第18話ーいつのまにか勇者が召喚されてたよ!
「う~…」
あのちいさな狼を殺してから僕達は、討伐部位であろう牙をとって、ギルドに向かうため森の中を歩いていた。…少し気分を悪くしながら。
「ちょっとユウ…大丈夫?」
リリィが僕の背中をさすってくれる。
「…う、うん。大丈夫っていえば大丈夫なんだけど…」
これは本当のことだ。実際僕はどこも具合は悪くない。…ただ、あのちいさな狼、しかも敵意とかなくただ怯えていただけだったのに、殺してしまったというのが、ちょっと心にくるというか…なんというか…
「本当に大丈夫なの? やっぱ、どこか具合悪いの?」
リリィ、それ違う。僕具合悪くない。気分が悪いだけ。...やっぱりこの世界の人は、生き物を殺すのに何の抵抗もないんだね...いやまあ、僕も大丈夫だけど、さすがに、怯えてる生き物を殺すのには、少し抵抗があるよ......
「...リリィ、もう大丈夫」
僕は、リリィにそう言い、背筋をまっすぐ伸ばす。これから先、こういうのがたくさんあるかもしれないから、いつまでもこんな事で、うじうじしてられないからね。
「本当に?」
リリィが、やっぱり心配そうな目で僕を見てくる。
「うん、本当に」
僕がそう言うとリリィは「わかった。でも、無理しないでね?」と言った。やっぱりリリィはやさしいな〜と思いながら、僕はその言葉に素直にうなづいた。
そして、僕達は数分かけて(やっぱりちょっと気分が悪かったりする)森を抜け、門を通り、ギルドに向かった。
☆★☆★
僕達がギルドにつくと、さっそく受け付けに行って、アリーナさんに報告した。
「アリーナさん!依頼終わりました!」
「ユウ様。ご無事で何よりです。リリィさんもお疲れ様です」
僕達に気づいたアリーナさんはいつもの営業スマイルで出迎えてくれる。
「ええと...はい。こっちが、僕で、こっちの4つがリリィのです」
僕は、牙を入れている、袋から大きい牙(リリィが倒したやつ)ちいさい牙(僕が倒したやつ)を分けて出す。
「はい、わかりました。あと、ギルドカードを出して貰えますか?」
「はーい」
僕は、ローブのポケットに手を入れ、ギルドカードを取り出す。実はこれ、ポケットには何も入ってなくて、アイテムボックスに入ってるギルドカードを取り出してたりする。こんな大勢いる中で、目立ちたくないからね。あたかも、ポケットから出しましたよ〜って、見せるための演技なのだ。
「はい、確かに受け取りました。少々お待ちください」
そう言って、アリーナさんは後ろにある、魔道具にギルドカードと、僕が受けた依頼の紙をその魔道具にセットした。
僕が、そう思いながら魔道具を見てると、作業が終わったのか、ギルドカードを魔道具からとって、僕に渡してきた。
「お待たせしましたユウ様」
「ありがとうございます」
アリーナさんからギルドカードを受け取り、ちゃんと依頼が完了されてるのか見る。アリーナさんを疑うわけじゃないけど、前に、受け取った時は、念のため確認した方がいいとアリーナさんが言っていたからだ。
ちなみに、ギルドカードはこんな感じです。
名前:ユウ・シラサキLV.1
性別女
年齢10
Fランク依頼達成数:1
...うん、簡単だね。ものすごく簡単に出来てるよね。何が簡単っていうと、とにかく簡単だね。まあ、とりあえずちゃんとなってるからしまうかな。
「ふぁ〜...ユウ。これからどうする?」
ギルドカードをしまい終えた直後にリリィが眠たげにしながら聞いてくる。
「う〜ん...これといって何もないけど......リリィ眠いの?」
「...ちょっと。だけど、ユウが何処か行くならついてくよ」
...ふー。やっぱり僕は1人では行動してはいけないようです。仕方ない。いつもリリィにはお世話になってるからね、後は宿に帰って過ごそうか。
「んじゃあ、宿に帰ろうかな?リリィ」
「...わかった〜」
僕の言葉にリリィが眠たげに返事をする。こりゃもうだめだね。
「それじゃアリーナさん。今日はもう帰りま
「ユウ様。何かお忘れではないでしょうか?」
...え? 何かあったっけ?
「...これです。依頼の報酬ですよ」
そう言って、若干呆れているアリーナさんが、ちいさい銀色の硬貨を5枚渡してきた。
「...はっ⁉︎すっかり忘れてた⁉︎」
僕は慌ててアリーナさんから5枚の硬貨(確か、小銀貨だった気がする)を受け取る。
「ええと...はい、リリィ」
僕は、そのうちの4枚をリリィに渡す。僕は、一体しか倒してないから1枚だ。まあ当たり前だね。リリィは、僕から4枚の小銀貨を受け取り、ポケットに突っ込んだ。
「...じゃあ、今度こそ行きますね」
「はい。またのお越しをお待ちしております」
「ばいば〜い...ふぁ〜」
アリーナさんの営業スマイルによって僕と、リリィはギルドを後にした。
☆★☆★
さてさて。ギルドを出た僕達は、リリィが眠いということなので今日はもう何もせず、宿に帰って過ごそうかと思っていたんだけど...なにこれ? なんでこんなに人多いの?
何かあるのかな? って思い、リリィに聞いてみたんだけどリリィもわからないらしい。ということで、眠たいリリィを置いて近くの人に聞いてみる。
「あの、人多いんですけど、今日って何かあるんですか?」
「ん? ああユウちゃんか。知らないのかい? 城の方で、魔王を倒すために、勇者を召喚したらしいんだよ。なんでも、城の庭の方で何かやるらしくてな。この人だかりは、その勇者を一目見ようと集まってるのさ」
僕の質問に答えてくれたのは、最近お世話になっている屋台のおじさんだった。おじさんの売っているのは、コロッケみたいな物で、美味しいからよくそこで買うことが多い。それに、この外見からか、よくおまけに一つ増やしてくれる。
そのおじさんから聞いた僕はリリィの所に戻ると、リリィがなんなのか聞いてきたので答えると、リリィが一瞬ポカーンとし、すぐに我に返り、慌てた様子で僕の肩をつかむ。...え、なに?
「そ、それ本当⁉︎」
「う、うん。...おじさんが言うには」
肩痛い。肩痛いよリリィ。
「んもう! 私そんなの聞いてないんだけど...!」
そう言うとリリィは、「ちょっとギルドに行ってくる」と言い、「ユウは先に宿に戻ってて!」と言われ、行ってしまった。
(...あれ? もしかして、僕一人?)
寂しくはない...と言ったら嘘だけど、いつもリリィが一緒にいるから、なんか不思議な気持ちになる。
とりあえず僕は、リリィが帰ってくるのにまだ時間あると思うから、少しくらい自由に行動してもいいんじゃないかな? ...よし、しよう。
「ふふふ〜ん。どこに行こうかな〜?」
久しぶりに一人だから、少しテンションが上がった僕は、いつもは行かない(リリィがだめというから)裏通りにでも行って探検しようと思い、行動を開始した。




