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ハムラビノート  作者: 三毛猫
2/14

ケルさんのご飯係②



ショウの通っている高校は住んでいるアパートからバスで10分弱のところにある。


バスに乗ると、チラホラと同じ制服を着た生徒が目に入ってくる。

皆、生き生きしてとても楽しそうだ。



「(若いなぁ……まぁ、あっという間に老いるけどね………)」



そんな事を考えているとバスが学校の前に着きショウは降り学校に向かい始めた。

少し歩くと学校の門が見えてきたが、何時もと様子が違っていた。



何時もは生徒と朝当番の先生二人だ。



しかし、今朝は大きなカメラを構えアングルのチェックをしているカメラマン。

隣には原稿の確認をしているリポーター。

多くの報道関係者が高校の門の前にいたのだ。



「(何かあったのかな……)」


そう疑問に思いながら歩いて行くと一人のリポーターらしき女性に声をかけられた。



「君、ここに通っている生徒かな?」



「え…はぁ……そうですけど………」



「あの少しお話を……」



「ちょっと!生徒に話かけるのは止めて下さい!!」



鋭い声に女性リポーターは怯んだ。

声の持ち主はタチバナ先生だ。



「まだ生徒は事情を知らないのです!そういう事をするのは止めて下さい!!」



怒気のある声でタチバナ先生は女性リポーターに詰め寄った。

相手は泣きそうである。

周りにいる報道関係者も青ざめ、更に釣られて泣きそうになっている。

そんな状況になるのは無理もない。

タチバナ先生は体格がかなり良く、しかも強面。

聞いた話だと時々ヤクザに間違えられるらしい。

しかし怖い外見とは違い、園芸部の顧問を勤めている。

ちなみに好きなお花はチューリップ。



「(かわいそうに………)」



女性リポーターに同情しながらショウは、そそくさと門をくぐり教室に向かった。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

何時も違う朝の様子に、教室の中は何時も以上に騒がしかった。



「何であんなに集まっているんだろー?」



「何にもない高校なのにー」



「ほんとにねー。てか先生達テンパってるよね?ウケるー」



「タッチー、めっちゃ怖かったよねー」



「あの瞬間、空気凍ったわー」



など各グループで盛り上がっている。

そんな様子をショウは、ぼーっと眺めていた時だ。



「ショウー!おはよー!!朝から存在感ないなー!生きてるー?」



少し毒の入った挨拶をしたのは同じクラスメイトのダイキだ。

ショウは必要最低限でないと他のクラスメイトと会話する事がない。

しかしダイキとは共通の趣味があり、会話する機会が多い。

ショウにとってダイキは数少ない友達なのだ。



「おはよう。朝からテンション高いな…疲れないの?」



「お前はテンション低い割には朝から毒吐いてんな……」



「そうか?俺、毒吐いていたか?体大丈夫か?」



「天然系毒男かよ!!……全く…てか朝から凄いよなぁ……」



「本当にな」



窓から門の様子を二人は眺めた。

徐々に報道関係者が増えている。



「実は俺、その理由知ってんだぜ……聞きたい?」



ぬふふっと含み笑いをするダイキ。

しかし……


「興味ないから良いや」



「即答!てかそんな冷たい反応やめて!俺泣いちゃうから!お願いだから聞いてください!!!」



「はいはい」



涙目のダイキにお願いされ、ショウは仕方なく話を聞くことにした。

興味が無くなれば聞いているフリをすれば良いと思いながら。



「……最近、女子高生を狙った切りつけ事件ってあるじゃん?」



「あれな……」



ショウは昨日の夜、テレビで見たニュースを思い出た。

ここ最近、女子高生だけを狙った切りつけ事件が多発しているのだ。

始めるの頃は軽いケガだけで済んだが、徐々にエスカレートしているタチの悪い事件だ。



「それと今朝のこれって何か関係あんの?」



「ここからが本題だって……」



顔を近付け、ダイキは周りのクラスメイトに聞かれない様に小声でショウに話した。



「……昨日の夜、うちの学校の女子が襲われたらしいんだよ」



「……本当かよ?」



「本当!本当!朝、職員室で聞いたから!!」



小声のまま少し興奮気味のダイキ。

しかしショウは違う事に気が付いた。



「職員室って……ダイキ、また赤点で怒らたんだな」



「え!?何で解った!!」



「お前が職員室に居る=赤点だからだよ。大丈夫か?進級出来るのか?」



「今度……勉強教えてくれ………進学危ないって真顔で言われたから……」



タチバナ先生に詰め寄られた女性アナウンサーよりダイキは青ざめた顔をしている。

ここで嫌だっと言ったら、本気で泣かれると思い、ショウは了承することにした。



「解ったよ……んで、先生達は何て言ってたんだ?」



「えーーっと……まさか、うちの生徒が!とか………どう保護者に説明するか……とか……あとカウンセラー用意するとか……だったな」



「ふぅん………そうか…」



「何か……知っている事件が身近になると少し怖いよな…俺女子じゃないけど」



「(ダイキ……まず、お前は大丈夫だと思う…)」



心の中で呟いたショウ。

実はダイキもタチバナ先生と同じレベルの体格&強面なのだ。

ちなみに手芸部と料理部に所属している。


本人の知らないところでは「ダイキの机に触ると女子力が上がる」など噂になっているのだった。




ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



ダイキに話を聞いてから暫くすると全校集会が行われた。



内容はダイキに聞いた通り、連続女子高生切りつけ事件に生徒が巻き込まれた事だった。


一瞬、ざわついたが他の先生が落ち着かせ、直ぐに生徒は落ち着いた。



「えー、なお暫くは保健室にカウンセラーを配属したいと思いますので……あと夜は一人では出歩かない様に」



以上ですっと話を終えた校長。

何時もの穏やかな雰囲気は無く、悔しさと悲しさの滲み出た表情をしていた。



その後、午後から緊急保護者会が開かれる事になる為、生徒は自宅で待機する事になった。

それを聞いてショウは気持ちが少し弾んだ。

理由は……



「(確か、近くの薬局で洗剤が特売だったはず……!)」



全校集会が終るとショウは目にも止まらぬ早さで薬局に走っていったのであった……

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