↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/50

第50話:星の主電源(マスター・オブ・ワールド)

地上十キロメートル、成層圏を貫く【星の柱(軌道エレベーター)】の最上層展望デッキ。

 ガラス張りのテラスからは、丸みを帯びた惑星の青い地平線と、無限に広がる漆黒の宇宙、そして満天の銀河が見渡せた。


 手すりに寄りかかり、心地よい空調の風を受けながら、エドガーは冷えた魔導ビールを一口喉へと流し込んだ。


「ぷはぁ……。宇宙を見ながら飲むビールも、オツなもんだな」


 眼下を見下ろすと、そこにはエドガーが敷き詰めたインフラの光が、網の目のように輝いていた。

 大地を爆走する超伝導リニア鉄道『ライトニング・エクスプレス』の光の矢。

 深海数千メートルの底でエメラルド色に輝く海底都市ルルイエの灯火。

 外海を安全に行き交う数千隻の交易船団。

 そして、この天空都市アガルタを優しく支える、黄金の重力結界。


 すべてが、エドガーの体内の《生体リアクター》から生み出された、無尽蔵のクリーンエネルギーによって呼吸していた。

 かつて、帝国の薄暗い地下室で「座っているだけの無能」と見下され、理不尽に捨てられた男。

 だが、彼がプラグを抜いたあの日から始まった旅は――。

 気づけば、この星のすべての生命と大地、深海、天空の三界すべてを救い、結びつける「世界の心臓」となっていた。


「マスター」

 背後から、静かな足音が近づいてきた。

 振り返ると、そこには六人の少女たちが、美しく微笑みながら立っていた。


 清楚なメイド服のアイリス。

 大公のドレスを誇らしげにまとったセレーナ。

 緑の光を身にまとった精霊女王フロリア。

 銀髪を夜風に靡かせた元皇女アステリア。

 真珠の髪飾りを揺らす人魚姫コーラリア。

 そして、純白の翼を優雅に広げた有翼の巫女姫フィリア。


「皆様からのご要望を取りまとめました、マスター」

 アイリスが小さな銀の箱を捧げ持ってきた。

 箱が開かれると、中には――六つの異なる属性の宝石が埋め込まれた、真新しい純金のコネクタプラグが収められていた。


「これは……?」

「世界の全グリッドと、私たちの魂を永遠にあなた様へと直結するための――【星の主電源プラグ】です」

 セレーナがエドガーの手を取り、慈愛に満ちた瞳で見つめた。


「エドガーさん。あなたが世界を照らしてくださったように、私たちは生涯をかけて、あなたに愛と安らぎを捧げ続けます」

「エドガー、もう二度と、あなたを一人の暗闇になんて戻しませんわ」

「マスター、我が全回路は、あなたとの永久接続を要求しております」


 六人の少女たちの温かい手が、エドガーの手の上に重なり合う。

 胸の奥から湧き上がる、言葉にできない温もり。

 エドガーは深く息を吸い込み、澄み渡る宇宙の星々を見上げた。


「……ありがとう、みんな」


 エドガーはプラグを胸ポケットへと仕舞い、最高の笑顔を浮かべた。


「俺は、世界を支配する王様にも、崇められる神様にもなる気はないよ。ただの技術者として、みんなと美味い飯を食って、温かい風呂に入って、のんびり昼寝ができればそれでいい」


 エドガーは少女たちを抱き寄せ、高らかに宣言した。


「さあ、地上へ戻ろう! 今夜は――世界一の楽園で、最高の大宴会だ!」


「「「「「「はいっ、エドガー様(マスター)!!」」」」」」


 少女たちの弾けるような笑い声が、成層圏の星空へと吸い込まれていく。

 世界を救った最強のインフラ屋の、最高に痛快で、最高に気ままで、最高に愛された有給休暇は――。

 これからも光り輝く未来へと、どこまでも永遠に続いていくのだった。


(第3部・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。