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踊る美しき殺人鬼は笑う-6 悲しみの連鎖


レンはシャルの家でお世話になって早くも2週間近くは経とうとしていた。

気がつけばあっという間の間だった。


その間は....

誰かを殺そうとは思うことはこれ一つとも感じることがなかった。

なぜなら、幸せを感じる日々を過ごしていたからだ。


だって、姉さんに会えたのだから....

シャルはきっと姉さんの生写しなんだと、レンは思っていた。


でも、毎晩....

今までたくさんの人を殺して生きてきた事実をふと蘇り恐怖で体が震えていた。


その恐怖から少しでも遠くなろうと思い、

姉さんに会うために使っていた化粧道具も天女の衣装も短刀もシャルに会ってから燃やしてしまった。


女装をして笑いながら切り殺していたのはきっと、

心の奥にある少年の心を守るための仮面だった様に感じる様になったからだ。


生きるために殺しの術をある貴族から教わり、

殺せば殺すほど亡くなった姉さんに会えると思っていたーーー


ただ、

姉さんに会えて嬉しいの

仲良くしてくれたのに最後の最後に殺したロウのことを思い浮かべる日々が続いていた。


それは、

レンはシャルの家にお世話になっている間で、彼女から直接聞いたわけではないが....


「モユク族でシャルという名前の妻がいるんだ」


と言っていたロウの言葉を思い出して複雑な気持ちになっていたからだ。


ーーやっと会えた、姉さんの大事なモノを奪ったのがボク自身だなんてーーー



レン自身はいつか姉さんとは離れて暮らさなければならないと感じていた。


彼女は妊娠してる。愛するロウの子供だーー


「ロウがいないのにボクがその隣にいるなんてできいない....」


レンはそう言って、

シャルの部屋で見つけた。シャルとロウが描かれた一枚の似顔絵を手にとった。


二人は幸せそうな笑顔を浮かべている絵を見てロウは自然と涙が流れてきていたーーー


「レン...貴方は奪ってしまったのよ。シャルの幸せを」


そう姉さんの声が聞こえてレンは周りを見渡すと、玄関先に悲しそうな顔を浮かべる姉さんが立っていた。


「貴方がしたことは...許されないことなの。私を汚して殺した兵士達と同じなの...

自分勝手に人の幸せを奪ったの」


「姉さん...」


レンはふと、姉さんが殺された日の光景を思い出した。

兵士たちは自分勝手に姉さんを犯して、弄んで殺したーーー

なんて最低で憎い奴らなんだと....


でも、今は...

自分自身がその立場だーーー


レンは涙をふと、玄関先には...

暗い顔をして歯を食いしばるシャルの姿があったーー


「ロウを返して...」


シャルはそう言って、手に持っていた血で汚れた鞘に収まる剣を抜いた。


シャルは叫びながら...

剣を両手で持ってレンに向かって走り出した。


レンは...

交わさなかった。そのまま、体重を預けたシャルに押し倒される様に倒れ込んだ。

シャルは馬乗りになりながら


「ロウを返して!!ロウを返して!!」


と叫びながら何度も剣を抜いてレンに突き刺した。

血がシャルの顔に飛び散っていた。


レンはうっすらとしていく意識に中で...

手を伸ばして、シャルに伝えなければならないことを伝えたーーー


「ごめんなさい...ごめんなさい...」


シャルの耳に届いたかはレンにはわからなかったが、彼女は目に大粒の涙を流して何度も何度も剣をレンに突き刺していた。


レンは涙を流しながら、


「許して...姉さん...」


そう呟く様な小さな声で言って、シャルに伸ばした手を下ろした。



ーーーーー


「犯人死亡でこの事件は幕を閉じたわけか...」


タカノはそう言って、書記官が書き上げてきた書類に目を通しながらそう言って執務室から見える月を見上げていた。


「しかし、タカ兄珍しく感情的になってたけど...大丈夫なの?」


タカノの執務室にある椅子に腰掛けて、お菓子を食べるシンはタカノを見ながらそう尋ねた。


「ああ、問題ない。

レンが恋人を奪われたときの自分と重なってな。


もしかすると、一歩間違ってたら俺もあんな風な殺人鬼になってた様な気がしてしまうんだ。


ただレンは、

殺しで使ってた道具を、ロウを殺してから捨てれていた様だし。

俺が一瞬んいた殺し屋ではない目とシャルが言ってた顔を思えば、本当は元の少年に戻れたのかもしれない...


だが、レンは人を殺しすぎた。

公になってる分で10件以上の暗殺をしてるらしい、今回も犠牲者は5人。


都合よくもとに戻れるわけはない。

俺だって時折、殺した相手のことを思い出してうなされるぐらいだしな...」



「そうなのか...で、シャルの件はどうなったの?」


タカノはそれを聞いて、

別の書類を手にとってこう言った。


「この国じゃ。

殺人は死刑か終身刑だが....

殺人であっても、親・子・夫・妻の殺しに関しての仇討ちの場合は刑の減刑が許されるらしくてな。


俺がこの書類に印鑑を押せば、シャルは都から追放だけで済む。


生まれてくる子には人殺しの子の烙印を押されるかもしれないが...

