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大好き
私と慶太は、付き合い始めた冬の日を待って、
婚姻届を提出した。
お互いに家庭には問題があったし、
結婚式は挙げなかった。
ただ、慶太がちゃんとしたいから、と、
大きなダイヤの婚約指輪をプレゼントしてくれた。
先に一緒に暮らし始めていたもんだから、
新婚生活らしい事は何一つなかったけど、
玄関の表札から城ノ戸の文字は消え、
平木、だけになった。
学校に結婚の報告をして、新姓を告げると、
あの時の噂と過去の男子生徒がリンクしたのか、
学年主任は眉を寄せ、怪訝そうに溜息を吐いたけど、
まぁおめでたい事だから、目を瞑りましょう、
と、慶んでくれた。
「慶太、検診遅れちゃう、早く!」
そして、私たちはもう数ヶ月もすると、
新しい家族を迎える。
沢山遠回りして、傷付いて、傷付けて、
自分勝手な恋だったかもしれないけど、
この人と出会えて、良かった。
「郁、待って、ん。」
玄関を出る前に、甘いキスをした。
「大好きだよ。」
「俺も。」