3-5 屋敷の結界再構築
移動も公務の範囲内という扱いになるので、到着した翌日と翌々日は、セレンディア魔法省勤務のナユカには休日となる。リンディの結界破壊士護衛任務は往復の道中のみとなっており、フリーランスのセデイターは、帰りまでは自由行動。ただし、今回はこちらに出没するセデイト対象者を処置するために来ていることに加えて、ウォルデイン魔法部長の要請により、助手と合流しなければならない。よって、ナユカとの間でスケジュール調整をする必要がある。
朝――といっても、朝である要素がかなり失われている頃、リンディが目を覚ますと、隣のベッドにナユカはいなかった。
「ふぁ……どこ行った……あの暴走娘は……」
最近、ナユカとサンドラの類似性をなんとなく感じているせいか、つい、そういう表現になった。フィリスという監視の目もないし、その辺りをのびのび走り回っているのかも……。特に心配なこともないので、無理やり起きようとはせず、そのままベッドの上でうだうだしていると、元ランナーが元気に戻ってきた。
「あ、起きましたか? おはようございます」
「おはよぉ」上半身を起こしたリンディは、ぐぐっと伸びをする。「どこ行ってた?」
「ちょっと、結界の除去を」
「結界ぃ? ふぁ……」大あくび。「どこの?」
「家の周りのです」
「ああ、昨日おねーちゃんが言ってた……。で?」
なんで、今日、それも朝っぱらから……といっても、もうそんなに早くはないけど……というのを「で?」で済ませたリンディの質問意図を汲むナユカ。
「それは……朝、目を覚ましてすぐ、ユリーシャさんが来まして……」
「どうして起こしてくれないの!」
こういう場合は、寝起きのわりに声が出る。
「リンディさん、眠ってましたから」
「いや……だから……」
その状態の人間を覚醒させるのを「起こす」というはずなのだが……。リンディは天然に対応できるほどには、まだ目覚めていない。
「ユリーシャさんが、起こさないでいいって」
「あ、そう? なら、いい……」
シスコンが非難を中止したので、ナユカが説明を始める。
「それで……」
いわく、訪れたユリーシャが目覚めていたナユカに、今日のいつでもいいから結界の除去をしてほしいと頼んできたため、結界破壊士は快諾し、起き抜けの一仕事をしてきたという。
「……てことは、もう朝ごはんは食べたんだ?」
「いえ、まだですよ。リンディさんと一緒に食べようと思って」
文字通り朝飯前。外へ出て、結界が出るのを待って、一通り触ってくるだけ。あとは、結界を生成する人たちの作業となる。ユリーシャは、これで作業の進行が早まると喜び、天才結界破壊士に感謝していた。自分が特に努力したわけではなくても、役に立ったのなら、ナユカはうれしい。
「そう」ご飯も食べずによく動けるな、と食道楽は思う。これ以上待たせるのも悪いので、行動開始。「じゃ……着替えますか」
とはいえ、本日リンディには取り立てて予定がなく、起こすべき行動はといえば……食事である。そして、それは今、重要案件となっている。なぜなら、先にダイニングルームへ向かったナユカが残した情報によれば……ユリーシャが食事を作ってくれるからだ。ゆえに、可及的速やかに着替えを終え、そこへ向かわなければならない。
まだ、完全に目を覚ましたとはいえないシスコン食道楽は、朝、屋敷内をうろつくに当たって最低限必要となる身支度を辛うじて整え、ダイニングルームへ急行する……。
「あ。早かったですねぇ」
ナユカはすでに着席している。
「おねーちゃんは?」
「キッチンです。わたしもちょっとだけ手伝ってきました……けど……」
「手伝ったの?」
まさか、味付けに関わってないよね……と、懸念するリンディ。ナユカには悪いが、ピュアなおねーちゃんの料理が食べたい。
「食器を並べただけです……邪魔になりそうなので」
「うん、そうだよね」うなずきつつ席に着くと、この言いようはちょっとナユカに失礼だと、リンディは改心する。「あ、ごめん」
