第二十五話 小津田伊良のホラ吹き
第二十五話 小津田伊良のホラ吹き
「あー、体育つっかれたー。次の授業なんだっけ?」
「次? 次は化学で移動教室じゃね?」
「うっそ、マジかよ。やべ、さっさと着替えないと……!」
「おいマケル、次は数学だぞ」
「えっ、イマイチ、だって今誰かが化学って」
「言ったのは小津田だぞ」
「ごみーん、間違えちったー」
「なんだ嘘かよ。あー、焦って損したぜ」
「でもマケルくーん、数学で宿題にされてた問題を黒板に書くの、今日はマケルくんじゃなかったっけ?」
「は!? 今日俺だっけ!? マジかよやってきてねぇよ……!?」
「騙されるなマケル、今日の当番は田辺坂だったはずだ」
「……伊良お前また嘘ついたのかよ。お前そういうとこ絶対直した方が良いぞ?」
「ごみんってー。つい言っちゃっただけだってー」
「つーか、マケルお前、自分の当番じゃなかったとしても宿題はやってこいよ」
「聞こえないね」
「まだ、授業まで時間あるし、イインチョに写させて貰えばいいんじゃねー?」
「伊良もたまにはまともなこと言うな」
「いや、忘れた宿題を他人に写させて貰うのってまともか……?」
「聞こえないね」
「そーいやさー、ぶっちゃけマケルくんとイインチョって、どうなん?」
「なんだよ、急に。どうって」
「前々から思ってたんだけどさー。イインチョと仲良すぎじゃないー?」
「ああ、それは俺も前から気になってたな」
「緒世とは小学校からの付き合いだから、女子の中では比較的話しやすいってだけだよ」
「本当にそーかなー? じゃあイインチョがこないだ、マケルくんのこと正直好きだって言ってたって言ったらどうする?」
「お前それもどうせ嘘なんだろ?」
「まあ、そうだけどー。じゃあさ、マケルくん的にはイインチョのことどう思ってんのさ」
「緒世のこと? ま、まあ、面倒見いいし? 頭良いし、手先も器用だし、明るいし、人気もあるし、いいやつだとは思うけど」
「ほほー、じゃあマケルくん的にはイインチョのこと、ぶっちゃけ好きなん?」
「は、はぁ? なんでそうなるんだよ! でも緒世はすぐ怒るし、すぐ殴るし、お節介だし、口うるさいし、変な小物とか集めるの好きだし……。うん? どうした伊良」
「マ、マケルくん。う、うう、後ろ、イインチョ……!」
「はあ? そんなに目ぇ見開いて、それもどうせ嘘なんだろ? ってイマイチも伊良も急にどこ行くんだよ! おい!」
「八張マケル、少し話がある」
「え、マジで緒世……? ちょ、誰か助け……! これ、死……!」
「嘘つきは泥棒の始まり」という有名な言葉がありますが、なんでこれ最終形態が泥棒なんでしょうね。泥棒の主な悪事って“不法侵入”とか“窃盗”とかだと思うんですけど。そりゃ泥棒した後に自ら罪を告白する人はいないでしょうから、嘘つきも含まれはするでしょうが。しかしやはり、“嘘をつく”行為が行き着く先というのは詐欺ではないかと私は常々考えていたんです。
往々にして詐欺行為は泥棒するよりも被害額が大きくなることが多いので、「嘘つきは泥棒の始まり」などというように嘘をつくことがあたかも犯罪の初期段階であるかのように表現するのではなく、むしろ「悪事は嘘つきに始まり、嘘つきに終わる」というように嘘つきは犯罪の基本であることを謳った方が良いのではないでしょうか。




