スターチェイサー2
ドラゴンの村から、さらに北の山岳地帯に
スターチェイサーの巣はあった。
セリスの聖眼レーダーでドラゴン反応を調べ、
村から借りたワイバーン三匹に分乗して
一行は向かった。
それぞれのワイバーンを操るのは、
勇者マックスと聖騎士リックと
ハイエルフのディックソンだ
ディックソンはかなり慣れた感じだったが、
リックは騎士として、マックスは勇者としての
能力を駆使して、なんとかワイバーンに
言うことをきかせていた
マックスの後ろには、戦士ティルクと聖女セリス
リックの後ろには、僧侶エリーと
魔法使いルーティー
ディックソンの後ろには、エルフのリリーベルと
ドワーフのイルガがそれぞれ並んで跨っている
マックスが言った
「いたぞ、ご丁寧に岩山のてっぺんで俺たちを
待ち構えているぜ」
リックが言った
「ああ、あの巨大な翼で自らを包み込むような
恰好で、いかにもな感じで待ち構えているな。
でも、俺たちは竜騎士ではない、
飛ぶのがやっとの状態だ。
ワイバーンから降りて戦おう」
ディックソンも同意した
「ああ、スターチェイサーにとっては
自分の村のワイバーンに対して攻撃するのは
ためらわれるだろうしな。
正々堂々と行こうじゃないか」
こうして、一行は、スターチェイサーが陣取る
岩山の麓に降り立ち、
徒歩で登って行ったのだった
やがて、岩山の頂上にたどり着いた一行は、
自らの羽で身を包むスターチェイサーと
対面したのだった
そこは、まるで闘技場であるかのように
ちょうどいい広さに平になっており、
まさに決闘にはもってこいの場所だった
もったいぶった動作でゆっくりと羽を広げて
全身を露わにするスターチェイサー。
まるで建造物のようなその巨体は
紛れもなくグレートドラゴンだ
この地上界に何体いるのかは
まだ分かっていないが、
幾星霜を経て、全長30メートルに迫る
巨体を持つに至ったドラゴンの王
「ふむ、よくぞ参ったな勇敢なる挑戦者たちよ!
我に対して穏やかに話し合いがしたいと
申しておったが、誇り高き黄金竜たるもの、
自らよりも劣る者どもと対等に
話すことなどありえぬ」
と言いつつも、チームチャーリーの姿を認めた
スターチェイサーは、一瞬、逃げようとした
マックスは見逃さなかった
「なんか、すでに及び腰な感じなのだが...
一応、昨夜、何があったのかは
俺もあえて聞いてない。
まあ、戦士の情けってやつさ!
酒の席での粗相など俺たちは気にしないから
安心してくれ。
とりあえず、ここで戦って
俺の力を認めてくれれば、
話し合いができるのだな?
それでは、早速、はじめようじゃないか」
マックスの認識では、昨夜、
村長サークの姿をとったスターチェイサーが、
チームチャーリーのハニートラップに
引っかかって本性を現してしまった
ということになっている。
なにか、恥ずかしいことがあったのだろう。
しかし、伝説の黄金竜の誇りを
傷つけたくなかったので、
深く聞くことはしなかったのだ
スターチェイサーはその大きな口を広げた
「手加減はせぬぞ、我のゴールドブレスに
耐えられるかな?」
おもむろに、ウォーヘッドたちに向けて、
憎悪のこもったブレスを吐き出してきた
吐き出されたそのブレスは強烈だった
黄金色に輝くその炎は、まるで
細かい金属の塊が無数に飛んでくるような
重みがあった。
しかも、スターチェイサーの開いた口は
人間がそのまますっぽりと入りそうなほどだ
まさに超大口径の火炎放射器だ
マックスは即座にその手に
勇者の剣を生み出した
セリスとルーティーとエリーは
魔法でシールドを作る
マックスは、勇者の剣でブレスを
切り裂きながら突撃した
「ティルク、リック、イルガ、
ディックソンは前衛だ、俺に続いてくれ
セリスとルーティーとエリーとリリーベルは
後衛でシールドと補助魔法を頼む」
シールド魔法が、炎の重量によって
押されている
セリスが言った
「まるで燃える金属のようだわ!
灼熱と物理的な重量を兼ね備えた恐るべき炎、
これがゴールデンドラゴンのブレスなのね」
リリーベルが3つの重なるシールドに
守られながら、前衛に補助魔法をかけている
マックスの勇者の剣は、
前方に、目にも止まらぬ無数の斬撃を放って
ゴールドブレスを切り裂いていた。
そのまま、スターチェイサーに迫る
ブレスを吐き切ったスターチェイサーは
驚きの声を上げた
「まさか、我のゴールドブレスを
切り裂くとはな!