「いえ、いいんです。わたしも料理が得意なわけではないし……まぁ、フィリリンよりは……」
その先は言わずもがな。フィリスの料理と比べれば、いたってふつう。
「ユーカは、下手ではないもんね」かの比較対象の料理は、食道楽も二度ほど口にしたが、間違いなくおいしくはなかった。「……おねーちゃん、おはよっ」
妹がいち早く姿を捉えたのは、キッチンから現れたユリーシャ。
「おはよう、リンリン。よく眠れた?」
「うん。でも……おねーちゃん、来なかったね」
姉の立場上、警備体制などの打ち合わせが事前にできていないと難しいことは、リンディもわかっているが、もしかしたらと期待していた。
「ごめんね。ユーカさんがお疲れかなと思って、遠慮したのだけれど」
言い訳ならぬ医師の指摘を、体力自慢は認める。
「……実は……けっこう疲れてました」
同じ道のりを何度も行き来している、旅慣れたリンディと違い、昨日のナユカはそれなりに疲労していた。肉体的にというよりも、精神的に。
「それなのに、朝早くからお仕事頼んじゃって……ごめんなさい」
「あ、問題ないです。寝たら、疲れがすっかり取れましたから」
「ユーカの体力は、サンディ並みだからね」
共通の友人を絡めた妹の注釈に、姉はまさかという表情。
「そうなの?」
「いえ、そこまでは……たぶん」
本人が完全否定しない……ということは、本当かも……。感心と驚愕が入り混じったようなユリーシャ。
「そうなんだ……ふーん」
「いつか、ああなるよ、たぶん」
もちろん、あの人の「ああ」。半ば冗談として口にしておきながら、ナユカがそうなった状態をリンディも想像したくはない。
そんな会話の間に、メイドが給仕をし、妹いわく「世界一の料理」がテーブルの上に並んだ。配膳を終えたメイドへ、いつものようにユリーシャは微笑む。
「ありがとう」そして、ふたりに食事を促す。「では、召し上がって」
調理した本人は、通常のタイミングで朝食を済ませており、今はお茶メインにて少し付き合うだけ。ユリーシャにはリンディのような食い意地はなく、どれだけ食べても太らないという体質でもないので、食事の量は常識の範囲内。
食道楽が「世界一」の朝食を済ませて大満足したところで、ユリーシャが切り出す。
「これから、用があって出かけるんだけど……」
「あたしも行く」
速攻で食いついた妹には、残念なお知らせが。
「できれば、リンリンにはここに残っていてほしいの」
「なんで……?」
悲しげな雰囲気をかもし出すリンディ。
「実は、結界の構築作業がもう始まってて……」ここで、ちょっとあわてる責任者。もちろん、このセデイターの得手不得手については知っている。「あ、リンリンはやらなくていいから」
「……」
無言の妹を取り成そうとする姉。
「あのね……リンリンは、今日はお休みでしょ。だから……ね」
先日の練習で少しは慣れたとはいえ、自分が苦手なのは知っている。それに、こういう作業は結界の専門家に任せたほうがいい。
「わかってる……」
それでも、複雑な気分が多少混じるのは仕方がない。ユリーシャも、それを感じる。
「えーと、それで……作業の監督をしてほしいの」
「監督?」
「といっても、出来映えのチェックくらいかな。あとは、進行状況によっては、ユーカさんにまた結界を除去してもらって……」
ユリーシャの視線を受け、結界破壊士はうなずく。
「はい」
「そのあたりは、結界士の方々と相談して、リンリンが決めてくれるとうれしいな」
姉からそう言われて、断る由などない。
「任せて。しっかりやるから」
「ありがとう、リンリン。がんばりすぎないでね」ユリーシャは、ふたりの肩に軽く触れる。「お願いね、ユーカさん、リンリン」
それからしばらくして出かけていったユリーシャは、夕方には戻ってくるとのこと。「がんばりすぎないで」という言外の意味を察知しないリンディではないが、姉から依頼を受けたことから、どうしても監督過剰になりがちで、幾度となく作業現場へ足を向けてしまう。とりたてて口出しすることはないものの、作業をする側にとっては、少々気になるものだ。
