クリスタルを砕くのにツルハシは要らない
ハジメは丸呑みにされた。だが――。
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!……
巨大な両生類の体内から、9回の連続した爆発音が響き渡る。化け物の石の牙の一部が内側から吹き飛び、その隙間からハジメが勢いよく飛び出してきた。
「ハハッ! 俺が選んだこのクラス、最高にクールじゃねえか!」
ハジメはスタミナを消費して大ジャンプを放ち、高い石柱の上へと陣取ると、残っているチャージ分である9発の魔法ミサイルを全弾解き放った。
ミサイルは空中で鋭く軌道を変え、化け物の疑似餌と両眼へと殺到する。ボスは苦悶の雄叫びを上げ、大きくよろめいた。
しかし、ハジメが地面に着地し、太刀を抜こうとしたその瞬間――彼を覆っていたアーマーが突如として消失した。
「なっ、どうした!?」
『通知:現在のレベルでは、すべてのチャージを使い切ると【英雄の装衣】は強制解除されます』
「くそっ! まあいい、今の装備でもまだ戦える。ボスにはかなりダメージが入ってるし……」
ハジメの思考は中断された。両生類が文字通り血走った目で猛然と突進してきたのだ。巨大な体で跳躍し、泥を滑るようにしてハジメを喰らおうと迫る。
ハジメは間一髪で横にステップして回避した。
ボスは同じ突進攻撃を執拗に繰り返した。ハジメは攻撃を躱しながら、その行動パターン(モーション)を冷静に観察する。
そして、ボスが再び同じ予備動作に入った。タイミングを完全に読み切ったハジメが動く。
(完全にタイミング(ジャスト)を合わせたぜ!)
ハジメは両生類の眼球を狙って太刀を振り抜いた。しかし――両生類は攻撃の直前で急停止した。ハジメの予測は外れ、渾身の斬撃は空を切る。
「何っ!?」ハジメは驚愕した。
直後、ボスは棍棒のように硬質化した疑似餌を横薙ぎに振り抜き、ハジメの脇腹にクリーンヒットさせた。彼の体はボールのように遠くへ吹き飛ばされる。
HP:1
ハジメは泥水の中に倒れ伏した。HPゲージはミリ残りの危険域だ。
(こいつのAI、マジで賢いな……俺の『読み』を読んできやがった)
ハジメはゆっくりと立ち上がる。
ボスは虚ろな瞳と石の刃のような巨大な牙を剥き出しにし、まるで悪魔のようにニタニタと笑っているように見えた。
(あの野郎……)
ハジメは太刀を強く握り直し、再び戦闘態勢をとる。
(俺のこのゲームでの『初デス』を、こんな所で迎えるわけにはいかねえ。油断した俺が悪かったが、二度目はねえぞ)
ハジメと『結晶化した両生類』は、まるで決闘者のように互いを睨み合った。
両者が同時に動く。ボスは再び突進のモーションを見せた。そしてハジメを噛み砕く直前で急停止し、またしてもルアーの棍棒攻撃へとフェイントを切り替えた。
「同じ技は、二度も聖闘士には通じねえんだよ!!」
ハジメは身を低くして棍棒を避け、そのまま空中で回転しながら太刀を振り抜いた。刃がボスのルアーを根元から切断する!
ルアーを失ったボスは、激痛に叫びながら後ろへよろめいた。
その隙を逃すハジメではない。左へ跳躍してボスの眼球を斬りつけると、狂乱して噛み付いてくるボスの頭上へと飛び乗り、残った眼球に連続で太刀を突き立てた。
「ハハハッ! 眼科の診察の気分はどうだ?」
ハジメが笑う中、ボスはついに力尽きて横倒しになった。
ミリ残りのHPのハジメと、同じく瀕死のボスが視線を交える。
「言っとくがな、さっきの一撃、個人的に根に持ってるからな!」
そう叫びながらハジメは空高く跳び上がり、ボスの急所に向かって最速の刺突を振り下ろした。
その一撃がボスの命を完全に絶ち、巨大な体は光るデータの粒子となって消え去った。
『ボス:結晶化した両生類』
『ステータス:討伐完了』
『報酬:クリスタルの疑似餌』
『レベルアップ:Lv 22 ➔ Lv 30』




