終劇はゆっくりと-8 家族との時間
「今度からここが俺の場所か...じゃあ、ただいまなんだな」
タカノはそう言いながら、ラシュトスタンの王が座ることが許された、玉座に腰掛けて窓から見える夜を彩る明かりが灯る城下を見下ろしながらそう呟いた。
月明かりに照らされ、活気あるラシュトスタンドの城下町には暖かい明かりが照りながら、
王様サファイアと言われる青い澄み切ったオアシスに綺麗な夜空が映っていた。
ついさっきまで、
仲間と親しい家来を集めて王宮内で大宴会を開いていて一応、お開きということにしてタカノは抜け出していた。
陽都で過ごした日々は本当に色々な事があったのを思い起こさせていた。
陽都の夜景も壮大で美しかったが、それを感じたのも科挙に通った日以来にことで、
日常のなってからは 仕事に追われる日々でが世界一の大都会で繰り広げられて陽都の良さを少し忘れた気がしていた。
陽都では、右も左もわからないまま実績を買われていきなりの義禁大尉と役職について四苦八苦しながらその任を務めていた。
家族は増える、家来も増える、関わる人間もどんどん増えていった。
人生の中できっと1番濃い月日を過ごした気がするーーーー
タカノはそんな忙しい日々の思い出を思い出してふと
思い返して初めてこの世界に来た時のことを考えた.....
実はこの世界に転生してきて最初にたどり着いて場所がこのラシュトスタンだったことを思い出してみればどことなくだが、故郷のような場所に感じていた。
「景色を見て綺麗だと思ったのは久々だな。陽都も俺は好きだーーー
壮大な大都市とは違うこっちは静かでいいな....」
「タカノ様よろしいですか?」
そう部屋に入ってきたミミはお酒とフルーツが入ったバケットを手に持ってきていた。
陽都に来てから辛いことがあっても、彼女と娘達がいたから倒れれても何度でも起き上がってたのをミミの顔を見てそう感じた。
「アルス、エミリ、ショウタはアデルに酔い潰されて、一部はまだ盛り上がってましたわよ。
ヒナタとシュリムは子供達と一緒でもう寝ましたわ。
もう、リン、メイ、マオもそれぞれ一人部屋も慣れたみたいでしたわ。
3人がだんだん大人に近づいてるのを思うと嬉しい反面、
親の手を少しずつ離れていくのは少し寂しく感じますわ」
タカノはそれを聞いて部屋にある椅子に座って、ミミの持ってきたワインボトルを見てこう言った。
「まさか、ブドウの栽培とかしてたんだな....宴会で出せばよかったのに....」
「生産した方がぜひ始めは王様にと持ってきましたので出しませんでしたわ。
ブドウは新たな産業ですわ。サファイアや魔鉱石だけではいずれ枯渇します。新しい産業も考えませんと」
「そ、そうだなーーー俺は剣を振ること賭博場の開帳やら都の砂糖の専売ルートの独占みたいなことしかしてただけだからな」
それを聞いたミミはくすくす笑ってこう言った。
「タカノ様はそう言いながら....その武官以外の仕事でそれなりの収入を得てたのを先ほど知って驚きましたわ
でも、
裏社会の悪人みたいなお仕事はもうやめてくださいませね」
「バレたら仕方がないか...ま、でもそれをしてた理由は黒社との良好な関係構築のためには必要だったからな。
俺のやり方で俺は義禁大尉をしてた。
本当なら黒社との癒着は打首にも近かったが、
その分実績は上げておき、裏社会の奴らも自分の庭を荒らす奴らは嫌いだったみたいでそこは利害一致で一緒に魔王軍と戦ってくれたわけだーーーー
でももう、共通の敵もいないし、取り締まる側でもなくなったから、
砂糖のルートだけは維持してそれ以外は黒社に返してきた」
ミミはそれを聞いた、何か納得したような表情を見せてタカノの部屋の隅に置いてある茶菓子の入った木箱を見てこう言った。
「あぁ...だから、夕方に陽都から菓子を持ってきた商人が来たのもそれなのですね」
「陽都にはまだラシュトスタンの息のかかった間者はシュンテイ以外にもいるんだよ。
今後、焔帝国との交渉ごとで役だろうとは思ってさ...サファイアや魔鉱石よりも微妙だけど」
「すっかり、タカノ様も王様が板についてきましたわね」
ミミはそう言うとタカノの膝の上に座り胸に手を置いた。
タカノは耳を抱き寄せてため息をついた。
「魔王は倒した。義禁大尉の仕事はやめたのにまだまだ忙しいことが続きそうだな」
「でも、大丈夫ですわよ。タカノ様....今から、ミミと娘達もお手伝いできますわ。少しでも長く家族で過ごす時間を取ってくださいまし」
「ああ。そうだな」
タカノはそう言って、ラシュトスタンのワインを開けてその香を楽しみながらホッと息をついて、今後自分が統治する国を見ながらどこか安堵して忙しかった日々から解放された時をゆったりとすることにした。
その時間はきっと新しい人生の章が始まる前の幕間の一時のようにも感じられた。
ミミからの身体をすりすりと擦り寄せて猫みたいに甘えて猛烈なアプローチを感じながら、
多分....リン、メイ、マオの娘達がいたら嫉妬しそうなほどの甘え方に困惑しながら歯に噛んでいた。
今ここにいる城が我が家であることを自覚したタカノはふと自分自身の夢が叶った事に気がついた。
市民を守るためにテロリストが最後に投げ込んだ手榴弾に覆い被さって、それで魔王を倒すために異世界に転生して....