一計を案じたナユカが、「旅の疲れを取るために今日はしっかり休む」ことを提案したところ、「ユーカって意外と体力ないねー」と返される始末。もっとも、リンディもその意図自体は理解したようで、当初のように頻繁に現場へ行くことはなくなった。
ただ、そうなると、双方ともにひまである。もともと休みに当てていたとはいえ、その主たる部分を姉にじゃれつく腹積もりだった妹は、その対象をナユカに切り替えるというわけにもいかず、することがない――ゆえに、だらっとする他はない。まぁ、そのほうが体の疲れは取れるだろう……。体を動かしたくてたまらないもう一人の暇人のように、運動するほうが疲れが取れるなどという考え方は、リンディにはない。
だれていたとはいえ、姉から頼まれたからには、作成された結界のチェックをきっちりとこなす現場監督は、数箇所の不出来な部分をきっちり指摘して、結界士たちから煙たがられ……ることはなく、むしろ感謝された。彼らとて、王族の屋敷の結界作成に瑕疵があっては、後々問題が発生したときに責任を問われかねないし、逆に万全に仕上げれば大きな実績になる。
部分的な修復を終えても、まだかなりの時間があったため、リンディの判断でもう一区画の結界の張り直しを進めることにし、ようやく、ナユカの出番が回ってきた。結界士たちはあまり乗り気ではなかったが、それは、結界をいったん完全除去することを考えれば、夜までに結界を仕上げる時間はないと考えていたからだろう。ナユカが結界を除去したのは、自分たちが現場に現れる前だったため、その能力を知らなかった彼らが夜間の作業を覚悟したのは、無理なからぬことだ。しかし、それは天才結界破壊士の「神業」により、杞憂に終わる。
そして、こういったケースでは必ず、唖然とした目撃者から、どうやったのかと聞かれる「天才」が、それは「秘技」であると答えておくのは、これを始めてからのいつものパターン。こういう言い訳をするのも、本人ももう慣れてきた……。それに、秘密であることは事実だから、決して嘘ではない。「技」であるかどうかは、ともかく。
結局、リンディの思惑通り、夕方前には割り当てた結界の張り直し作業が終わり、結界士たちは喜んで早めに帰宅していった。予定の二倍のスピードで作業を進められたのだから、それは彼らの実績として誇れるものとなるだろう。ただし、天才結界破壊士の「秘技」なくしては、同様の作業速度を再現できないことが、大きな問題点ではあるのだが。
結界士たち全員の退去を見届けたリンディが、遠くを見ながら口を開く。
「ちょっと、散歩しない?」
「え?」
らしくない……。作業が終わったら、部屋でだらだらしながら、おやつでも食べていそうなのに……。というのが、ナユカのリンディ評。
「庭園を。……花とか咲いてるし」
意外。花に興味あるなんて……この食道楽は完全に花より団子だと思っていた……。ともあれ、散歩に反対する理由はナユカにはない。
「はい、いいですよ」
むしろ歓迎である。部屋でじっとしているよりは何倍もいい。
「よかった。ひとりじゃ……つまらないし」
つまり、ひとりでも花を見るために庭園を散歩する気だったと……。リンディを見る目を、ナユカは変更せざるを得ない。ふたりで花を愛でたいなんて、もしかしたら、わりと乙女な人なのかも……。
そして、ふたりはのんびりと庭園の散歩を始める。花には詳しくないので、異世界人には、元の世界とこの世界の花との類似点や相違点がわからない……が、たとえ特訓好きのスポーツ女子であっても、花を愛でるような情感は備わっている。
「リンディさん、あの花……」
しかし、話しかけた相手は、それどころではなかった。ちょっと気になる花を指差したままナユカが振り向くと、そこには誰もおらず、視線の先に映ったのは、脱兎のごとく走り去る後姿。一呼吸の間、唖然としながらも、走りの専門家はすぐに猛然と追いかける。
