永遠の少年 ~4~
「親父! 俺かてユウリ創って貰ったことはほんま感謝しとるよ! けどな、ほんま、コレは外すからな! もしまたつけたら、今度はもう許したらんからな!」
画面の中でハルトが叫ぶ。
「なんで外すん?」
「なんでって、……人間にはな、プライバシーってもんがあんねん。こういうのは、法律違反なんよ」
「別にかまわへんやん。これあったら、いつでもパパさんと話せるんやろ? なぁ、パパさん」
「いやいや、これは覗きいうてな、スケベな人しかせんことなんやで」
「えぇーッ! パパさんってスケベなん?」
「……そ、そう、……いう、ことに、……なってまうんかな……?」
もごもごと応えてからキリッとカメラに向き直って、ハルトがガシッとカメラを掴む。
「と、とりあえず、外すで、親父! じゃ!」
ブチッ
つーっ、つーっ、つーっ……。
今はもう、真っ黒に閉ざされた画面を見つめて、ハルトの父はちょっと泣きそうな気分で静かに笑う。それが良いことであっても悪いことであっても、すべてを許そうとする優しさに包まれて、ゆっくりと瞼を閉じる。
永遠なんて言葉は理想としてあるだけで、現実にはあり得ない。
でも、ヒューマノイドのふたりになら、永遠の絆をプログラミング出来る。だからハルトの父は、誰もが夢見る、夢でしかあり得ない永遠を体現する存在として、ふたりを創った。
けれどそれは、ハルトの父自身が、置いて逝かれる哀しみから、永遠に解放されることでもあった。そして同時に、その哀しみを全部、ハルトとユウリに押しつけてしまうことでもあった。
これから先、もしかしたらふたりは、生まれてきたこと出会ったことを、後悔する日がくるのかもしれない。創られた身体に憤りながら、けれど愛する相手もそうだということに気づいて、あてどころのない怒りに苦しむ日が来るのかもしれない。
けれどもしも、もしもそれ以上の幸せを、毎日毎日積み重ねていけたなら、やがてくる哀しみも乗り越えていけるんじゃないかと、そう思う。そうであって欲しいと、心から願う。
青空の彼方、透きとおった風の中、少年達の囁きが聴こえる。
―― この先には、何があるん?
遠く指さすのは、海が空に溶け込む水平線。
―― いいことが、いっぱい。たくさん。
明るく応える少年に、問いかけた少年がクスリと笑う。
―― いいかげんなやっちゃなぁ。
―― やって、本当やもん。信じないんか?
陽射しが留まる波飛沫が、少年達の笑顔を縁取る。
―― 信じるよ。……ずっと……。……いつまでも……。
ただ、柔らかく笑いあうだけの毎日が永遠に続いたならと、そんな願いを込めて創られたヒューマノイドは、今日も元気に我儘を言う。ふたりを思う、優しい人たちに、見守られながら。(了)




