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魔王勇者と不死鳥少女  作者: 竹内優斗
太陽の国
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04

 目的の場所は、国の大通りから外れた場所にあった。


 大通りを曲がり、目的地へ向かって進むと、展望台から見た通り農地が広がっていた。畑の植物が実をつけている様子を見れば、誰かが手入れをしていることは明白だった。


「やはり誰かが育てているようですね」


「外で育てるとあの雨の影響を受けそうなものだけど、植物には関係ないのかな?」


 そんなことを考えながら、畑の間を通る道を進んでいた。当然のことながら周りには畑ばかりで、誰一人として見かけることはなかった。そうして暫く歩いていると、目的地と思われる家を見つけた。


「多分あの家がそうだね」


「ちゃんと話せる人がいればいいのですが……」


 そこには国のものとは違い、小さな平屋が一軒ポツンと建てられていた。


「反応もこの中から感じられるし、多分誰かはいると思う。さすがにどんな人かまではわからないけど、とりあえずは声をかけてみるよ」


 ハヤトは家へと近づき、扉をノックしてから声をかける。


「すみません、どなたかいらっしゃいますか?」


 すると、中で物音がしたかと思うと、その物音はこちらに近づいてきた。そして、鍵が外れる音と共に扉が開くと、口髭を生やした白髪の老人男性が現れた。


「もしかして、旅人さんだろうか?」


「はい。僕はハヤトと言います。こちらのアーリアと共に旅をしています」


「アーリアにゃ」


 老人は自己紹介する様子を見て、とても感慨深い表情をしていた。


「こうして『人』と話すのは何年ぶりだろうか……。もしよろしければ、うちに上がっていかれませんか?」


 老人からそう提案をされた。


「では、お邪魔させてください。この国についての話も聞かせていただきたいので」


「やはりそうでしょうな……。どうぞ、入ってください」


 ハヤトたちは老人の提案を受け、家の中にお邪魔することになった。



 中に入ると、老人にテーブルのある場所に連れられて、そこで座って待っているように言われた。

 老人は飲み物を用意してきますとだけ告げ、隣の部屋へと行ってしまったので、二人は言われた通りそこにあった椅子に座って待つことにした。

 少し待っていると、隣の部屋から老人が戻ってきて、トレーに乗った飲み物をテーブルへと置いてから椅子に座った。


「お二人は旅人とのことですが、この国はもう見られたでしょうか?」


 確認の意も込めた老人の言葉に、ええと頷く。


「ならわかると思いますが、おかしな言動をした人ばかりでしょう? まるで、現状を認識していないような」


 老人の言葉に同意する。


「やはり何か知っておられるのですね。よければ教えてもらえないでしょうか? この国に一体何が起きたのでしょうか?」


 ハヤトが質問すると、老人は昔を懐かしむような表情を見せた。


「わかりました。この国に起こった出来事をお話いたしましょう」


 老人はそう言って、この国の過去について話し始めた。



「五十年ほど前になりますか……。旅人さんもご存じの通り、この国はかつて太陽の国と呼ばれてました。それは一年を通して、太陽の沈む日がなかったからです。そして、そんな珍しい環境ということで、観光客もたくさん訪れていました。そんな中、私は教会で神官長として、日々を過ごしておりました」


 そして、話を続ける。


「しかしある日突然、太陽を覆う雲が発生しました。当然太陽の国といえど、雲自体は時々発生していて、別に珍しいものではありません。自分も含め、国の皆は数日すればいつも通り晴れるだろうと考えていました。けれど、何日経っても晴れることはなく、どういうことだと丁度皆が不安に思いだした頃でした。……あの雨が降りだしたのは」


 ふぅと息を吐くと、一度呼吸を整えて再び話しだした。


「最初、雨はぽつぽつと小降りだったのですが、次第に本降りになって、最終的には滝のように流れる雨になりました。そして、その時外にいた人は、皆雨を浴びると倒れだしたのです。けれど少し経つと、倒れた人たちは立ち上がり、何事もなかったかのように動き出しました」


 老人は何かを堪えるかのようにしていた。


「その様子を屋内で見ていた人が安心していたのもつかの間、今度は屋内の人も同じように倒れだしたのです。そして、再び起き上がって動いていましたが、その顔は生気がないような表情をしていました。その時、何故か私だけ倒れなかったのでその様子を見ていたのですが、とてもゾッとする光景でした」


 本当に恐ろしかったようで、気がつけば老人の体が震えていた。


「その現象は屋内・屋外問わずに発生していたので、次第に国全体へと広がっていきました。私は自分以外に無事な人がいないかを探し回ったのですが、残念ながら誰も見つけることが出来ませんでした。無事なのは私一人だけだったのです」


 そう言った老人の顔は、寂しそうに見えた。


「次の日から、私はこの国の住民を元に戻すために調べ始めました。住民の様子を見ていたのですが、どうやら生気はないものの、会話は通じるようでした。けれど、昨日の雨のことを聞いてみても、何を言っているかわからないといった返答をするのです。あなた方も心当たりがあるでしょう?」


「はい、まさに僕たちも同じような返答をされました」


 ハヤトは門兵の人や塔の人も同じ様子だったと告げた。


 その言葉に納得しつつも、老人は話を続けた。


「私はこのような現象や雲、土砂降りの雨で似たようなことが過去になかったかを調べました。すると、過去に別の国で似たような事例があったのです」


 老人は遂に核心を告げた。


「それによると、その雨は通称『死の雨』と呼ばれるものだそうです。昔、とある国で同じように雨が降り、国民全員が同じようなことを繰り返す人形のようになったそうです。その時、私と同じように無事だった人たちがいたので、調査を行ったそうです。すると、この現象の原因は雨ではなく、雨と一緒に降り注ぐ魔力にあると突き止めたそうです。その魔力には、浴びた人の命を奪い取る力があり、その魔力によって死んだ人の行動を操ることができる、と」


「つまり、国民は既に死んでいるということですか? それにしては、アンデッドとは異なり会話が一応通じているようでしたが……」


 ハヤトが疑問に思うと、老人はそのことについて答えてくれた。


「それは、その魔力によって動く死人は、死んだ時点の情報をもとに動かされているらしいのです。つまり、彼らが生前見てきた状況が今も続いているという認識で会話が行われています」


 その説明にハヤトは納得した。


「……それに今思えば、私だけが無事だったのは聖職者だったからでしょうね。神のご加護により、邪悪な魔力を弾くことが出来たのですから……」


 以上がこの国で起きた出来事です、と老人は締めくくった。


 心に一人で抱えていたことを、誰かに全て吐き出したおかげか、老人は晴れやかな様子をしていた。


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