「おかえりっ、おねーちゃん」
妹が怒涛の走りで出迎えたのは、彼女にとっての最高の花――予告どおり夕方に帰ってきた姉だ。
「ただいま、リンリン」
そもそも、ユリーシャの出迎えこそが、リンディが室内に戻らなかった理由である。ひとりで庭園を散歩するのは退屈なので、ナユカを誘っただけ。その姉に妹が抱きついているゴールへ、スタートで出遅れたランナーが遅れて到着。さすがの快足だが、本人が予測したほどには、差は縮まらなかった。
「はーあ」無酸素で走ってきたので、いったん息継ぎ。「おかえりなさい、ユリーシャさん」
「お疲れさま、ユーカさん」
微笑むユリーシャ。本来は、用向きから帰ってきた者へとかける言葉だろう。
「大丈夫です、このくらい」
後方のナユカに気づいて、妹は姉から静かに離れる。
「……意外に……遅いね、ユーカは」
どうだといわんばかり……だが、息は弾んでいる。
「そうですね……スタートでやられました」
ロケットスタートもいいところだ。悔しいが、先ほどのリンディはスタートだけではなく速かった。その点は、元陸上部も認めざるを得ない。それにしても、目標次第でこれほどまで速くなるものだろうか? リミッターを外した人間のポテンシャルというのは、計り知れないものがある……。もしくは、もともとこのセデイターには、走りの才能が備わっていたのかもしれない。魔法を回避する機敏さはあるわけだし。
「……トレーニング不足なら……あたしが……鍛えてあげよっか?」
息が整わないながらも、からかってきたリンディに向け、その潜在能力を見極めたくなった競技者の瞳がきらっと光る。
「そうですね……お願いしましょうか」
その呼吸はすでに、完全に普通の状態だ。それを見るにつけ、間違いなく、逆に自分自身へのハードすぎるトレーニングになると、リンディは悟った。まさか、本気じゃないと思うけど……適当に誤魔化そう。
「……ま……そのうち……ね」
「あら? 明日もまだお休みでしょ?」
ユリーシャの指摘どおり、明日はまだ本業には出ず、休む予定。余裕を見て、到着した五日後が助手と合流する指定日になっており、それまでは動けない。今回のセデイトは、助手付きが条件である。
「明日は……えーと……だから、休むから」
つまり、「休み」は「休む」と。
「あら、残念」
ユリーシャもまた、ナユカへのトレーニングは、結局はリンディ本人へのものになると予測している。
「お……おねーちゃん、どう?」
シスコンの妹も、まれに姉に反撃することがある――各所の筋肉痛が、かかっていれば。
「わたしは……明日は、することがあって……」
言い訳めいている……。ちょっと、追求してみる妹。
「それじゃ、あさっては?」
「しばらくは、結界に掛かりっきりかな……」
言い訳ではない。姉は屋敷の結界張り直しを監督し、そして、外では結界破壊士の助手をする。つまり……。
「やっぱり、ユーカはずるい」
という結論にシスコンは至った。
「そうですよねぇ……はは……」
昨日も言われている本人は、苦笑い。
「やっぱ、あたしもついてこうかな……」
予想された妹の反応、というか、駄々こねを、姉がなだめすかす。
「リンリンは、セデイトのお仕事があるでしょう?」
「そうだけど……」
「この辺りに何人かいるのよねぇ……」
ユリーシャも、その情報を得ている。対象者がこの地方にいると聞かされたから、本業を再開する気になった……セデイターは、その初期衝動を呼び起こした。
「大丈夫。おねーちゃんは、あたしが守る」
「ありがと、リンリン」
「……ユーカはずるいけど」
完全な八つ当たりだが、障らぬシスコンに祟りなしということで……ナユカはただ苦笑するのみ。トレーニングの件は、結果的にすっかり誤魔化された。
