い続けた
「本当に俺はバカだった...
スターチェイサーが居なくなれば
村の人たちは無力になってしまうとばかり
思っていた。でも、それは違ったんだ。
人間たちも同じかもしれない、
彼らは自分が思っているほど
弱い存在ではないんだ!」
マックスは、こぶしを力強く握りしめた
(なぜなら、常にあのお方が一緒だからだ)
サークは言った
「ワシは、自分が居なくなってしまえば
崩壊してしまうような、依存型の
コミュニティーを作ることなぞせぬ。
特に、人間というのは自らの足で
立ち上がって歩くことができる種族じゃ、
あの、神の戦士モドキどもに支配されるのは
人間の本来の姿ではないのじゃ」
そして、ふいに、チームチャーリーが隠れている
岩場の洞窟の奥から、澄んだ声がした
「その通りさ、マックス!
気球の町であなたが言ったこと、
覚えているかい?
小さきものの力を思い知らせてやろうって
あなたは言ったじゃない」
洞窟の入り口に近いところで、
息をすることさえ忘れて
岩壁に張り付いて一体化していた
チームチャーリーの4人の女性は、
無言のまま、驚きに満ちた表情になった
相変わらず、肩の辺りでバッサリと切った
透き通るような柔らかな色合いの金髪、
切れ長の目の中のその瞳は空の色、
形のいい唇はわずかに微笑んでいる。
茶色と緑色の混じったようなマントを
羽織っている
キオミは、壁に張り付くチームチャーリーの
4人に対して、声を出さずに口の動きだけで
「何をしてるの?」と問いかけた
リリーベルは、キラリと白い歯を見せて笑いながら
片手を口元にもっていって、人差し指を
口の前に立てた
ジャミロクワイのVirtual Insanityの
PVのシーンのように、
細い通路の壁に張り付くメンバーの真ん中を
ずいずいと歩き、キオミは洞窟から出たのだった
こうして、ハイエルフのキオミは、
勇者マックスと再会したのだった。
マックスは、カラカラと、本心から楽しそうに
笑っている
つられて、キオミも笑顔になった。
キオミは言った
「実は、地上界のハイエルフの長老オウルと
スターチェイサーは知り合いでね、
私は、こうしてスターチェイサーに
保護されて隠れ住んでいたね。
ルーンの内海諸国にハイエルフがいるのは
ちょっとまずいかなって思ってさ」
そう、今や数人しかいない、地上界に残った
ハイエルフたちは、長老オウルをはじめ、
ほとんどがイーストエア地方に居る
あっちの世界出身の二人のジャーナリストたちは
未だに行方知らずだ。
サブカメラで通信をするのは控えているので
その居場所をうかがうことはできないからだ
サークも言った
「うむ、実は行商人からもたらされた情報で、
この地上界に神の戦士モドキが出現して、
人類と魔族を支配しようとしているのを
知ったのじゃ
まあ、ワシは神々の大戦の後に生まれたゆえに
直接は知らなかったが、
オウルがよく神の戦士のことを話してくれた
からの
オウルと出会ったころのワシは
まるで、小型の金色の飛行竜のようじゃった。
その小さな体に、オウルを乗せて
いろいろな場所に出かけたものじゃ
それはそうと、一度、ワシは、
人化を解いて、神の戦士モドキに会おうと
飛んで行ったのじゃが
ニュルーン王国の国境付近で
対面したそいつとは
意思の疎通ができなかった。
ワシもあえて、ルーンの内海諸国に
立ち入ることなく去ったのじゃが、
その時に、西海の船乗りたちが
ワシの姿を目撃したのじゃろう
そこの戦士さんよ、じゃからワシは別に
人間たちの船を襲うことはないよ
安心して航海に乗り出すがよいぞ」
ティルクは頷いた
キオミは言った
「こんなところで立ち話もなんだからさ、
君らも洞窟の奥に来なよ!
私がかなり快適に過ごせるように改装したんだ。
そこで、お茶でも飲みながらゆっくり
話をしようじゃないか」
洞窟の壁に張り付いていた
チームチャーリーのメンバーたちは
即座に洞窟の奥に走っていった




