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踊る美しき殺人鬼は笑う-4 姉さんが帰ってきた


あの武官の目はレンにとっては似たような雰囲気を感じられた。


同じく奪われた怒りから人を殺した目で

そして、壊れる前の何か大切なものがいた頃の自分自身にも似ているような気がしてた。

色々考えを巡らせていると彼が誰なのかも興味が湧いてきていたーーー


でも、

逃げようと思った瞬間、死の恐怖を思い出すーーー


今まで、

数えきれない程の人を殺してきたが...

自分がその立場になることは初めてだったからだ。


彼を殺せばきっと、姉さんに会える。

レンはそう強く感じたーー


でもその期待とは裏腹に身体が恐怖に震えていた。

今まで外したことがない攻撃をいとも簡単に受けられたからだ。

そして、あの彼から感じられた人を殺せる覚悟が剣から感じられていたからだ。


運が良かったのか、

一瞬の隙をついて身体が反射的に逃げることを選んでいたのだ....


色々と考えを巡らせて歩いているとだんだんと笑い声が胸から込み上がってきた。


大笑いしながら、

ロウは道端に座り込んで夜空に浮かぶ月を見上げた...


自分の笑い声がだんだん、

耳の中に入ってあの時聞いた悲鳴に変わっていたーーー


怖くなって耳を塞いで、下を向いて目を閉じた。


「怖いよ...寂しいよ...姉さん助けて」


その言葉が心に底からこみあがる物そのものだった。

化粧は崩れ、整えた髪も尻尾の毛並みもボロボロになっていた。


ーーーどうか...したの?大丈夫?...ーーー


遠いところからそんな声が聞こえて、レンはゆっくりと顔を上げるとそこには...


「姉さん!?」


思わず声を上げたーー

やっと会えた!そう思ったからだ。


姉さんは首を傾げていたが、目の前にいたのは紛れもなく自分の姉...


でも、レンは不思議に感じていた。

顔は似ていたが、耳は丸く茶色で尻尾はモフモフしてそうな尻尾だったからだ。

コ族とは違う特徴をしていたのだーーー


その姉さんに似た彼女は、

手を伸ばして優しく頭を撫でてくれた。


「ひどい顔...それに怪我もしてる....」


彼女はそう言って、レンの掌にある擦り傷を見て懐から布を出してその傷を覆った。


そして、彼女は

「いっぱい泣いたんだ?」


レンは頷いて、涙がまた流れ始めた。

彼女はそっと優しくレンを胸に抱き寄せて頭をポンポンと叩いてくれた。


レンはそっと目を閉じて、昔こうやって姉さんが泣いた自分を慰めてくれていたことを思い出した。


「泣きたい時は、泣いたらいいの。私も泣いちゃったから....大切な人を失ってね。でも、ずっとは泣いてはいけなのーーー」




ーーーーーー


タカノはシンを連れて、

都から南に早馬で3日はかかる距離にある南山省と呼ばれる地域に足を運んでいたーーー


もちろん、急ぎだったので...

シンにオオカミの姿に変幻してもらいその背中に乗って3日かかるところを1日でやってきていた。


そこには、

キツネっぽい耳と尻尾を持つコ族が多く住むと言われる葉江と呼ばれる港町があって、

タカノはこの街に何かに引き寄せられるように足を運んでいた。


疲れきった人の姿に戻ったシンを担ぎ上げた状態で、閉門前の葉江につくことができた。

初めてくる街だったが、念のために持ってきてた身分証明の代わりになる義禁庁の十手を見せると城衛の兵士に宿まで案内されたーーー


宿でシンをベッドに寝かせてタカノは持ってきたレンバスを食べながら、街で情報を集めることにしたーー


探す情報はレンが復讐に走った理由と彼の生い立ちについてだ。都で虱潰しに捜索を行えばこんな遠回りをするようなことはないだろうが...


タカノはどこか、

昔の自分を見ているような気がしてレンについて調べたくなっていた。


城衛の兵士から聞いた話で、

市街地の外れにある貧民街にコ族の集落があるらしくそこに足を運ぶことに決めた。

そのことを城衛の兵士たちにいうあまり良い顔をしなかったーー


この街の事情については詳しく現地の人からは聞いていないが、人間と亜人との差別意識が激しく横行していることだけは聞いていて知ってはいた...


