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第27話「ファースト・フライト(後編)」

「コンバーター、出力よし……」

「やはり、行くのかいアンタ」

「エルフは、敵ですから」


 少年は次々に機体、リィターンのコンディション・チェックを行い、その手に吹き出る汗を服でぬぐいとる。


「霊動エンジン、始動……」

「敵第一波、通過中」


 彼の決意を受け入れてくれた女兵に軽く頷いてみせながら、少年はリィターンに火を灯す。


「私はアウローラ!!」

「敵の一波が通り過ぎた、今だ!!」

「リィターン、出る!!」


 ギィイ!!


 奇怪な音を立てながら、リィターンの霊動エンジン「太陽」のそれが発動した。


「やっぱり!!」


 リィターン、本来ならば認証を行った者でなければ動かないポイント・マテリアル。


「機体から僕の頭へと響いていた声は、幻聴ではなかった!!」

――そうだとも、最適任者よ――

「ベオさん、見ていて下さい!!」


 第二波、一回りはスプリート・タイプより大きい新鋭機をその剣「烙華槍らっかそう」で焼き切りながら、少年の機体は闇夜へ軌跡を作る。


「アタシだって、リィターンの一つや二つ位は!!」

――最初から女だと気がついていたよ、このディオニソスは――

「ディオニソス、それがあなたの名前!!」

――ディオで構わない、この機体の管制システムだ――


 ザァン!!


 ベヘモスに乗った悪魔を両断しながら、管制ユニットは少年、いや少女のアウローラへ語りかける。


――その烙華槍らっかそうはな、直進のピトスなんだよ――

「ピトス、直進……」

――人の物事に対して、一つの目的に絞らせる能力と精神を与える――

「だったら、その力を」


 悪魔からの飽和攻撃、しかしリィターンには傷一つない、ベオからこの機体の特性の事は聴いていた、が。


「私に貸して、ディオ」

――いままで、ベオのニイチャンやパルシーダっていうエルフに貸していたがね――


 ここまで機体の防御性能を信用するのは、すでに烙華槍らっかそうの影響下にあるためであろう。


「エルフ達への復讐の為に」




――――――




「速い!!」


 リィターンの発進を見たベオは、その機体のスピードに驚愕する。


「俺は、あの機体」


 ピィ……


 上方警戒音が鳴り響くなか、ベオはリィターンを手に入れてから今までの旅路を反芻した。


「リィターンの一番の乗り手ではなかったのだな」

「残念だったな、人間よ」


 高高度で悠々と飛行する巨大なブラック・ドラゴン、その魔獣がくるりとその身を翻して少女の裸体となり、エイトヘヴンの正面へとその細足を乗せる。


「確か、あんたは……」

「ヴィーナス」


 瞬時の後、またしても不釣り合いな赤い帽子を裸のままに召喚、かぶった少女は、その両の手をベオ機へと差し向けた。


「わらわの娘の一人、それのピトスを使っておるわ」

「どいつもこいつもピトス、ピトスか」

「繋げるピトスじゃ」


 軽い機械音がしたのち、悪魔ヴィーナスの裸身を赤き衣装が纏い、ニンマリと彼女は笑う。


「さて、ここで主をどうするか」

「俺としては、眼福もできたのでさほど悪い死にかたではないと思うが」

「その手の趣味か」

「その手の趣味だ」


 エイトヘヴンにも接近戦用の装備が備わってはいるが、それでなんとかなるあいてとは、さすがにベオも思わない。


「まあ、しつこい父上を撃退してくれた礼もあるしのう……」

「父上、撃退?」

「少しは自分で考えんか、阿呆」


 ドゥ、ドゥウ……


 どうやら、戦線が上空へと揚がってきた様子だ、阿修羅の駆るアンゼアが敵の新鋭機と死闘を繰り広げているのが眼下に見える。


「アンゼアがパワー負けしている、エルフどもめ!!」

「このミーミルングの力をなめるな!!」


 ベオの管制機のレーダーにはリィターンが敵悪魔を次々と消滅させている姿が映し出されている。


「さて、わらわはひとまずここで」

「帰るのか、味方を放っておいて?」

「心からの盟友ではない、ベオとやら」


 そのまま彼女はまたしても黒竜へと変幻をし、遥か上空へと立ち去っていく。


「まったく……」


 そのベオのため息はヴィーナスという悪魔にあてたものか、それとも次々と悪魔を示す光点を消滅させていくリィターンへと向けたものか。


「思惑とは、ややこしい……」


 器用に敵の間接部のみにダメージをあたえ、同族を殺さないように心がけているパルシーダにあてたものなのかは、よくわからない。


「だが、これだけは言える」


 リィターン、悪魔殺しの機体デーモンキラー、それは彼ベオにとって。


「俺にとって、短い付き合いだったな」


 それほどまでに、初陣である少年があげている戦果は凄まじいものだ。

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