第十四話 木関乃葉香の残念
第十四話 木関乃葉香の残念
「ああ、憂鬱だ……」
「どうしたの乃葉香?」
「今日って期末テストあるよね」
「そうね」
「私、あれで赤点とったら夏休みの補習決定なんだ……」
「え? うちの学校って夏休み補習あったっけ?」
「成績の良い緒世は知らないかもだけど、実はあるんだよ。期末テストで最低限の点が取れなかった生徒のための特別補習」
「へー、そうなんだ」
「補習受けなきゃいけないのはわかるけど、補習を受けると遊ぶ時間とか部活行く時間が無くなっちゃうから、なるべく補習は受けたくないの」
「まあ、自ら進んで補習を受けに行く人はあんまりいないわね。でも、そんなに乃葉香って点数取れなかったかしら?」
「…………中間テストでは全教科の合計得点が三桁未満でした」
「ええぇ!!??」
「しかも、回答欄は全て埋めてあるのに……」
「つまり、自信を持ってとんちんかんな答えを書いてるって事ね」
「英語とか意味わかんない……日本語で書いてよ……」
「それじゃ英語じゃなくなっちゃうじゃない」
「古文もさ、あんなの日本語じゃないよ」
「昔はああだったんだからしょうがないわよ」
「数学も覚えた奴と違う形で出てくるし」
「あれは覚えたことをどう応用できるかっていう教科だもの」
「公民ってまず何の教科なのかすらわかんない。なに公民って」
「哲学的ね」
「物理は記号と公式ばかり出てくるし。でもミュウって記号はかわいい」
「それはわかるような」
「そういえば、化学の元素周期表にスペシウムって載ってなかったんだけど何で?」
「あれは空想上の物質名だから……」
「あーもう、とにかく勉強するのにうんざりだー……」
「しょうがないわね……。私がテスト勉強手伝ってあげようか?」
「緒世は世話焼きだねー」
「よくお節介って言われるけどね」
「一緒に勉強か……うーん……」
「なに? 私に教えて貰うのは不服?」
「いやー、教えて貰うのはありがたいけど。緒世、世の中には努力ではどうにもならないこともあるんだよ?」
「その台詞は凄い才能を持った人が言う台詞よ」
「色々諦めてる人が言う台詞でもあるよ……」
世の中にはびっくりするほど勉強の出来ない人がいて、遊んでばかりいるやんちゃ系の人ならともかく、ある程度勉強しているはずなのに、全くできない人も中にはいます。教える側はさぞ大変だろうと思います。
一方で、勉強はそれなりにできるのに一般的な常識や素養が身についていない人も多いです。私が驚いたのは中学生時代、給食の時間に同じ班だったとある女の子が言った一言です。
「レンコンってゴボウの太くなった奴じゃないの?」
そんな彼女は確か、農業系の高校に進学したと記憶しています。




