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氷月龍の剣姫   作者: 猫宮 三日月


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第十八話 物作りの村

 竜樹は少し気まずそうに南雲たちに目を向けた。さっきまでの言動がどうやら気まずようだ。竜樹はやっとの思いで口を開いた。


「えっと……さっきは…その助けてくれてありがとう」


 その言葉に3人は目を配らせて苦笑いをした。

まあ何か思うことはあるようだが、素直に謝れたのはいいことなのかもしれない。周りがそう思った矢先……


「なんて言うかばーーーーーーーか!」


 竜樹の態度に南雲がキレる。


「やっぱり……この野郎!言うと思った!月神の太刀筋にビビってたくせに!」


「うっせーやーーい!もう竹刀返してもらったし怖いものねぇもん!」


 傍から見ていた千颯はしまっていた日本刀を取り出し、鞘から刀を取り出さずに刀を手で叩いた。千颯の表情は笑顔なのに笑っていなかった。


「なぁ、桜崎…菊ノ宮…菊市…このクソガキぶっ叩いていいか……」


「ダメだよぉ。それよりも火あぶりにした方がいいとおもうなぁ。」


「いや〜、水責めでしょ」


「お前ら怖ぇよ」

 物騒なことを言う千颯達に竜樹は後退る。そんな竜樹に追い打ちをかけるように南雲も便乗して


「いや、そんなんじゃこっちが悪くなるだろ。だったら桜の花びらを100枚捕まえるまで風で宙に浮かせ置こうぜ」


「だからなんか怖ぇよ!」


 そんなやり取りをしていると1人の男性が話しかけてきた。


「お主らこんな所で何をしておる」


「じいちゃん!!聞いてくれよ!こいつらがいじめる!」


「はぁ?お前が腹が立つ態度したからだろう!」


 南雲が怒りながら言うと呆れたような顔で男性は眉間に皺を寄せた。


「また、そんな態度を取ったのか竜樹よ。お前と言うやつは」


「うっ……だって……」


「はぁ、すまんな。こやつは昔から魔力がないことで周りに馬鹿にされてた子でなぁ。全くそんな態度をとるんだったら素振り100回でもするか?」


「えーーー……ごめんなさい。」


 文句を言う竜樹に男性が睨むと竜樹は素直に謝った。


「はぁ……すまんな。わしは鍛治寺宗睦(かじでらむねちか)。わしの孫が迷惑かけてすまんのう。助けてくれてありがとうな。お主ら」


「いえ、別に…私たちは何も」


 千颯が遠慮しがちに言うと鍛治寺宗睦(かじでらむねちか)は千颯の持っている刀に目を向ける。


「その刀は……そうか。お主……月神さんところのか。」


「え?この刀を知ってるんですか?」


「知ってるも何もその刀は、わしが作った刀じゃ。懐かしいのう。その刀はな千夜子がもう会えなくなる娘を思ってわしにお願いしてきた物じゃ。それがこうしてお主に渡ったってことはお主の母もお主を思って渡したんじゃろうな」


 その話を聞いた千颯は改めて持っていた刀をよくみた。その刀はあまり柄の部分が削られておらず、使われた痕跡は少ない。しかし、おばあちゃんと刀を手入れした時刃の部分の錆は少なかった。それは刀がしっかりと手入れされていたということだ。それだけで千颯の母がこの刀を大切にしていたことがわかる。

 千颯は顔もあまり思い出せない母を思いながら刀を強く握った。


「ありがとうございます。この刀を作ってくださって」


「何、わしは鍛治師として当然の仕事をしたまでじゃ。それをどう使うかは持ち主の自由じゃ。じゃがそうやって大事にされているのをみると嬉しくなるのう。これからもその刀を大事にするのじゃぞ」


「はい」


「さて、わしらはここでお暇するかのう。迎えもきたようじゃしな」


「「「「えっ…」」」」


 四人は宗睦が見つめる方角へと振り返った。するとそこには千夜子も含め他の3人の保護者であろう人物が立っていた。千颯は内心冷や汗をかきながら千夜子の方へと目線を向けた。


