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池  <第1部>  作者: M:SW
20/30

告白

『なーんてね。ビックリした?』

おどけた感じで遠藤は言うが、目元は笑っていない。

何を考えてそんな冗談を言うのか、全く理解できず

『そーゆうデリケートな冗談、やめろよな。』

『真面目だなぁ。』

『そんで、何なの?何が言いたいの?』


『オレ、結婚する!』

ドアを開きながら、そう言って田島が戻ってきた。


ちょっとピリついた空気が一変する。

オレも遠藤も呆気にとられて反応できない。


『え?』

『え?』

オレも遠藤も、それしか言葉が出てこない。


祝福してもらえると思っていた田島は

『もぅ、だから、結婚するの!!』


『えぇぇ。』

やっぱりそれしか言葉が出ない。


興奮ぎみの田島本人がイスに座り落ち着いてから、再び言う。

『オレね、結婚するから。』


三度目でようやく受け入れたその言葉を、そのまま返す。

『結婚すんの?』

『だーかーらー、そう言ってるでしょ。』


『ほぅ。おめでとう。』

『何それ。全然心がこもってないじゃん。』

『いや、だって、なぁ。』

遠藤と顔を見合わせる。

『そんな兆候なかったじゃん。付き合ってる女がいたことすら知らなかったよ。』

同じ事を思っていた遠藤が言う。


『へへ。まぁ、まぁね。電撃結婚ってやつ?』

『なんか、想定外。あ?ん?遠藤系?』

田島らしくないとは思いつつ、遠藤と同じデキ婚かと思い聞いてみる。

『遠藤系?あぁ、出来てないよ。子供でしょ。』


『おいおい、勝手に“遠藤系”にしないでくれる?』

『いや、だって、そうだろ。』

そう言ってから、ふとさっきの冗談を思い出した。

あれは、何だったんだ。冗談だと言った割りに、いつものふざけた感じはなかったし、一瞬本気だと思った。目はマジだったように見えたが、気のせいか。だって、遠藤は結婚して子供もいるんだから。

さっきのが本気だとしたら、両方いけるクチか?


まぁ、いい。今は田島の方が気になる。


聞きたい事が多すぎて、何から聞いていいか分からない。


『あ、オレ先行くわ。時間ねーや。』

時間を確認した田島が、慌ただしく弁当の残りを食べ、

『じゃ。』

と言ってまた出ていってしまった。


オレと遠藤はまた二人、残された。

『何だったんだ。何か、嵐みてー。』

『あぁ、田島らしくない感じたけど、アイツも色々あんだな。』

そう言った遠藤の“アイツも”が引っかかる。“も”って事は、やっぱり遠藤も、何かあるんだ。


『なぁ。さっきの、何だったの?』

話を戻すと、困った顔で話すのを渋っているようだった。


『例えば、だよ。例えば、オレが松本の事、好きだとしたら、お前はどう思うか、と思ってさ。』

『例えてどーすんの?お前、女も男もイケる系?オレと浮気する気?』

『いやいやいや、そんなんじゃなく。そんなんじゃなくて。』

反論が弱まっていく。


遠藤は食べかけのご飯に箸を突き刺し、箸から手を離す。

“ご飯にお箸を刺さない!”

親からの教えが頭をよぎる。

『おい。』

ご飯に突き刺さった箸を取り、テーブルに置く。

『真面目だなぁ。』

さっきも言われた気がした。


不機嫌なのか、何なのか、いつもと違う遠藤の言動に、さすがに怒りがこみ上げる。

『だから、さっきから、何なんだよ。オレ何か悪いことした?今のお前、ムカつく。』

この歳で、ケンカをするとは思わなかったが、我慢できなかった。


『お前が好きだ。本心だ。』

『何言ってんの?また冗談?』

『女と結婚したけど、偽装だよ。子どもも、オレの子じゃない。』

『何言ってんの?』


怒りがしぼんでいく。

それどころか、自分が恥ずかしく思えた。

遠藤に比べたら、オレの悩みなんか、ミジンコくらいだろう。

小説家?運命の出会い?チャレンジコース?

遠藤は、どれ程の苦悩の中にいたんだろう。

明るくて、面白くて、行動力があって、ちょっと神経質。

どこからが本当で、どこまでが虚像なのか。


男に告白された自分の事なんかより、遠藤の心の内を思わずにはいられなかった。


『いなくなるなら、言っとこうかと思ってさ。』

笑う遠藤の表情は、悲しみに溢れている。

オレの方が泣きたくなる。その悲しみを、受け止めたいけど、それは出来ない。

『どーすんの?チャレンジコースの話、ボツになったら。』

『ハハッ、そりゃ困る。』

『困られても、困るけど、どーなるかな。』


『あーあ、言っちゃったよ。あー、何か、スッキリした。』


それなら


『オレ、小説家になりたくてさ、今、書いてる。』

死んでも誰にも言えない、と思っていた事は、案外あっさり言えた。

『そう思わせてくれた人が、オレを蹴落とした人。男だし。アーティストだし。歌聴いてたら、大泣きして。』


『なに?何の話?』

『あ?』

『だから、何言ってんの?』

『オレの告白だよ。お前が本当の事言うから、オレも言っとこうと思って。』

『何だそれ。』

『あー、何か、オレもスッキリした。』



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