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魔王勇者と不死鳥少女  作者: 竹内優斗
断章 セントライト王国
22/38

06

 そこには村と呼ぶには程遠い景色が広がっていた。焼け落ちた建物、辺りから立ち込める焼け焦げた匂い。村の周りを囲う柵は燃え尽きてしまっていて、どこからが村だったのかもわからない。


 村は焼き払われていた。


 ユウヤには意味がわからなかった。何故こんなことになっているのか。村の皆はどうなったのか。


「そうだ……。家族を探さないと……」


 目の前の現実を受け入れたくなくて、暫く現実逃避をしていたが、家族のことに思い至るとようやく動き始めた。


 村の中を歩き回っていたが、どこかしこも悲惨な状態だった。昔よく遊んでいた広場。仲が良かった友人の家。牛飼いのおじさんの所。どこも焼け焦げていて、全く原型を留めていない状態だった。


 そんな変わり果てた村の様子を見ながら歩いていると、ようやく自分の家を見つけた。他と同じように無事ではなく、柱が何本か燃え残っているだけだった。


 ユウヤはその家だった物の中に入り、何かを探すように歩き回った。


「そんな……」


 ユウヤの視線の先には、焼けてしまい元が何だったのかわからなくなっている、人型のものがあった。


「母さん……。セリン……。あ、ああああああああぁ」


 家族の名前を呼ぶと、もう止まらなかった。目からは涙が溢れ、周囲を気にせず喚き散らすように泣き叫んだ。

 どうして自分の家族が。騎士団が守ってくれていたんじゃないのか。胸の内には色んな想いが渦巻いていた。けれど、今はこの悲しみを、ただ吐き出すことしか出来なかった。



 暫く泣き叫んだことで、ユウヤはようやく落ち着くことができた。


「それにしても、何でこんなことになっているんだ?」


 冷静になって考えてみれば、この村は騎士団によって守られていたはずだ。もし魔物や魔族に襲われたならば、村に騎士団の死体も転がっていないとおかしい。にもかかわらず、ここに来るまでに見た村の中には、騎士団と思われるような鎧を付けた死体は全く見かけなかった。

「何かが起こって、村から騎士団が離れる事態になったとしか考えられないな」


 様々な予想を立て、これからどうするかを思案していた。


「お前、ユウヤか?」


 すると、急に自身の名を呼ぶ声が聞こえた。振り返れば、そこには初老の男性が一人立っていた。


「牛飼いのおじさん?」


「ああ、そうだよ。その呼び方をするってことは、やっぱりユウヤか。……それにしても、大きくなったなぁ」


 牛飼いのおじさんと呼ばれた男性は、昔を懐かしむようにしみじみとした様子で答えた。


「そうだ、おじさん。この村に一体、何があったの?」


 おじさんなら何か知っていると思い、ユウヤは尋ねた。すると、おじさんは暗い表情をしてその疑問に答えてくれた。


「この村は襲われたんだ……」


「村が襲われた? 盗賊程度なら騎士団で対処できるはず……。一体何に?」


「――その騎士団に、だ……」


 その答えを聞き、ユウヤは目を見開いた。


「騎士団が……。一体何で?」


 村を守っていたはずの騎士団がどうしてそんなことを、と驚きを隠せないでいると、おじさんが当時の様子を話してくれた。


「俺はその時、王国で買い物をするため、村から離れていたんだ。そして、用事を済ませて戻ってくれば、遠くで村が燃えているのが見えた。何とかしないとと思い、急いで村の近くまで来てみれば、周囲に複数の人影を見つけた。燃えている村を見て楽しそうにしていたから、すぐに村を燃やした犯人だとわかったよ」


 彼は拳を握りしめ、歯を食いしばっていた。


「村を燃やして楽しそうにしている奴らだ。このまま向かえば、俺も殺されると思った。だから仕方なく、近くの茂みに身を隠して、暫く様子を窺っていたんだ。そして、よくよく見ればそいつらの姿には見覚えがあった」


「もしかして、それが……」


 ユウヤの言葉に頷く。


「ああ。王国の騎士団だ。恐らく奴らが村に火を放ったんだ。そして奴らは、燃え盛る村の外から、住民が逃げてこないか監視していた。村の住民の中には逃げ遅れた人もいて、何人か村の外へ避難しようと走ってるのが見えた」


 彼は話を続ける。


「それを奴らは次々と斬り殺していった……。まるで何の罪悪感も感じてないように、笑いながら楽しそうに人を斬っていた。同じ人を平気で殺していく姿を見て、俺はただその場で身を竦めていることしか出来なかったんだ……」


 彼は無力な自分を責めていた。


「目の前で皆が殺されているのに、俺には何もできなかった……。助けに行けば、自分も殺される。そう思うと、体が震えてしまって……。俺は皆を見殺しにしたんだ……」


 そう言った彼は後悔に苛まれていた。だけど、実際助けに向かっていれば、彼の言っていた通り殺されていただろう。見殺しにしてでも生き延びて、誰かに伝えることが出来たのは、ある意味英断だったと思われる。


「おじさん。辛い中、話してくれてありがとう。おかげで何が原因だったのか理解できた」


 ユウヤは口でおじさんを労いながら、心の中では騎士団を決して許さないと決めた。何が理由であろうとも、大切な皆を殺したことには必ず相応の報いを受けさせると。


「だけど、それでわかったのは騎士団が犯人ってことだけで、理由なんかはわからないままだよね……。他には何か言ってなかった?」


 そう言うと、おじさんは少し思い出す素振りをした後、こちらに向けて口を開いた。


「そういえば、確か騎士団の格好とは違う奴が一人いたな……。そいつが村への攻撃を指示しているようだった。しかも、騎士団と一緒になってそいつも逃げてくる村人を斬っていた……」


「そいつの特徴は?」


「確か、赤っぽい服をした男だったな。……それに、ユウヤの名前を口にしていた気がする。さらに魔王とも……」


 ユウヤにとって、その相手には心当たりがありすぎた。もし自分が思っている通りなら、到底許すことが出来ない。どちらにしろ、騎士団がやったことは確実なため、後で王国に問い詰める必要がある。


「ありがとう、おじさん。そいつには少し心当たりがあるから、後で王国に行って話を聞いてみるよ」


「それはいいが……。ユウヤ、お前魔王討伐はどうしたんだ?」


 ユウヤは少し誤魔化しつつも答える。


「魔王は倒したんだけど、その後色々あってね。王国から少し離れようと思ってたんだ。だから最後に一度、村の皆に会おうと思って帰ってきたんだけど……」


「こんな状態になっていてすまない……」


「いいよ、おじさんのせいじゃないし」


 そう答えた後、辺りを見回した。


「村の皆をこの状態にしておくのも忍びないし、これから弔おうと思うんだけど、おじさんも手伝ってくれない?」


「もちろんだ。むしろ、俺にもやらせてくれ!」


 こうして二人で協力して、村の皆を弔うことになった。


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