そなたの剣はもしかして...」
しかし、なんとか黄金竜のブレスを突破した
マックスに、巨大な鍵爪が迫った
スターチェイサーの前足の鍵爪と、
勇者の剣がぶつかり合う。
火花を散らして、鍵爪が少しづつ
削られていくが、
グレートドラゴンの力に叶うはずもなく
マックスは押し戻された
しかし、マックスの背後から、
リックとティルクがそれぞれ左右に飛び立った
さらに、イルガとディックソンが
マックスの前方に飛び出して、
スターチェイサーの前足に
イルガのバトルアックスが振り下ろされた
しかし、ドラゴンの尻尾と前足と頭突きによって、
マックスとイルガとリックとティルクは
同時に吹き飛ばされたのだった
後衛の位置まで押し戻された彼らは
振り出しに戻った
ティルクがヨロヨロと起き上がりながら言った
「もしも、リリーベルの補助魔法で
防御力が強化されてなかったら
俺も危なかったな...
まるで、巨木のような尻尾が直撃したぜ」
イルガが言った
「私の斧の刃が欠けてしまったよ!
金色の鱗を剥ぐこともできなかった。
奴はノーダメージさ!」
強力なブレスを吐き、巨体に似合わぬ
俊敏さを持ち、固い鱗は武器をも跳ね返す。
ウォーヘッドたちが目の当たりにした
グレートドラゴンの力だった
リックが苦々しげにつぶやいた
「後衛はブレスを防ぐだけで手いっぱいだ
唯一、マックスの勇者の剣だけが
奴の元にたどり着ける手段だ。
しかし、たどり着けたとしても
あの反撃力と、なによりも防御力...
少なくとも、俺たちの武器ではダメだ、
勇者の剣で奴の弱点を狙うしかない」
マックスが冷静に言った
「ドラゴンの弱点は、喉元にある
一枚の逆鱗だけだと聞く。
グレートドラゴンともなると、
本当にそこだけが弱点なのだろうな」
勇者の剣を握るその手に力が入る
「たった一つだけの可能性でも、ゼロでさえ
なければ俺たちは何とかするさ、
皆、奴の弱点の逆鱗を狙うぞ!」
しかし、遠くでディックソンの声が響いた
のだった
「そうかな!俺は奴の弱点をもう一つ知ってるぜ!
エリー、例の棒を投げてくれ」
即座に、エリーは背負っていたカバンから
お仕置き棒を取り出し、
ディックソンに向かって投げた。
スターチェイサーの脅威的な動体視力は
それを捉えたが、同時に固まってしまった
もはや、不自然に木偶の坊となってしまった
グレートドラゴン...
その尻の辺りでお仕置き棒を受け取った
ディックソンは、そのまま得意げに
目指す穴に向かおうとした。
しかし、スターチェイサーが言った
「降参だ!降参する、降参するから
やめてくれええ」
こうして、ウォーヘッドたちは伝説の黄金竜
スターチェイサーに打ち勝ったのだった
その光景を呆然と眺めていたマックスは
ついに気が付いたのだった
「昨日、チームチャーリーが村長サークに
やったことって、もしかして....」
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結局、村長サークの姿に戻ったスターチェイサー
歯を食いしばって、苦悩の表情を浮かべながら
肩を震わせて泣く、その小柄なジジイの肩を
さすりながらマックスは言った
「そりゃあトラウマになるわな...
なんだか、気持ちよく勝った気が
全くしないんだが...
むしろ、最初から勝負はついていた的な
チート感すら感じる」
サークは、昨夜の出来事を洗いざらい話した。
プライドの高い、伝説の黄金竜にとって
つらい告白だったろう....
マックスの厳しい視線を受けて
チームチャーリーはそっぽを向いて
ソワソワしていた。
なぜか、セリスもソワソワしていた。
しかし、サークは気丈にも微笑んで見せた
「いや、例え、昨夜の出来事がなくて、
ワシにトラウマが
植え付けられていなかったとしても、
ワシはお前さんたちに敗北しておったじゃろう
勇者の剣を手に入れたお前さんには
勝てなかったと思うのじゃ」
小柄な身体をまっすぐに伸ばして
サークは続けて言った
「勇者マックスよ、
お前さんの望みはなんじゃ?」
マックスは言った
「ああ、あなたに俺たちの仲間になって
欲しいと思っていた。
でも、それだと、あの村の人たちはあなたの
庇護を失ってしまうんだろ?」
しかし、サークはケタケタと笑い声を
上げて言った
「ワシの庇護なぞなくとも、村人たちは
全員がすでに強力な存在じゃ、ほら、
あっちを見てみい」
ウォーヘッドたちは、サークが指さす方角を
見つめた
空を埋め尽くす金色のドラゴンの大群....
さすがに、スターチェイサーほどのサイズは
いないが、それでも、20メートル近い者、
それを超える者さえちらほらと居る。
中にはまだ若い、レッサードラゴンほどの
サイズのものも居た
しかし、それはすべてが、
ドラゴンの希少種である
ゴールデンドラゴンだった
エルフのリリーベルが肩をすくめて言った
「まんまと一杯食わされたね!
もしも、村人たちが全員、
ゴールデンドラゴンが人化した姿だと
前もって知っていれば、私たちも、
よく考えて行動したに違いないね」
僧侶エリーが言った
「村の家や設備を壊してしまった
弁償の件についてですが、
今一度、考え直させてくださいます?」
上空をぐるぐると旋回する、
ゴールデンドラゴンの群れに
圧倒されるウォーヘッドたちだった。




