抱き合えば
「郁、そっちに戻ったら、一緒に住まない?」
そう言うんじゃないかと思っていた。
慶太と付き合い出して分かった事は、
案外、嫉妬深くて、独占欲が強い。
だから本当はこの遠距離恋愛も、
もどかしくて堪らなかったんだろうと思う。
もちろん、私だってもどかしいと感じていたけど、
年下で良かった、だから先生と会えた、
なんて、口では格好いい事を言っていても
本心は子供だと思われたくなくて、
少しだけ、無理している事も、分かった。
私は、嫉妬される事も、独占される事も、
慶太になら、嫌だと感じないのに。
京太との事があって、同棲や、結婚に
億劫さを感じているのは事実だった。
京太とはあれ以来、
連絡さえ一度たりとも取っていない。
だからこそ余計に、
慶太とこうなってしまった事を心苦しく感じた。
「うん…考えてみる。」
慶太と一緒に住みたくないわけじゃない。
私たちは、お互いに気持ちを持ったまま
離れていた分、
他人からするときっとバカみたい、と、
思われる程、お互いを大切に思っている。
と、思う。
毎日電話は欠かさなかったし、
会えば何度となくキスをし、抱き合った。
だから、そう、ってわけじゃないけれど、
抱き合えば、どれだけ想っているかは感じれた。