コ族の集落は文字通りに貧民街で建物や道は整備された後はあるが、その後に手をかけてないようであった。


ボロボロの家が連なり、

身なりの悪い痩せ細ったコ族の青年が道に座り込んでいた。

その青年に鎧に身を包む城衛の兵士だろうか彼に話しかけていた。きっとこの地区の巡回任務中なのだろうと思えた。


タカノは耳を澄まして聞いていると

兵士たちはコ族の青年を罵っていて、唾を吐き捨ててその場を離れていた。


タカノはその城衛とすれ違うと、彼らは珍しそうな顔をしてタカノを見て何事もなかったかのように通り過ぎていった。


タカノはその青年に近づいて声をかけた。


「すまない。旅の者なんだが」


青年は嫌そうな顔をして、タカノにこう言った。


「見ない顔の貴族さんだ。この街になんのようだ?」


青年はそう言って、

手を出してきたのでタカノはこの世界の常識通りだろうか、懐から銀貨を一枚出して渡そうとしたが手を止めてこう言った。


「おっと、これはやるが...俺の質問に答えて欲しい。

レンと言う都に出た少年を知ってるか?」


男は目を丸くして、興味あるようなそぶりを見せてこう言った。


「お前、レンを知ってるのか?レンは生きてるのか?」


男はそう言って、タカノが持つ銀貨を取ろうと立ち上がって手をつかんできた。


「俺の質問はまだ終わってないーーー」


タカノがそう言うと男は、むすっとした顔をしてタカノの手を離してこう言った。


「レンは昔この街に住んでた。あの事件の後、この街から連れ去れたんだ」


男はそう言うとあの事件について語り始めたーーー


10年前の話らしく、

タカノもその事件については武官になる前にラハトからこんなことがあったよということで説明だけは聞いていた。


ここ数十年で稀に見る焔帝国軍の汚点と言われる事件の話だったーーー


それは葉江の亜人虐殺事件。

犠牲者は不明だがタカノが訪れた。この地区のコ族を中心とする亜人の住人が皆、焔帝国の正規軍である緑旗軍によって無差別に殺害された事件だ。


タカノは男からその惨事について聞いた。


謀反を起こそうとしていたコ族の青年が匿われているか、謀反者の拠点とされたらしくその捜索に臨時編成された緑旗軍が暴虐無尽に略奪と殺戮を行ったらしい。


昔から葉江では人間とそれ以外との軋轢と差別意識が顕著だったらしく、積もり積もった恐怖と怒りから互いに傷害事件や暴行事件が横行していた。


臨時編成された緑旗軍は、主に葉江周辺の人間から徴収された兵士が多くその恐怖と怒りをぶつけたのだろうと感じる。


街の男は謀反者や協力者とみなされ、無抵抗のまま槍で刺されたり。

若い女は兵士たちの慰め者にされて弄ばれた後殺されたらしい、子供は連れ去られて奴隷商に売られたり....

抵抗するものは有無を言わず、斬り捨てられたりしたらしい。


青年はその当時は10代になったばかりだったので、辛うじて殺されずに奴隷商に売り飛ばされたらしく。

目の前で、その悲惨な光景を見ていたらしい。


レンとは血の繋がりは無かったが街で住んでいた時には兄弟みたいに過ごしていたらしいーーー


レンは隠れてはいたが、緑旗軍によって目の前で母を殺されて、姉を弄ばれたのを見てそれを酷く悔しがっていたらしい。

男はその怒りの気持ちは分からなく無かったが...


「レンはそのあと、黒社に関わる貴族の家に売られていったよ。そこで暗殺術を身につけて...


いつか、母さんと姉さんを殺した奴らを殺してやる。

役人を殺してやるって言ってたよ...


昔はそんなことを言うような奴じゃなかったんだがな...

姉思い出、泣き虫でやさしい奴だったんだがなーーー


お前ら、役人が俺たちを壊したんだ....

話はした。金を渡してさっさと出てけ....

嫌な思いさせやがって」


男はそう言うと、タカノが渡した銀貨を奪い取るように取って暗くなった街に中に消えていった。


タカノは、ただただ立ち尽くして...

あの一瞬だけ見えた純真無垢な目をしていたレンのことを思った。


「本当だったら、あの表情が本来の姿だった...

焔帝国はどうやら、自らの過ちによってあの殺人鬼はー


でも、俺も一歩違えば。

レンのようになっていたような気がするーー」


タカノはイズミの仇だった男に引き金を引いた瞬間を思い出す。

怒りの感情と自ら大切なものを失った悲しみの心も思い出すーーー


タカノは、都でレンを見つけることを決意した。

見つけて何をするかは仕事だからだろうが、どこか過去の自分を救いたいような気もあったからだったーーー


シン「あれ、ここどこ!?葉江だよな」


タカノ「やっとお目覚めか....すまない、急に言い出して無理させて」


シン「それは別にいいんだけど...何か分かったの?」


タカノ「ああ、準備が出来次第で出るぞ...」


シン「なーんかわからないけど、タカ兄の表情見てると色々と思うところがあるんだね」


タカノ「ああ、流石に長い付き合いだからバレるか」


シン「で、どうするの?」


タカノ「行く。今すぐにでも」


シン「葉江の花街はバッチリ調べてるZE☆」


タカノ「お前....それは違うぞ」


シン「タカ兄がそんな険しい顔をする時って、『性欲の猛者』のせいじゃないの!?」


タカノ「都にだ。そこのところはミミだけって決めてるんだ」


シン「お熱いねぇー。了解。レンバス持ってきたからそれ食べたらまた変幻できると思うから」

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