失望と嫉妬-6 汚れた心
「マオ!!」
タカノは連れ去れれそうになる娘の名前を叫びながら屋敷の中を駆けて行った。
悲鳴の聞こえた場所に向かうとそこには、赤いボロボロになった武官装束に身を包む男が気を失ったマオを片手で抱き上げていた。
リンとメイはシャーといいってすごい形相で威嚇をしていた。
シュリムは弓を構えてその男を狙っていた。
「タカノ・ウル・ラシュト!!見つけぞ!!!」
武官装束の男はそう叫んで、タカノを睨みつけてそう言った。
男の顔を見て彼が何者かをタカノは一瞬で判断がついた。
「グンウ・ガイ!!!」
タカノがそう叫ぶと、グンウは不気味な笑みを見せてマオを抱えたまま身の丈以上がある塀の上に飛び移ってこう言った。
「俺は、お前と勝負がしたい!娘は預かる。これは決闘だ!」
グンウはそう言ったあと塀を降りて行った。
タカノは助走をつけて、屋敷の塀を飛び越えて行った。
「うわぁー2m以上はある塀を飛んじゃったよ!」
シンがそう叫ぶ声が聞こえたが、タカノはなりふり構わず、馬に乗って逃げていくグンウを走って追いかけることにした。
「タカ兄!待ってて追いかけるから!!」
「わかった!!」
タカノはそうシンの言葉を聞いて、そう答えて全力で駆けて行った馬を走って追いかけた。しかし、いくらチートスキルである超人的な身体能力を持っても...
馬の全力疾走にはタカノは追いつくことは出来なかった。
グンウとマオを見失ったタカノは足が止まり、こみ上げてくる感情を抑えきれず叫んだ。
「クソォ!!!!」
タカノは大きく息を吸って心を整える努力をしようとした。
冷静にならないと考えも浮かばない、だけど……
大切な人をさらわれた事実は無情にも心の中に残り、冷静を入れる隙間などなかった。
「タカ兄!」
息を切らしたシンが何かの紙を手に持っているのを見て、それを奪い取るように手にとって書いてある文に目を通した。
「本日の正子。蘭峰の廃屋敷で待つ...だって、」
「タカ兄落ち着いて...絶対罠だよ!あの身の身のこなしに魔力はグンウ・クウは使徒だよ!!」
タカノは歯を食いしばりこう言った。
「蘭峰までは、4時間はかかる...今から向かう。
シン....義禁庁に行って増援を連れてきてくれ、俺は先に行く」
「分かったけど、一人じゃ...」
「娘が連れて行かれたんだ!」
タカノはそう怒鳴り、蘭峰の廃屋敷へと向かった。
娘が危ない、頭の中でその言葉が埋め尽くしていって....
ふと、過去に全てを失った自分を思い出して怒りと共になんとしてでも大切な人を奪わせないという思いが心の中からこみ上げてきていた。
ーーーー
都を出る時点で既に日は沈み切って、月明かりだけが街道を照らしていた。
薄暗い街道をタカノは一人、駆け抜けていた。
娘が怖い時間を長く過ごさせたくはない。
頭の中に昔あった、愛しい人を失った記憶が蘇ってくる。
『必ず、助けてやる』
タカノはそう心の中で言って、息が上がったところで廃寺院に到着することができた。
久々に本気で体力を消耗するような距離を走っていたのに到着してから気がつくことができた。
陸軍のレンジャー訓練で自分の限界を超えた経験がある意味で心を支えてくれていたような気がしていた。
ただ、
チートスキルで身体能力が強化されていて実際に走り抜けた距離は普通の人が限界を超えてしまう距離を走ってはいた。
ある意味でこうして、自分の身体能力を確かめることができて、過去の自分とは違うことが分かって
過去のようなならない自信が湧いてきて安心することができた。
タカノは太刀を抜いて、廃屋敷中に入った。
屋敷の敷地内の中庭は火が焚かれていて薄明るくを照らしていた。
奥の方に、ボロボロになっや赤い武漢束帯に身を包む男がタカノと同じく太刀を抜いて真剣な眼差しで境内に入ってきたタカノを見つめていた。
「そう心配するな、子供は無事だ。計画は失敗に終わった。
ただ、これから先は個人的に方を付けたい事だ」
タカノはそれを聞いて、太刀をグンウに向けてこう言った。
「グンウ・ガイ!!
お前には今回の騒動に関しての手配が出てる。神妙に縛につけ!」
グンウはそれを聞いてため息をついた。
「それは武官としての言葉だな」
「そうだ。
これは個人としてい言う。マオを返してもらう....俺は二度と大切な人を奪われたくない!!」
グンウはそれを聞いて、タカノに剣先をため息を着いた。
「そうか、お前も。そうだったんだな....」
タカノはそれを聞いて、グンウには亡くなりはしているが子供がいた事を思い出しこう言った。
「お前も人の親ならわかるだろ?」
「ああ、わかるさ。でも、俺にはもういない。妻も息子も逃げていったんだ....
俺はあれだけ、出世して稼いでどれだけ手間をかけたと思ってるんだ....
