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第十五話 中弐屋舞の妄想

第十五話 中弐屋(ちゅうにや)(まい)の妄想

「待てコラマケルこの野郎!」

「はっはっは、さらばだイマイチ君!! (ドンッ)イテッ」

「きゃっ」

「やっと捕まえたぞ、マケル……。テメェ、人の頭に牛乳ぶっかけておいてタダですむとは思ってないよなぁぁああああ!!??」

「まあまあ、イマイチさん落ち着いてー。どうどう、どうどう」

「いたた……」

「そういえば、大丈夫だった? イマイチのせいで周りが見えてなかったんだ。ごめんね」

「オイ、さらっと人のせいにすんなコラ」

「……心配ない。我は【天蓋の使徒(ルス・フェラシス)】だ。【幻想の保護(イマジンセーブ)】によりあらゆる物理攻撃は我には効かぬ」

「「…………ん?」」

「貴公達は【完全敗北(オールロス)】と【大体微妙(イマイチ)】だな。この世に混沌をもたらす貴公達が暴れていると、我は気分が良くなる。もっと破壊を衝動のままに行うがいい」

「(おい、マケル。やべーぞ、この女)」

「(同じクラスの中弐屋舞さんだけど、ちょっと痛々しいね)」

「何をひそひそと話している? ――――むっ! これは!!」

「どうかした?」

「【大体微妙(イマイチ)】!! 貴公の躰から異臭がするぞ! さては……【醜悪な臭悪魔(ヘドロデビル)】を召喚したというのか!」

「ヘドロデビルって……。違うよ、牛乳だよ」

「それにしても俺の呼び名の【大体微妙(イマイチ)】ってけっこう酷いな」

「ぐっ、すさまじいまでの悪しき波動……ッ!!」

「確かに、今のイマイチ結構くさいよ。早く水で流してきたら?」

「誰のせいだと……!! まあいい。昼休みはまだ時間あるし、水道まで行ってくる」

「いやー、危なかった。中弐屋さんにぶつかっていなければ、今頃俺の頭にも白い液体が降り注いでいたよ」

「それは何より。だが【完全敗北(オールロス)】よ。あの【醜悪な臭悪魔(ブスヘドロデビル)】は、たかが聖水で流したところで祓い堕とせはしないと思うが――――はっ!!」

「どうかしたの? (【醜悪な臭悪魔】の呼び方が若干変わってる……!)」

「ヤツが……接近してくる……ッ!? 3メキル、2メキル、1メキル…………そこだ!!!!」

「ん……? 何だ八張。ってまたお前か中弐屋」

「あ、花津夜さん」

「出たな……【金剛女帝(エンペラー)】…………ッ!? 今日こそ貴公を倒す!!」

「あ゛あ゛?」

「ひぃっ!? わ、我を一睨みで退けるとは……!? さ、さらば!!」

「なんかよくわかんないけど、中弐屋さんを撃退したみたいだね。さすが花津夜さん」

「たまに、ああやって絡んでくるんだ。すぐに逃げられるけど。何なんだ? あいつ」


中二病という言葉が世の中に浸透してからもう何年も経ちますが、実際中学生前後の年頃に、いわゆる中二病と呼ばれるような精神状態になるのは何故なのでしょうか。やたらと赤、黒、白の三色にこだわったり、難解な漢字にカタカナでルビを振ったり、無双するキャラを夢想したり、それらを全てカッコいいと思ったり。大抵において数年後に「なんでこんな恥ずかしいこと考えていたんだろう」と悶えるところまで、多くの人に共通する事項であります。

「人は何故思春期に中二病に罹るのか」、社会学・心理学分野の卒業論文に使えますかね?


追記・個人的に醜悪な臭悪魔しゅうあくなしゅうあくまのネーミングが気に入っています。

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