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氷月龍の剣姫   作者: 猫宮 三日月


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第十七話 魔法という力差

 沈黙を破ったのは南雲の方だった。


「あんた、こんな所で何している」


「……ランニングしてたんだ。体力ないからおじいちゃんのメニューを参考にして」


「あれを?…はっ…脳筋かよ…」


「それより、お前もなんでがこんな所に…それにさっきの魔法…」


「あー、まぁ…母親の手伝いだ。私の母親があんたの所の千夜子さんたちがやってる月音魔法警備隊つきねまほうけいびたいに所属しているから。さっきの魔法は私が母から受け継いだ魔法だ。これでいいか」


「そうなのか…」


 話に夢中になっていた二人にもう一人、襲われそうになっていた少年が声をかける。


「お前ら、何僕を無視して話し合ってるんだ。それに僕は助けなんて求めてな………………うわぁぁぁぁ!」


 突然叫んだ少年の目線の先をみるともう一体先ほどの妖魔と同じ大きさの妖魔が口を開いて攻撃しようとしていた。それに気づいた二人は少年をひっぱり、その攻撃をかわそうとする。

 かわしきれないと思った千颯は昨日本で読んだ、一つの呪文を思い出し、刀を握り直した。


「氷剣技魔法、『氷壁(ひょうへき)』」


 呪文を唱えると千颯たちの前に氷の壁が出現する。その魔法で攻撃を防ぐと千颯は刀を構え、次の攻撃を仕掛けようとした。

 しかし、攻撃を仕掛けるまえに南雲が千颯を止める。


「まて、あいつは木属性だ、ということは氷属性の魔法はあまり効果がない。」


「えっ……」


「そして、私の風属性もあまり効果が無い。だから攻撃しても無駄だ。」


「じゃあ、どうすれば……っ!」


 そう話していると千颯が作った防壁が壊されてしまった。

 千颯と南雲は瞬時に攻撃を避けると、次の攻撃に備え、武器を構えた。


「どうするもない。ただ、応援が来るまでやれることをやるだけだ。………いくぞ月神千颯」


「!……ああ、そうだな。桜崎南雲」


 2人で攻撃をしようとした次の瞬間──


菊火玄武(きっかげんぶ)鎖魔法(くさりまほう)菊火炎(きくかえん)』」


 妖魔の後ろから苦無に鎖がついたようなものの武器が飛んできて、妖魔に巻き付くと菊の花弁が舞い落ちその花々が激しく燃え始めた。


「この魔法は……」


 南雲がそう口に出すと後ろから見知った顔が燃え盛る妖魔を飛び越えこちら側へと向かってくる。


「やっほーなーちゃん。ちゃんと周り確認しないとダメだよぉ。妖魔は群れで行動する時もあるんだからぁ。あとぉ、ニャンちゃんとそれから僕も大丈夫ぅ?。」


「燎香!!わかってるし!というか大丈夫ぅ?の前に火!火!早く消せ!!」


 焦ったように南雲が燎香に訴えるが燎香は落ち着いた様子で答えた。


「大丈夫だよぉ。だって……」



菊水虎(きくすいとら)槍魔法(やりまほう)菊湧水(きくゆうすい)』」


 呪文が聞こえると燃え盛る妖魔に槍が突き刺さる。突き刺さった槍から白い菊が咲き、その咲いた花から湧き出るように水が妖魔を覆い、燃え盛っていた妖魔が一瞬にして水によって火が消える。倒れた妖魔は灰のように消え去った。


「全く、本当に人使い荒いんだから〜。燎香は〜」


「ごめんごめん。でもあおくんはちゃんと間に合うって思ってぇ……えへへ」


 能天気に答える燎香に南雲と蒼は呆れてため息が漏れる。そんな3人を傍から見ていた千颯も燎香には苦笑いを浮かべていた。


(すごいな。ある意味感心する。それだけ信頼しているというのは…簡単にできることではないからな…。そういえばさっきの男の子はどうしたんだ?)


 思い出した千颯は3人を遠目で見ながらブツブツ呟いている少年を見つけた。

 助けてもらったのに少年の表情は彼ら3人を睨んでいた。そんな様子に千颯は首を傾げ、声をかけようとした。だが、


「なんなんだよ!さっきから!僕は助けてなんて言ってないのに!……ちょっと魔法が上手く使えるからって!!!」


「はぁあ?さっきまで魔物に怯えてただろ!なんだその態度!」


 少年の言葉にかっとなりやすい南雲がすぐ突っかかった。そんな南雲に対して燎香と蒼は落ち着いて南雲を宥めながら答えた。


「まぁまぁ。なーちゃんは落ち着いてぇ。それに僕はぁ……同じクラスだった鍛治寺竜樹(かじでらたつき)くんでしょう?危なかったから助けたつもりだったけどぉ…いらないお節介だったらごめんねぇ」


