第十九話 鎖部好江の腐敗
第十九話 鎖部好江の腐敗
『おう、マケル。一緒に便所行こうぜ!』
『連れションかよ』
『いや、俺は大きい方だ』
『マジか』
「ふふふふ、『トイレ』で『おっきい方』かぁ」
「好江ちゃん、どうかした?」
『今日も購買のパンが売り切れ直前だったな』
『なぜか、コンビニのパンよりも美味しく感じられるよね』
『ん? マケルのサンドイッチの方が美味そうだな。俺のカレーパンと交換しようぜ』
『お前それ、超辛いカレーパンだよな!? 間違って買っちゃったからって人のを取ろうとすんなよ!!』
「ふふふふふふ、『マケルの方が美味そうだな』だって。じゅるり」
「さっきから、どこ見て…………マケルとイマイチ?」
『オラオラオラ、行くぞコラァッ!!!』
『ちょ、おま、一人で攻めすぎだろ!』
『ほら、マケル、パーッス!!』
『うおわぁっ!? 馬鹿野郎そんなパス受けられるか!! バスケは人に思いっきりボールを投げる競技じゃねぇよ!!』
「ふふふふふふふふ、相馬君が『攻め』で八張君が『受け』かぁ。しかも『攻め』が激しい……デュフッ」
「何を言っているのかさっぱりだけど、何だかアブナイ目になってるよ」
『えっ、イマイチ傘持ってきてねぇの? 今日昼から降水確率90%だったのに』
『今日天気予報見てねぇんだわ。でも大丈夫、優しいマケル君が傘に入れてくれるから』
『いやいや、ちょっと待て。これ折りたたみだから二人も入れないって。お前デカいし』
『少しキツいけど、無いよりはマシか』
『だから入ってくんなってば!!』
「ふふふふふふふふふふ、相馬君が『デカく』て八張君のが『キツイ』から八張君が嫌がって抵抗してる!! ktkr!!!」
「急に叫んでどうしたの? ていうか聞こえてる? おーい、好江ちゃーん?」
「ねえっ!」
「うわっ、急に振り向かないでよ。聞こえてたなら反応してよね」
「あのさ、緒世ちゃん。聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「あ、あの…………相馬君と八張君って、付き合ってるの!?」
「ええっ?? そんなわけないでしょ!?」
「だって、今もああやって仲良く相合い傘してるし……」
「……委員長、ずっと話聞いてたんだけど、鎖部さんに一言言わせて貰っていいかな」
「え、鶴瓶田君? いいけど?」
「駄目だコイツ、腐ってやがる。遅すぎたんだ」
男性が女性同士の恋愛に胸を熱くすることには、さほど何も言われないのに、女性が男性同士の恋愛に胸を熱くすることについては“腐っている”と表現されるのはどうしてなんでしょう。どちらも異性同士の恋愛に対し、それを見守る第三者として自らを置いていることに変わりはないはずなのに。
あるいは腐女子側が、自らを異常嗜好と認識し、背徳感を感じるために、自虐的に自分たちを“腐っている”と表現しているのかもしれませんが。




