EpisodeⅨ「日常」
500PV超えました!
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さて、機体チェックも終わり、後は細かい調整をすれば完了と言うところまで来た。
そして、俺は今、資料が置いてあった部屋(作業ルーム)に居た。
「とりあえず、精度と射程距離を極めてくれ」
俺がそう言うとロボットは「了解!」と言って部屋を出て行った。
そして、入れ替わるようにROMANYさんが入ってきた。
「お疲れ様です」
「お疲れー」
俺はROMANYさんに労いの言葉を掛ける。
「調子はどうですか?」
「うーん、やっぱりKEIさんに勝てないかなー」
KEIさんとROMANYさんは敵を撃破する速度でいつも競っていた。
俺からしたら、どっちの速度も頭がおかしいんだけどね。
「KEIさんはこの部隊でも実力はトップクラスですからね。武神さんを除いて、ですが…」
「武神さんは比べたらあかん」
武神さんの戦闘スタイルは「突っ込んで切る!」。
完全に脳筋だ。
なのにいつもちゃんと敵陣から生きて帰って来るから、敵から「死神」とか「悪魔」とか言われてる。
チームメイトの俺達でもそう思ってる。
実際、機体名が『BLADE DEVIL』だからね。
「もうちょっとで地下演習場が完成するそうなので、できたらそっちで思う存分やってください」
「そっかー。楽しみだなー」
そんな雑談をしていると、武神さんが入ってきた。
「おっ、カメがこっちにいるなんて珍しいな」
「俺だってこっちに来ますよ」
そう言いながら苦笑いを零す。
最近ずっと自室で書類仕事をしていたからな。
武神さんがそう言うのもわかるにはわかる。
食料事情やこの辺の地理状況、森の外の情勢等々、やる事は多い。
今はその内の一つである武器の調整を行っていた。
「さっきロボットに武器の調整をお願いしたんです」
「へー、どんな感じにするんだ?」
「射程と精度をガン上げですけど?」
「え?」
俺がそう言うと2人とも間抜けな声で返してきた。
「精度と射程って…威力は?」
「ゲームみたいに体力ゲージをゼロにするような事しなくても、ヘッショで一撃ですから威力は要らないんですよね」
ここがゲームよりもいい所の一つ。
ゲームの場合は相手のアーマーをゼロにしないといけない。そのため、ヘッドショットをしたとしてもちょっとダメージが増えるだけで倒せない。
だから、ゲームでは威力重視にしてたんだけどね。
でも、ここはゲームとは違う。
頭を撃ち抜けば勝つ。
もし、撃ち抜いても倒せなかったらROMANYさんにでもバトンタッチするよ。
俺のスナイパー力はそこまで高くない。
実際、ゲームでの狙撃機体は敵が前線に出にくくするためぐらいしか役割がない。
敵が物陰から出てこなければ狙えないから基本は暇。
その間に指揮をやったりするんだけど。
「それでも、この世界に来てから調子がいいんですよね」
「精度が上がってるって事か?」
「はい、これ」
そう言って俺のシミュレーターの戦闘データを見せた。
「ミスゼロって…」
俺はここに来てから一回も的を外した事が無い。
正に百発百中だ。
「そこまで、スナイパーは上手くないんですけどねー」
「一度、俺をビルの窓を通して狙撃した奴が何を言う…」
「あれはまぐれですよ。はは」
「あ―そんな事もあったなー」と思いながら話していた。
あの時はツボに入ってしばらくずっと笑っていた。
しばらく、話して居るとロボットが一機入ってきた。
そして、「探索班が帰ってきた」との報告を受けたので自室に戻る事にした。
***
王城に戻ってきたシリカはすぐさまシリカの父『ロード・ローレン』のいる王座の間へと向かった。
シリカは国王であるロードの前に跪き、報告を行う。
「そのような者達が居たとはな…」
そう呟きながら、白く長い髭を触っていた。
その隣に居た第一王子の『ザナック・ローラン』が口を挟む。
「父上!このような戯言を本当に信じるおつもりですか!?異世界から来た等、信じられるわけがない」
ザナックの言った事はシリカが思っていた事と同じだった。
しかし、実際にROBOT・WORKSと会った彼女は、彼らが嘘をついているようには見えなかった。
それに、あの場にあった技術はこの世界の物とは思えないほどの高度な技術だった。
「兄上、今報告した事はすべて事実であります。私がこの目で確認しました」
「黙れ!貴様のような者の言葉など誰が信じるか!」
彼、ザナックは馬鹿だった。
長男でありながら、国の事を第一として考えず、いつも自分の私利私欲のために動いている。
そのため、現国王は次期国王を次男である『ライト・ローラン』に受け継ぐと言っている。
それを聞いたザナックはどうにか王座を自分の物にできないか考えているところだろう。
「ザナック…お前は黙っておれ」
国王の言葉にザナックは渋々口を閉ざした。
「して、その者との関係をお前はどうするべきだと考える?」
シリカはしばらく思案した後、答えた。
「友好関係を築くべきだと考えます。もし、それが無理でも敵対する事だけは避けるべきでしょう…」
「それほどの力を持っているのか…」
「はい」
王は少し俯いて考えた後、再び顔を上げた。
「取り込む事は可能か?」
確かに、この国の力にできるならそれに越した事はない。
しかし、彼らは慎重だ。
それに、こちらの意図をすぐに見抜き、それに乗ってくる事はないだろう。
もし、乗ってくるとしたら必ず裏があると思った方が良い。
それぐらい、あの男『カメ』は頭が回る。
「それは…厳しいと思います…」
「そうか…」
王はそう言った後、シリカに下がるように言った。
国民が傷つく様な事だけは避けなければ。
そう決心をするシリカだった。
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