でも、俺に外患誘致の疑惑がかかったときに無理心中しようとしていた。俺は止めたが....
最終的に止められなかった。
二人は逃げたんだ。
幸せそなお前にわかるはずはない!」
グンウはそう言って走って突っ込んできた。その速度は人間のものとは思えない速度で少し反応が遅れタカノはもろに太刀で受け止めた。
鍔迫り合いの形になりながらグンウはこう言った。
「俺はこの国を愛した。だが全てに裏切られたっ!
家族を鑑みず、仕事に没頭した。
だが、俺は国にすら愛されてはなかったっ!
上の自分の地位だけを気にする大貴族どもが俺を押さえつけた。
俺は!この国を守ってたのにだ。
悪を懲らしめ、皇帝陛下に仇なす者を処刑した...
それでなぜ...」
タカノはグンウを一度押し返してから、鳩尾に蹴りを入れて吹き飛ばした。
「国を守ってただと。
笑わせるな、無実の人を拷問にかけて自白させ、守るべきである都人を苦しめてたのにか?
自らが正義だ正義だと言って、盲目的に邁進して力を振り下ろして正当化していた事によってどれだけの人が苦しんだかをお前は知らないだろうな」
タカノはそう言って、
頭の中でグンウに関する資料を思い出していた。
彼が都人からは評判が悪く、少しでも皇家を汚したり、逆らおうとしたり噂が経てば直ぐに捉えて拷問ということを行っていた事を....
その結果、民を大切に思う皇帝陛下自身も頭を悩ませていたという話を思い出した。
グンウ自らが正義正義と高らかに言いながら、その剣は誰もが怯えていたと噂も聞いていた。
「異世界人になにがわかる?俺は偉大な中原の民。蛮族の頭でなにがわかるっていうんだ?」
グンウはそう言って、また太刀を構えた。
「くだらんねな。その偉大なお前がなにをしたんだ。
お前は言ったよな、上の貴族は押さえつけてきたって。
お前が今言った言葉、その押さえつけてきたって自分の身だけを気にしててる奴らと同じ愚かな考えだ。
お前は知らないんだろうな、
この帝国が中原の民だけではなく、俺のような異世界人に半獣人族、異民族も共に手をとって国を守るために戦ってことを」
タカノはそう言ってそれを突っぱねた。
今度はタカノがグンウに突っ込んでいって剣を振りかざした。
グンウはそれを受け止めようとしたが、受けきれず肩に刃が食い込んだ。
「のこのこと、自分の地位やメンツを守るために
家族を蔑ろにし、周りに自分の価値観だけをぶつけて
自らが思い浮かべた空想を愛してたんじゃないのか?
お前は無意識の中で家族を傷つけてたんじゃないか。
それだけじゃない、傷つけ殺した奴の中には都人として一生懸命に生きていたのに無実の罪を着せられた奴らもいる」
タカノはそうグンウに言った。
グンウは、都人から嫌われていた。
その理由はありもしない罪を無実の人に被せ捕縛して、厳しい拷問にかけた上で正式な手続きを通さないで刑を執行していたからだ。
調べた結果だが、
中には国の為に働いていた半獣人族の官吏を謀反者として偽装したり、義禁庁に出入りしていた商人が黒社の疑いがあるというだけ拷問にかけたり....
その権力を利用して自らが正義ということで力を振りかざし続けていた。
そんな時に彼の家族は、
都人から執拗な嫌がらせを受けるようになり無理心中をしたという資料をタカノは目を通していた。
きっと家族の守ろうとせずにいたのだろう。
彼がなぜそう盲目的になったかは分からないが、彼自身の行動の結果が....
彼自身の心をより汚していって汚れた心を持つようになったのだろう....
グンウの方にタカノの太刀が食い込んで、骨を砕いた音が聞こえてきた。
グンウは悲しげな顔をしながら、タカノから距離をとってこう言った。
「なぜだ。なぜ、俺はお前みたいな異世界人の若造よりも...評価されなかったんだ。
鬼の義禁大尉と呼ばれ、歩けば悪は退散し都人は安心して過ごせると言われるんだ!
陛下にも気に入られて....
俺はなぜそうならなかった...
自らの身を魔王に捧げて、使徒となったのにここでも俺は負けるのか?」
ミミ「タカノ様って、とても足が早いのですね...シン!急ぎましょう。(タカノ様のスタントシーンが見れませんわ)」
シン「姉御...心の声漏れてる」
リン「マオを助けないと!早く早く」
メイ「シュリムも急いで...お父様のスタンっ」
ミミ「おっといけないわよ〜マオが大変なの!急ぎましょう」
シュリム「(メイ様も見たいんだ...)裏に馬車を回しました。みんなにってください...
そして、今回こそ告知を...」
アルス「次回。失った末路。タイトル短いなまーいっか。俺は留守番だから」
ミミ「あ、シュリムが泣いちゃった...」
シュリム「もーどうしてぇ!ボクに告知させてくれないのぉぉぉ」
メイ「シュリム...泣いちゃっただめよ。よしよし」
シュリム「うーん...お嬢様っ!!」