こればっかりは、義禁大尉でもどうしようもできない」


「そうなのか...ま、でも。シャル自身もこの悲しい出来事があった都にはあまり居たくないらしいぜ。


シュリムからそう聞いた。

彼女自身もレンを殺したことを後悔してみたいで...


最後の最後は殺人鬼の顔ではなく、ただの姉さんが大好きな少年の目をしてたらしいしな」


シンがそういうと、タカノは金印を手に取ってシャルの罪状に関わる書類に印を押した。

そして、シンが持っていた菓子の入った袋からカリントウを取り出して食べた。


ーーーーーー


「ミミ様、シュリムさん、お世話になりましたーーー

出産まで手伝っていただけるなんて...ありがとうございました」


都の最南端にある門の前で、シャルはそう言って大きくお辞儀をした。

見送りにはタカノとミミ、リン・メイ・マオが来ていた。


「タカノ様。ご迷惑をおかけしまた」


「ロウの墓へは行かなくて本当にいいんだな?

もう二度この街に来れないんだが...」


シャルはそれを聞いて、手に持っていた布に包まれた剣と背中に背負う赤ん坊をタカノに見せてこう言った。


「ロウはいつでもそばにいてくれます。この子のためにも私は強く生きていないと思うんですーー


ほんの少しだけですが、ロウを失って身を投げようとしたことを踏み止まらせたレンのためにも」


「わかった。なら問題なさそうだな」


タカノはそう言って少し驚いたとき後ろにいたミミがこう言った。


「気をつけてくださいね。

生まれてからまだあまり日が経ってないので大変だと思いますが....


子供はいいですわよーー


シャル。

ロウのためにもしっかりその子を育ててあげてくださいね」


「何から何まで....本当にありがとうございます。ミミ様」


シャルはそう言ってまた深く、お辞儀をした。

ミミはウィンクをしながら親指を立てた。


「頑張ってくださいね」


「はい、ミミ様」


シャルはそう言って顔を上げて笑みを浮かべた。

ミミにはだいぶお世話になった様で、同じ半獣人族として親しみを持ってくれていた様だった。


寂しそうな顔をするミミと同じようにリン・メイ・マオも同じく寂しそうな顔をしていた。


リン・メイ・マオの3人は、

シャルにあるものを手渡していた。

それは綺麗な模様で飾られた髪留めの様だった。


「シャルさん。これリン達からの贈りものですわ」


リンがそう説明をしてくれた。


「お母様の国では大切な友人が旅立つ時に、魔術を込めた髪留めを送るから....シャルさんに渡したくて」


メイはそう恥ずかしそうに説明した。


「3人で作りましたの」


マオはそう言って、シャルに笑みを見せた。


シャルはしゃがんで3人を抱き寄せた。

目には涙をこぼしていた。


「ありがとう。小さな大切なお友達」


「「「どういたしまして」」」


3人の娘は涙を流すシャルとは対象に笑顔を見せていた。


「「「バイバイ、シャルさん。赤ちゃんも」」」


抱きつくのをやめると、

3人の娘はすやすやとシャルの背中でおぶられて眠る赤ん坊にもその笑顔を向けていた。


「元気でな....ロウの分まで生きてくれ」


タカノはそういうと懐から一枚の紙を出してシャルに渡した。


「これは、ロウが義禁庁で仕事を全うした証だ。

これがあれば、故郷にある役所に行けば月々恩給はもらえる。役に立ててくれ....」


「はい.....ありがとうございます。

私は夫ロウを失い、仇討ちと言えど人を殺めてしまいました。


罪滅ぼしになるかは分かりませんが...

ロウの分もレンの分も強く生きていきます」


シャルはそう言って、

涙を拭いてゆっくりと門へと歩いて行った。


大きく手を振りながら、二度と戻ることが許されない色々な思い出があった都をシャルは後にして行ったーーーー


イズミ「貴方は残念ですが亡くなりました」


レン「やっぱり、そうですよね」


イズミ「貴方には二つの道があります。

一つは、今までの罪を償うために地獄へ行き何十年後に生まれ変わるか、


最後の一つは、

貴方が最後に大切だと思った人のそばに守護霊として現世に残ることです。


貴方は最後の最後に自らの罪を悔いましたので後者の選択を選ぶことが許されました」


レン「シャルにはロウ様がついてるから大丈夫。


ボクは十分幸せでした。だから、今まで殺してきた罪を償いたいです...


地獄へ行かせてください」



イズミ「え、本当に?」


レン「はい。

ボクは罪を償わないといけないと感じました。

だって、ボクはきっと多くの人から大切なモノを奪ったと思ったからです。


いつまでもかかっていい。

その罪が許されるまで、ボクはその罪を償わないとダメな気がしてならないので...」


イズミ「分かりました。意思は固い様ですね....

今から扉を開きますーーー

貴方の選択は、この天女イズミが承りました。


さぁ、おゆきなさいーーー」

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