「なんじゃ警報なってからも全然帰って来ないから心配したというのに…ずいぶん楽しそうじゃのう。千颯…」


「えっと…おばあちゃん?あのこれは…」


「全く、連絡してくれればよかったじゃろうに。すごく心配したんじゃぞ!」


「えっと…連絡取ろうにもその道具がなかったというか…妖魔に襲われている子がいたからほっとけなかったというか…道に迷ったというか…」


 その言葉に千夜子はため息を漏らした。その後すぐ千颯を優しく抱きしめると安心させるように千颯の頭を撫でながら口を開いた。


「そうだったのか。それはすまなかったのう。後で買いに行こう。じゃが、まだ魔法のあまり使えぬものが無理する必要はないのじゃ。そのために氷室に面倒を頼んだというのにあやつは…まあ氷室への説教は後じゃ。千颯、無理はするなよ。大人を頼ること。わかったな」


「はい…心配かけてごめんなさい」


「うむ。南雲たちも助かった。感謝するぞ」


 そういうと南雲たちに深々と頭を下げた千夜子に南雲の近くにいた大人が慌てる。


「そんなうちの子なんてたまたま通りかかっただけなので、そんな頭あげてください」


「いや、何を言う。 実際、南雲がいてくれたおかげじゃ」


 得意げにしている南雲に頭を下げていた大人の女性は恥ずかしそうに首を振った。


「そんな、壁に穴を開けてる子なんてまだまだですわ」


「は?私じゃないいし!」


 その言葉に千颯が首を縦に振る。そして恐る恐る口を開いた。


「あの……それ……私です」


 その言葉にその場にいた空気が一瞬にして変わった。


「なんじゃと……!どういうことじゃ?」


「えっと……かくかくしかじかというか……」


「いや、そんなんで伝わるわけ……」


「なるほどな……そういうことじゃったのか。何問題ない。後で修繕業者のやつに頼めばいい。なんせ月音村は物作りの村じゃからな」


「物作りの村……」


 千颯の言葉に嬉しそうに答えた千夜子は傍で見ていた宗睦に視線を交わし千颯に答える


「そうじゃのう。鍛治寺よ」


「そうじゃそうじゃ!ははははっ!こんな壁なんて修復魔法でちゃちゃっと治るわい!」


 その言葉に笑みを浮かべた千夜子は千颯の方に振り返り手を繋いだ。


「さて、千颯の無事も確認取れたし、神社に戻るぞ千颯」


「わかった……」


 千夜子の手を繋いだ千颯だったが思い出したように同じように帰ろうとしてる南雲達の方に振り返り口を開いた。


「あの、桜崎……」

「南雲……」

「え?」

「南雲でいいから…桜崎なんて母さんとかと被るだろ……その千颯って呼んでいいか?」


 そういう南雲の顔はほんのり照れて赤くなっていた。その南雲の答えに便乗するように燎香と蒼も頷き声をかけた。


「うちらも下の名前でいいよぅ。ニャンちゃん!」

「ああ、僕も好きに呼んでね〜。千颯ちゃん」


 その言葉に照れながら千颯は答える。


「えっと…南雲、燎香、蒼、その助けてくれてありがとう。あっ……でもニャンちゃんはちょっと…」


「どういたしましてぇ。えーニャンちゃん可愛いのにぃ!」


「こいつのあだ名は諦めろ…千颯」

「そうそう。直してらもっと変なあだ名で呼ばれるよ〜」


「……まじか。…………じゃあ諦めるか…」


「え?何その間?ちょっとニャンちゃん!」


 そんな掛け合いをしてると千夜子達が割って入るように声をかけた。


「ほれほれ、盛り上がっているところ悪いがそろそろ帰るぞ千颯。」

「私たちも帰るよ。南雲」

「ほら、燎香も」

「蒼も行くぞ」


「「「「はーーーい!」」」」


 その大人達の言葉に千颯達は別れを告げたのだった。



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