幸せになりたいと思って必死になって傷つきながら家族同然の仲間になったシン、アルス、エミリ、シュリム、シュンテイ、アデル、ショウタ、ヒナタの為に奮闘し続けた。
魔王を倒して勇者としての任が終わりーーー
その戦い続けた日が終わり幸せな時間がやってきたのだと感じた。
ありえないぐらい美人のヒロインとの間に生まれた可愛すぎる娘達。周りからは羨望に眼差しを向けられる英雄になって、自分の国を持つ事にもなった。
タカノはワインを飲み、久々に感じるゆっくりとした時間を満喫する事にしたーーー
そして、部屋の中にもう一人いる事に気がついて、その天女の彼女に声をかけた。
「これでいいんだろうイズミ?」
「ええ。タカノが幸せならそれでいいーーー私はそれが見たかった。邪魔だからもう帰るね...」
「ちょっと待ってくれないか?」
タカノはそう言ってイズミを呼び止めるとイズミは帰ろうとした足を止めて首を傾げてた。タカノはそんな彼女を見てこう一言言った。
「ありがとう。イズミ....俺は大切な何を手に入れれた。君が俺をこの世界に誘ってくれたから出会えた人々がいる....
辛いことがあった、でも乗り越えて学ぶことがあったーーー
だから、感謝してる...
あと、シンなんだが時折でいいから遊びに来て欲しいから、ここの来ることを許して欲しい」
「ええ。わかったわ。じゃあ...」
イズミはそう言ってとても嬉しそうな笑みをタカノに見せて部屋を後にして行った。
月明かりが照らす、書斎のテーブルにはタカノが日本語で書き記した日記が置かれていて、オアシスから吹く涼しい風がその日記を閉じていった。
「兼業勇者の日常」
その表紙にはそう書かれていたーーー
玉座に座った異世界からやってきた勇者....王様は、満足した表情を見せて部屋に入ってきた姫達も自分の座っている玉座に呼んで、彼女達を抱き上げて膝の上に座らせた。
実はタカノの人生は実はまだ続きますが、
兼業勇者としての日常は静かに終わりました。
穏やかな日々を過ごせると思ったら....
タカノ人生の平穏な日々が訪れることはなかなかないようで、彼はラシュトスタンの王様として1人の父親として多忙の中に身を置きます。
そして、
拡大しすぎた焔帝国の後継問題に端を発した内乱に巻き込まれ、今度は国を治める王として、世界を救う冒険に出る事になるのでした。
でも、それがまた別のお話。
ーーー兼業勇者の日常 終劇ーーー
タカノ「これにて、クランクアップです!みなさんお疲れ様でした」
ミミ「楽しかったですわね」
シン「ね!ね!これから、打ち上げ行かない?」
タカノ「いや...さっき、話の中でたらふく宴会してたじゃねーか...」
ミミ「それにしても、2019年12月の連載スタートから長かったですわね。タカノ様お疲れ様です」
タカノ「確かにな...作者の思いつきで始まったこの兼業勇者の日常も。この回で終わりって思うと少し寂しい...って作者が言ってたな。
最終回に相応しい終わり方ができたのだろうか?」
ミミ「いいのではなくて?魔王は倒してタカノ様は家族との時間を取れるようになった。
転生前に思ってた、
『その世界で富も名声も何もかも手に入れれる。もちろん、かわいい彼女でも、妻でもなんでも手に入れる』って第1章3分で言ってた未練は回収済みですものね」
シン「姉御がそういうとどこか自意識過剰みたいに感じるけど」
タカノ「いいや。割と思い通りになってるよ。割と欲しかったものは手に入った...とうよりはチャンスが来たから必死なって取り続けた。
その結果がこれだ。
夢が叶えば新しい夢はできるってのも体験で来た....
次は、どんな夢を考えるかーーー」
ミミ「おいおいでいいと思いますわよ。タカノ様は自身だけでなく多くの人の夢を手助けしてましたし」
タカノ「言われてみれば、そうだな...仲間や家来の夢を全部とは言えないけど叶えてる手伝いはしてる気がする....
じゃあ、次はそれをもっと手伝うことにでもするか。俺はこの国の王様だから....
この国に住むすべての人の夢を全部は無理かもしれないけど叶えるようにしてみよう....
きっと楽しそうだ」
ミミ「いいですわね。それは、では...タカノ様?1番、身近な私の夢を叶えてくださいませ」
タカノ「あーうん。シン。すまん、部屋を空けてくれてーーーってもう行ってしまったか......」
ーーーーー
シン「はいはーい。読者の皆様はこちらへこちらへ〜
イチャイチャするのを出すとR18になってしまうので....
今まで約4年という連載で長いお付き合いありがとうございました。
意外と作者も面白い作品が描けたと思っているようです。
ここまで読んでいただいた読者の皆様に作者に変わりお礼を申し上げます。
『兼業勇者の日常』はこれにて幕を下ろしますが、
引き続き、アーサー・リュウが手がける作品をお楽しみいただければ幸いです。
それでは...また会う日まで〜ごきげんよう」




