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プロローグ

「はー、さむ」


 吐く息が白く染まる頃、十鷹柚城とうたかゆずきはいつもの駅から、いつもの道を通り、通い慣れたこの灰色と電飾に彩られた街、秋葉原に来た。


「今日は何処に行こうかな」


 この時間、街にはスーツを着てしっかり8時間社会の歯車としての役割を果たした大人達が、疲れと悩みを抱えて帰路につく。

 そんな大人達を横目に、寒空の下で明らかに凍える格好で、客引きをする女性たちがいる。


 昔の秋葉原は電気街と言われる街だったらしい。電化製品や電子部品を売る店が所狭しと並び、壊れた家電を直すなら大抵の部品が手に入ると言われていた。

 その頃の名残か、いわゆる大通りとされる場所は『秋葉原電気街』と名前が付いている。


 しかし今の秋葉原は全くの別物だ、アニメやフィギュア、カードゲームの街といっても過言ではない。それは世界にも伝播し、外国人観光客が、平日休日関係なく歩いている。日本語より外国語の方が多く飛び交っている気さえする。


 そんな街のもう一つの顔が夕方から出現する女の子達だ。メイド喫茶、コンセプトカフェ(通称コンカフェ)の女の子達が自分の店のチラシ片手に客引きを行っている。


 十鷹柚城とうたかゆずきはこの街に溢れる人の欲が渦巻く景色が好きだった。

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