スターチェイサー
なんだかんだと大部屋の中は大賑わいだった
村人たちが料理をもって押しかけ、
それを売りつけに来ているのだ
川魚をそのまま突っ込んだパイ、
ウナギのゼリー寄せ
羊の胃袋に何かを詰めたやつ、豆、卵フライ
清貧を旨とする聖騎士リックはそれでも
美味しそうに食べているが、
戦士ティルクとハイエルフの
ディックソンは辟易している
勇者マックスが言った
「まあ、この地酒と一緒に食べれば、
そこまで食えないほどではないな。
俺とセリスは元村人だから
このような料理は慣れているが、ティルクと
ディックソンのような都会人にはきついかな」
戦士ティルクが言った
「ああ、西海沿岸の都市では最近は皆、
舌が肥えてしまってね。
でも、このへリングはやはり俺たちの
ソウルフードだぜ!こいつさえあれば満足さ」
ティルクがずらりと並んだ料理の皿から、
へリングを出した
塩漬けニシンを塩抜きして、玉ねぎとハーブを
たっぷりかけた料理だ
「それにしても、チームチャーリーの連中は
どこに行ったんだ?」
聖女セリスはすました顔で
そそくさと豆スープを飲んでいた。
ふいに、大部屋の窓が激しく光り輝き、
すさまじい音が聞こえてきた
そして、大部屋の壁を突き破って、ドワーフの
イルガが飛び込んできたのだった
ウォーヘッドたちはすぐさま反応した
村人たちが逃げ惑う
イルガは、木の破片をポロポロと落としながら
立ち上がって言った
「あのジジイ、村長サークは
皮を被っていたのさ!
すぐに外に出て見てごらん」
イルガはその手にバトルアックスを持っている
ティルクはグレートソードを、リックは
ロングソードを、セリスはショートソードを
ディックソンとマックスは手ぶらで
大部屋に出来た大穴から、外へ飛び出した
そして彼らは見た
大部屋の建物から、広場を挟んで
真正面にあった村長の家が
跡形もなくなっている
そして、皆が一斉に頭上を見上げた
それは、上空にホバリングする
あまりにも巨大なドラゴン、
金色に輝く巨体は全長30メートルに迫るほどだ。
レッドドラゴンと比べると丸みを帯びた
賢そうな顔だが、その頭部も、人間を一飲み
できるほど巨大だった
マックスがぼそりとつぶやいた
「黄金竜スターチェイサー....」
金色に輝くドラゴンの瞳が、
眼下のウォーヘッドたちを見つめる
地上では、興奮するレッサードラゴンたちを
村人たちが必死に抑えている
村人の一人が、ウォーヘッドたちに言った
「おらたちの村長に一体、何をしただ!
やはりあんたたちはドラゴンハンターどもか」
イルガは、その村人のところに
ずかずかと歩み寄り、
斧の柄でその村人の顎を殴った
「おだまり!まさかスターチェイサーが
人化して、この村に隠れていたとはね!
この大量のレッサードラゴンどもも、
聖眼レーダーやドラゴン臭から
村長を隠すためのカモフラージュなんだろ!」
魔法使いルーティーと、僧侶エリーも
やってきた
地面に転がって痛がる村人を踏みつけて
乗り越え、エリーが言う
「人間に化けたドラゴンに酒を飲ませて
酔っぱらわせて、その正体を
暴露するという民話がありますが、
まさにその通りになりました!
スターチェイサーは私たちを
騙していたのです、
なんと恥知らずな行為でしょう」
乱れた衣服を直しながら、ルーティーも相槌を
打つ
「まったくであります!私たちがその正体を
暴くことがなかったら、
この糞ジジイを探して延々と
無駄足をこいていたことでありましょう。
人化して、信者たちの村に紛れ込むなんて
所詮はドラゴンの浅知恵、私たちに
そんな罠は通用しないのであります」
マックスの側の木から、ドサリと
エルフのリリーベルが落ちてきた。
尻もちをついたものの、すぐに立ち上がって
リリーベルが言った
「すっかりと私たち美女軍団の接待に
気を良くして酒をがぶ飲みしたあげく、
無残に正体を晒したね!何が、
英知と思慮に溢れたゴールデンドラゴンだ
笑ってしまうよ」
上空のスターチェイサーが、目をかっと見開いて
何かを言おうとしたが、
チームチャーリーの罵詈雑言がそれを打ち消す
マックスたち男性陣はあたふたとしていたが
ついに、スターチェイサーが
大気を揺るがすほどの大声量で言った
「よかろう、ここで暴れるわけには
行かぬゆえ、我は巣にてそなたらを待つ。
そこで、我の力を存分に思い知るがいい!
待っておるぞ、このロクデナシどもめ」
スターチェイサーは空を覆いつくすほどの
巨大な翼を羽ばたかせた
地上に暴風が舞う
ふと、ドラゴンの尻と胸のあたりから
何かが落ちてきた
僧侶エリーは、即座に地面を蹴って
高くジャンプし、
落ちてきた「お仕置き棒」と「洗濯バサミ」を
空中でキャッチし、急いでカバンの中に
それを仕舞った
地上に着地し、風になびく
ダークブラウンの長髪を片手で触りながら
エリーは言った
「チンピラみたいな捨て台詞と共に
去っていきましたね。
どうしますか?すぐに後を追いますか?」
しかし、マックスが言った
「まあ、スターチェイサーもこうして
正体を現した以上、言った通り
巣で俺たちを待ち受けるだろう。
セリスの聖眼レーダーで居場所を
突き止められるから、明日の朝に
出発しよう」
いつの間にか、レッサードラゴンと村人の
集団が、こちらを取り囲んでいた
恨みがましい視線を投げかける村人たち
しかし、エリーは彼らを一喝したのだった
「何か文句があるのかい!
私たちを騙そうとしやがって
このボロ布乞食軍団が!
あっ?家が壊れただって?
ほら、これで直しな」
懐から財布を取り出し、中から硬貨を掴み
村人たちに投げつけるエリー
リックがあわてて止めに入る
村人たちは、ちゃっかりと硬貨を拾いながら
一斉に、ブーブーと唇を震わせた
ブーイングに囲まれ、マックスが
肩をすくめながら言う
「まるで針のムシロだな。とりあえず、
チームチャーリーのお手柄だ、礼を言うよ。
この村に与える影響について
ウジウジと悩んでいた俺たちと違って、
君らは建設的な行動を選択したようだ。
ほんとに感謝する」
マックスに向かって、チームチャーリーの
4人の女性たちは輝くばかりの笑顔を返した
5人の女性たちの中で、
聖女セリスだけが真顔だった