次の日は、ユリーシャは屋敷の結界張り直しの監督、ナユカはそのための結界除去、そして、リンディは……姉に付いて回るという形になった。前日はたまたま作業監督を代行したセデイターも、この日は暇である。一方、結界破壊士も、本日の作業監督からの要請で、朝方に必要な分の結界除去を終えてしまったので、その後は、やることがなくなっていた。
それなら、同様に暇なリンディと一緒に、ナユカにとっては初めての街の観光にでも出かけたいところだが、どうも、そう都合よくはいかない。シスコンセデイターは、パワーをもらうとかいう名目で、姉に付きっ切り。到着の五日後には、本業のほうへ戻らなくてはならないため、今のうちに姉にじゃれ付いておこうということらしく、その意味では忙しいようだ。
そんなわけで、リンディに街の観光案内をしてもらうことは、ナユカも諦めた。それならばひとりで行くと言ったものの、魔法を無効化する異世界人を単独で街に出すことは、ユリーシャ並びにその一因である妹から反対されたため、結局、一昨日から話にあったように、敷地内をランニングすることにした。一日中走っているわけにはいかなくても、これはこれでストレス解消になる。
いちおう緊急時の伴走者として、執事の中から体力自慢の者がついたが、その体力は走力のほうへ割り振られてはいなかったようで、ナユカにぶっちぎられることになり、その役目を果たすこと能わず。執事は自ずから猛省し、今後、こういうことがないようにトレーニングをする、そこで、その方法を教えてほしいとナユカに願い出たため、それを快く受けた快速娘の無聊はかなり軽減された。ついでに運動不足のリンディも参加させたいところだが、あちらは姉パワー吸収に余念がないらしく、こちらのことなど見向きもしない。特に忙しくはない「作業監督」であっても、まとわりつかれるユリーシャはうっとうしくはないのだろうかと少し見ていたところ、そんな素振りは微塵もない。自分に兄弟姉妹はいないので、あんな姉がいたらと、リンディがうらやましくなるナユカだった。
その次の日は、ここ二日ほどの倍以上の結界士が作業に現れた。できるだけ早く結界張替え作業を終わらせるべく、二日前に街の魔導士ギルドでユリーシャが募集をかけたとのこと。王族の屋敷を手がける名誉に加え、給金がいいことも相まって、ギルドマスターが能力を保証する結界士がすぐに集まったという。もちろん、それにユリーシャの魅力が加わっていることは、言うまでもない。それは、ただこちらの王族へ外国から嫁いできた上品な美女という外面的なことのみではなく、ヒーラーとしての能力は魔導士の間で広く知られており、その点でも彼女は一目置かれる存在なのである。
多数の結界士を集めた甲斐あって、本館周りの結界の張替えはこの日にて終了。残りの屋外の結界は、今回の計画では、離れや蔵の周りくらいだ。さほど大きくはないので、この人数プラス天才結界破壊士ならば、あと一日でどうにか終わると見込まれ、実際、そのとおりになった。なお、金庫など、室内の重要な場所に張る結界は手が付けられていないが、それらは代々王族に仕える、いわば「由緒正しき」結界士に依頼することに決まっており、後回しとなる。
ともあれ、ここ四日ほどの張替え作業の間、ナユカが一瞬で結界を消去するさまは、作業に当たった結界士たちから驚きとともに目撃され、その名前と能力は彼らの記憶にしっかり留められた。彼らのほとんどは、ふだんから結界の構築のみならず破壊作業も手がけているため、職業的な危機感を禁じえないものたちもいたが、ユリーシャからこれから多数の結界構築オファーがルウィッセ王国魔法省より舞い込むはずだと聞かされ、それは相応に緩和された。こちらの魔法省は、まだナユカの能力を垣間見てはいないものの、それを目にすれば、おそらく彼女がこちらにいる間に結界の張替え作業をできる限りやってしまおうという気になること、請け合いだろう。そして、その先鞭をつけるのが、明日向かう場所、セデイターズ・オフィスである。