「そうだよ〜。僕たちは妖魔が見えたから任務として魔法を使っただけだよ〜。別に魔法を上手く使える訳じゃないしね〜」


 しかし、そんな態度が癪に触ったのか鍛治寺竜樹は怒りをあらわにしていた。


「それにお前らなんて親がすごいだけだろ!魔法がちょっと上手く使えるからって僕のこと馬鹿にしてるんだろ!」


 壊れたように怒りを露わにする竜樹にその場にいた全員が彼の放つ異様な雰囲気に目を配らせた。


「ねぇ。なーちゃん……ちょっとまずいかもよぉ…」

「あぁ、そうだな。燎香か蒼、親に連絡出来るか?」

「僕がさっきしたよ〜。でももう一度送っとくね〜」


 南雲たちは、影化する可能性がある気がして親達に連絡していた。そんなふうに焦りを見せている3人とは対象的に千颯は竜樹の態度に怒りを覚えていた。千颯は持っていた雪月刀を収納魔法で戻し、竜樹が混乱して落とした竹刀を拾った。その竹刀を持った千颯は、未だにブツブツ言っている竜樹に向かって思った感情を口に出していた。


「おい、トゲトゲ頭。」


「だ、誰がトゲトゲ頭だ!お前らなんてな親がいなきゃなんにもできないくせに!僕だってお爺様みたいにすごい鍛冶職人になるんだ。なのに、なのになんで────」


 そういいかけた竜樹に千颯は瞬時に突き技を攻撃し、竜樹の左横目掛けて放たれた技は後ろの壁に激突し、その壁には凹みができていた。その場にいた全員が息を飲んだ。


────────────

※中学生以下の剣道での突き技は原則禁止となっております。命を伴う危険な技なので絶対に人に向けてやらないようにしてください。

────────────


「おい……いつ、私達がお前を馬鹿にした。ただ、過去に言われた事に囚われて決めつけているのはお前だろ。それにまずは桜崎達に言うことあるだろ。それを言わずに勝手に馬鹿にされたと思い込んで勝手に感情的になって、そんな奴が助けてなんて頼んでないだあ?ふざけるのも大概にしろよ」


「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさ────」


 千颯はもう一度竜樹がいる方向の壁に向かって竹刀を撃ち込んだ。そんな千颯に怯えた竜樹は黙るしかなかった。


「別に最初から何かを完璧に出来るやつなんていねえよ。お前は見たことあんのか?桜崎の手に弓を引く時にできる豆とか菊ノ宮の鎖を扱う時にできる打撲跡とか、菊市の手の豆もか全部知ってるのか?」


(あいつ……気づいてたのか……)


「最初は誰だって上手くできないから変に力が入って傷ができたりする。でもそれがどんどん成長して上手くなっていく。そりゃ魔力は親からの授かりものかもしれない。でもそれを上手く扱えるかどうかはその人次第。お前だってお爺さんみたいな鍛治職人になりたいんだろう?だったら竹刀であっても物作りを目指してる者なら大事に扱わないといけないのではないのか?そうだろう?」


 そういうと千颯は竹刀をおろし、竜樹に返した。

 竜樹はそれを受け取ると大事そうに竹刀を抱えた。


「確かに……そうかもしれないけど。できるかな僕に。魔法を使う能力も魔力も少ないのに…」


「そんなものやってみないと分からない…ただ、言えることは魔力が少なくてもすごいやつはいる。桜町病院の燐斗先生もそうだ。あの人も魔力は少ないんだ。でもそれを補う技術と能力を持っている」


「でも、それはあの人がすごいからであって僕なんかが…」


 竜樹は自信がないのか顔を下げた。そんな様子に千颯は少し微笑みながら落ち着いた様子で話しかけた。


「確かに努力が必ず報われるかどうかは分からない。ども一つ言えるのは、成功している人たちは必ず努力し続けられる人たちだ。それにできるできないではなく、やりたいかどうか本人次第だ。自分が決める道に他人の言葉なんてちっぽけなものだろう?誰もがお前を馬鹿にするわけじゃない。過去に何を言われた知らないが、決めつけるのではなくその人がどんな奴か見極める力も必要なんじゃないか?」


 千颯の言葉に竜樹は顔を上げた。


「やりたいかどうか。そうかやりたいかどうかか。そうだな。うん確かにそうだ!僕やってみる!」


「ああ、そうだな。あ、でもまず先に私たちというか桜崎たちにいうことあるんじゃないのか?武道極めるもの『礼に始まり、礼に終わる』だろ?」


 千颯は竜樹の視線を南雲たちに視線を向けるように促したのだった



 





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