第十二話 灰宮夜美の勧誘
第十二話 灰宮夜美の勧誘
「そう言えば、マケルって高校ではサッカーやってないのよね」
「まあ、そこまで上手だった訳でもないしな」
「それで、高校ではダラダラと帰宅部を務めてるのね」
「帰宅部言うな。緒世は何か部活やってるのか?」
「いいえ、私は委員長としての仕事の他にも色々任されてるから部活には所属してないわ」
「任されてるっていうより、自分からお節介に首を突っ込んでるだけだと思うけど……」
「何か言ったかしら?」
「なんでもありません!!」
「こんにちは そこのお二人 仲が良い」
「ああ、灰宮か。まあ仲が良いと言えば仲が良い、かな?」
「夜美、何か用?」
「盗み聞き していたところ マケル君 どこの部にも 無所属なのね」
「ん? そうだけど」
「それならば 我らが部活に いざ入部!」
「灰宮って何の部活なの?」
「我らの部 名前は俳句 同好会」
「夜美は俳句を愛するあまりに日常会話も5・7・5でこなしてしまうのよね」
「なんだその 説明口調は 緒世さんよ」
「でもさ、俳句ってただ5・7・5で言えばいいってもんじゃないだろ。灰宮はちゃんとした俳句を詠めるのか?」
「大丈夫 私の実力 みせてやろう」
「…………」
「…………」
「窓の外 暑さに燃ゆる 蝉の声」
「お、おう」
「う、うん」
「なんなんだ その反応は 二人とも」
「いや、めちゃくちゃ上手い訳でもなく、かといって下手すぎることもなく、素人には判断しかねる句だなと思って」
「『暑さ』と『蝉』ってどちらも夏の季語じゃないの?」
「細かいわ そんなことは 気にすんな」
「いや、俳句好きなら気にしろよ」
「夜美って実はそんなに俳句が上手じゃないのね」
「本当は 俳句に目覚めて 6ヶ月」
「短いな」
「我が部活 ちなみに部員は 我一人」
「じゃあなんでさっき、我らが部活っていったんだよ」
「さあ君も 私と一緒に Let's俳諧!」
「断る!」
私は俳句を十七文字の制限の中でいかに「うまいこと」言えるか、という言葉遊びの類と捉えているので、私が俳句を作る時は口に出して詠んだ時の語感の良さや、いくつの掛詞や縁語といった修辞を盛り込めるか、情景や心理描写が読み手に伝わりやすいかどうか、などを重視して作ります。一番は句を読んで「面白いな」と思ってもらえるかどうか、ですが。
本文中の一句は、わざと微妙だなと思うように作ったので、それを見て「君、俳句作る才能無いよ」などと嘲笑することの無きよう、お願いします。
ただし、スレンダー美少女に限ってはその限りではありません。いくら嘲笑って貰っても、私は一向に構いません。




