第17話ー狼さんを発見したよ!
「ユウちゃんにとっては初めて討伐依頼だな。怪我しないで頑張れよ」
「はい!」
色々あったけど、無事門まで着いて、門番さんに門を開けてもらい外に出る。もう、何回もここを通っているから、門番さんに覚えられてしまった。知り合いが増えるのは、素直に嬉しいね。...まあ、門番さんは僕の名前しってるけど、僕は門番さんの名前知らないんだけどね。
さて、初めての討伐依頼だ。頑張らなくちゃね。…倒すのは初めてじゃないけどね。
今回倒す狼は僕がこの世界へと最初に降り立った森、迷いの森にいる。討伐する数は1体以上。僕とリリィは森の中を歩きながらあたりをリリィだけが少しだけ警戒する。普通はめいいっぱい警戒しないとだめなんだろうけど、そこはリリィだからね。Sランクの名はだてじゃないのだろう。
あと、どうしてリリィだけが警戒しているのかというと、僕はあたりに魔物がいないのがわかってるからなんだよ。なんでわかるのかは、もうわかるよね? そう、僕にはスキル‘空間把握’がある。それを発動し、半径1キロ内に何の敵もいないのはわかってるから、そもそも辺りを警戒する必要がない。なのでリリィだけが辺りを少しだけ警戒している。
「あ、そうだ。ねえユウ」
リリィが何か思い出したように僕はに聞いてくる。
「ん? どうしたのリリィ」
「…あ~その…あの、ね」
「?」
リリィは何でか知らないけど言いづらそうにし、頬掻いている。僕はいったいリリィが何を言いたいのかわからず首を傾げた。
「…宿に帰っってから言うわね」
「う、うん」
いったい何を言いたかったんだろうか…ものすごく気になるけど、おとなしく宿に帰ってからきくことにしようかな。――それに、範囲内に敵がかかったしね。
僕がなんとなくそういう風に言ってリリィを誘導させようと思い話しかけようとしたら、
「ユウ、こっちに行きましょう」
と言い、僕の手をつかみ僕が向かわせようとした方角に歩き出した。
(…あれ? もしかして、リリィも僕と似たようなスキルもってるのかな?)
僕は不思議に思いながらリリィを見る。それはもうじーっとみる。じーっと、じーっと、じーっと…
「…あの、どうかしたのユウ…? そんなにじーっと私のこと見て」
…うん、そうだよね。誰でもじーっと見られると嫌な気分になるよね。証拠にリリィがものすごく居心地の悪そうな顔になったし。
「いや、なんでこっちに来たのかなって…えへへ」
頬掻きながらリリィに言う。リリィは「そういうこと」と呟き僕の問いに答えてくれた。
「私には対象選別っていうスキルがあるの」
また、このパターンですか。なに、そのスキル。僕知らない。
「ちょ、なんでそんなふて腐れてるの!?」
「…べつにぃ~」
べつにふてくされてないし。ただ、僕の知らないスキル多いなっておもっただけだし。
「んもう! とりあえずそのスキルでどこに敵がいるのかわかるの…って、急に元気になったわね」
「え~? 私は最初から元気だよ」
リリィの説明通りなら、そのスキルは敵だけの場所がわかるんだよね。確かに知らないスキルだけど、僕のと効果が違うしね。そもそも僕はここにきたっばっかりなんだから知らないスキルがあるのを無理ないよね。
「よし! じゃあ、行くよリリィ」
「…はいはい」
僕の言葉にリリィが呆れたように返事をした。
☆ ★ ☆ ★
「ユウ、いたわよ」
「うん」
あれから、リリィの後をついていき、ついに討伐対象の狼を見つけた僕たち。数は5匹。…うん、多いね。せめて、3匹とかにしてほしかったな。いや、まあ…5匹いるのはスキルでわかっていたけどね。実際に見るとね、うん。
「よし。じゃあ、私が4匹倒すからユウは、残りをお願いね」
リリィはいつになく真剣な顔で言ってくる。僕はそれにちいさく頷く。それを見たリリィは狼達の前に出る。ついでに僕も。
「さーて、悪いけど倒させてもらうよ…ウォーターアロー!」
そんな声と共に魔法を発動させる。リリィの周りに水で出来た30センチくらいの矢が4本生成され、発射された。
「きゃん!?」
「クウゥン!」
「グアァ!」
「ぎゃん!」
頭を、ものすごい速さで飛んで行った水の矢が貫通する。貫かれた狼4匹は、1匹1匹と個性のある悲鳴を上げて倒れてしまった。
(...なんだろう。こうもあっけなく倒れた狼達が可哀想に思えてきた)
「ユウ! あとは、あいつだけよ!」
リリィが涼しい顔をしながら、死んでいった狼達を見て、怯えている1匹の狼を指さして言う。
「う、うん」
僕は、怯えている狼の前に立ち、アイテムボックスから、リリィが買ってくれた今の僕にぴったりなサイズの剣を取り出す。僕の身長が、130? あるのかな? まあ、わからないけど、大体125〜130ちょいくらいのが僕の身長だ。んで、剣の長さが、1メートルにも満たない。...多分、50...いや、40? くらいの長さの剣。大人の人が見たら、ちいさいなって思うだろうけど、今の僕には、すごくぴったりなんだよね。リリィに感謝感謝。
さて、そういうことで、リリィはこの剣で、僕の前にいる怯えてる狼のことを倒せって言うんだけど......辞退していいですか? って気分。
だって、この狼。何と言っても子供なんだよ⁉︎ きっとリリィの倒した中に親とかいたと思うんだ...リリィ辛いよ。僕には、こっちを見て怯えてる狼を殺すことなんて出来ないよ。せめて、大きい方を残してくれると嬉しかった。
「くうぅ〜ん...」
狼が僕の方を見て鳴く。そして僕は...その狼に少しづつ近づき...
「ごめんね」
狼の首らへんに剣を突き刺した。




