鳥猟好きと猟犬を語る
3日連続で4話、かな。久々に連続投稿です。見逃しがありそうな方、最終編集日のチェックをお願いしますね。
「鹿は間抜けだが、バカじゃない」
(鹿スレイヤーさんっっっ!)
困った。またジェネレーションの壁が。
「考えて逃げると」
「そうよ。普通に走られたら、視界に入る前から鹿は逃げる。もっと酷ければ、回り込まれる」
「回り込む?追っている人の方にですか?」
「例えば、ちょっとした尾根を乗り越える時に、左右の見える範囲が限定される。そのとき遠くの木の後ろなんかを越えて、鹿は折り返して同じ尾根を逆に超える。すると、人間からは消えたように見える」
「え、そんなの、鹿が斜め方向に逃げたら緩急つけて毎回やられませんか?相手の方が圧倒的に早いんですし。」
「勿論、人間も馬鹿じゃない。方法は5つある。
(1)待ち伏せ。まあタツだよな。
(2)沢山の勢子にして、面で押す。
(3)ばれないように静かに近づく。
(4)鹿が小細工できないくらい早く近づく。
(5)上にあるようなのが人間にできなければ、犬にやらせる。
あとはおまけで、ばれても鹿が逃げないくらい遠くから・・・つまりライフルで撃つ。」
と、ライフルを撃つジェスチャーの川島さん。なるほど。これはライフルが冗談ってことね。
「つまり・・・タツの代わりを犬は出来ないから、優先的に人間を回す。勢子が人数も質も足りないのは、猟犬でカバー、ですか。」「だいたい正解だが、鍛えられた猟犬は追うことに関しては人間よりずっと上だ。今日みたいにずっと足元にいても、静かに人間と追い続ける奴も、鼻が利いて忍び猟でシシでも撃たしてくれるならいいがよ。巻狩りで期待する奴についちゃあ、それは違うわけだ」
「タツの、人間に、撃たせてくれる犬ですか!」
「そうよ。そして、そういう犬を最初から狙って作れば、難しいことじゃない。違うか?」
「なるほど。イノシシ主眼の吠え止めは高度な技術と体力、犬の側の知力まで求められますし、
鳥猟も同様で、黙らせて仕事もさせて、人間との信頼関係も必要だから非常に高度ですよね。
でも、巻狩りで追うだけなら、何度か噛ませれば、猟欲頼みで簡単に仕込めると。」
「まあ、帰って来なかったり、人間に害がある馬鹿犬は困るがな。」
やや、ニヤリとしながらも、微妙に苦笑気味に川島さん。
「ほかに俺は好かんが噛み犬をあてるのもある。猟欲とかみつきで抜きんでてる犬種を使い捨てしてな。でも可哀想だろ?
それに、そういう奴は近所の人噛んだりして滅茶苦茶なことになるかもしれん。ハンター以外でも、人と仲良く出来るのがいい。
本気で猟をやって、認められたいなら犬だ。特に、今のチームは、良い犬が足りてない。ああ、犬使いは別にいるんだがな。
一人に頼りきりのチームっていうのはもろいもんさ。今日も見たろ?人も足らないが、犬だけでもいれば、幾分な」
「犬、興味はあって人づてには聞いてみたんですけど。僕はやるなら洋犬でやってみたいです」
「ほう、それまたなんで」
「自分が初心者で単独イノシシ猟のできる止め犬をいきなり仕込む自信も、条件も揃ってないですし、せっかくの犬だから鼻に特化した奴やってみたいなって。」
「ビーグルは丈夫で、人懐っこいから、岡本さんにもいいかもな」
「そうですね。猟犬の血統じゃないと猟欲あるかどうかから始まるときついので、出会いがあれば好き嫌いは言ってられなくなるかもしれませんけどね」
「おう、そういうもんだ。帰ってから色々聞いてまわるといい。ただ、一つだけ気をつけな。みんな色々言うけどよ、みんなの話をはいはい聞いて滅茶苦茶に混じったものをやるんじゃなくて、人に聞いた結果、自分がどうするか、ちゃんと決めるんだぞ。みんな、なんてのは言うだけ言っても、誰も責任なんじゃ取っちゃくれん。イノシシに腹を裂かれた自分の犬が目の前に居て死にかけてる時、とどめを刺すのは自分だ。猟犬を飼うってことは、それを向き合う覚悟を持つのが、最低限の条件だと俺は思う」
「・・・はい」
猟犬は、多くのチームで、肉分けの時など人間同様、少なくとも、何頭かで人間一人分以上の扱いを受ける。
猟師も、死ぬ。猟犬も死ぬ。獲物も死ぬ。その現実に目を背けないのが、山に入るための最低限の条件だと言われた気がした。
※本作品はフィクションです。
※実在の人物、団体、事件、地名、技術、科学的根拠を保証するものではありません。
※また、取材の過程で入手した情報が一部反映されていますが、
※別の地名・時代・人物の話を複合的に盛り込んでおり、実際の出来事や法律と一致するものではありません。
※法律・植生・科学的事実について裏取りが出来ていないものを含む「創作」「ファンタジー」であることをご理解ください。
※偶然書いてあることが何かに一致しても真実だったり嘘であっても著者は一切責任を負いません。
あと、猟師はせっかち。これはたぶんノンフィクションです。取材結果的に。




