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毒親転生 〜娘に嫌われたまま死んだので、異世界で学びなおします〜  作者: ちょこだいふく


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5/10

5.奪われていた言葉たち

——気づけば、私はずいぶん子供っぽくなっていた。


身体が幼ければ、意識も言葉も引っ張られるらしい。

 

大人としての私よりも、幼い私の方が前に出てくる瞬間が多くある。



季節がいくつも巡るうちに、私は言葉を覚えた。

歩き、笑い、泣き、花を摘んではエリナのもとへ駆けていくようになった。


「えりな」「らいる」「おはな」

そんな幼い言葉が少しずつ形になり、この世界は静かに広がっていく。


エリナは、私が話すどんな小さな声も、一つも取りこぼさないように聞こうとしてくれた。


…そんなこと、前の世界では…なかったかもしれない


ふと胸の奥がきゅっとなる。

でも、その痛みは優しいものに上書きされていった。


⸻


―その日。


庭で摘んだ、小さな黄色い花を握りしめて、

私はぱたぱたとエリナのもとへ走っていった。


「えりな!えりな!あのね!あのねっ!!」


言葉が気持ちに追いつかず、喉の奥で転がりながら飛び出していく。


エリナはしゃがみ込み、目線を合わせてくれる。


「うん、ニア。聞いてるわ。ゆっくりでいいのよ?」


私は息を吸って、一気にまくしたてた。


「きょうね!おそとでねっ!あのねっ、あのっ……おはな!!きれーの!いっぱい!みたの!!」


手をぶんぶん揺らして、胸の中の嬉しさをそのままぶつける。


エリナは優しく頷きながら微笑んだ。


「まあ……そうなの。ニアが見つけたのね。教えてくれて嬉しいわ。ありがとう」


「ありがとう」という言葉が胸に落ちた瞬間、心がふるっと震えた。


……ありがとう?



——ふいに遠い記憶がよみがえる。


——今忙しいからあとにして

——話すなら簡潔にして

——そんなことどうでもいいでしょ

——うるさい子ねえ、黙ってなさい


…そういえば

話を“最後まで”聞いてもらえたことってあったかな…


胸にちくりと刺さる痛み。でも次の瞬間、エリナがそっと私の手を包んでいた。


「ねえ、ニア。あなたのお話、わたし本当に好きよ。聞かせてくれてありがとう」


…好き?

わたしの話が…好き……?


視界がにじむ。


でも私は笑って言った。


「えりな!もっとニアのもっとおはなし、きいて!!」


エリナは幸せそうにふわりと笑い、


「ええ、もちろん。ニアのお話、全部聞くわ」


その言葉が、前の世界で奪われたことばをひとつずつ取り戻していくみたいで、胸の奥が、じんわりと温かく満たされた。


と同時に、

…ああ、私は娘に何をしていたんだろう…と思い、胸がちくりと痛んだ。

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