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狩猟。獣と銃と山とヒト  作者: 水底 宇宙
狩猟姫と泣き虫執事
31/55

今日も射撃に行ってきたんですか?

現実時間では日本中のいろんな場所で猟期が始まっていますが、今回は猟期直前の射撃練習の話です。

お買い物から帰ってきたら、オカモトさんの車も丁度車庫に入るところ。


「こんにちは?」

「あら、明凪。買い物帰りかしら」

「うん。リーゼちゃんたちはなんだろ?射撃?いっぱい行くんだね?」

リーゼは一瞬右斜め上に視線をそらして、オカモトにやや振り向く。


「オカモト、説明していいよ」

「かしこまりました。お嬢様」

そういって、少し前に出てくる。


「実は、これから猟期が始まるんです。」

「あ。猟って時期が決まってるんですよね?でもオカモトさん一年中行ってませんか?」

「さすが、いい着眼点です。明凪さん。実は鳥獣を捕獲等するにもいろいろありまして、趣味で行う狩猟以外に、管理捕獲、有害鳥獣駆除等があり、それらの中には狩猟を行うことのできる"猟期"以外の時期に行えるものがあるのです」

「猟期が始まると、何が違うんですか?」


「そうですね。私の場合は、参加する組織が変わります。仕事で認定鳥獣捕獲等事業者という会社のようなもので行うのとは別に、趣味の狩猟は個人や有志で参加しているんです。」

「ほんと好きよね」

「やはり、仕事と違うメンバー、違う空気、違う場所ですしね」

そうねえ。と独り言のようにリーゼは気のない返事をしているけど、なんとなく頬が緩んでる。


「それで、私が出入りしている猟友会は11/15からが猟期なので、新人と一緒に射撃場に行ってきました。」

「なかなかの見物だったね」

「そうですね。所持許可や狩猟免許取得までは。事故を防止する"撃たない技術"や"人間に当てない技術"はしつこく言われますが当てる技術はほぼ教わりませんからね」

「いい先生ぶりだったわ」

「いえ、とんでもないです。お嬢様」


「でも一日くらいじゃ良くならないんじゃないですか?」

「実は、一つ、一日でも効果のあるポイントがあるんです」

「え?でも射撃だけでスポーツになるくらい難しいんですよね?」

「その通りです。ただ、"練習をしていない危険な外し方"というのがあるので、それだけは予防したいんです。」

「うん?どういうことですか?」

「とても簡単なことですが、"弾丸が発射される瞬間も、弾丸が発射されて獲物に向かい続ける間も、獲物は動き続けることを理解する"ということです。」

「そう。明凪は、それができないとどうなると思う?」

「ん?でも弾丸って速いんですよね?狙って打ったら当たるんじゃないの?」


「そうですね・・・仮に初速を400m/sとすると、40m先のシカに撃ったら、狙った場所に弾丸が届くのに0.1秒くらいかかるじゃないですか。シカが10m/sしか速度が無くても、0.1秒あれば1m先に居ます。仮に頭を狙ったとして、1mずれてたら、全くかすりもしません」

「あ、そっか、じゃあ前を撃たなきゃ当たらないですか?」

「その通りです。さらに、せっかく照準がシカの前を狙っていても、打つ瞬間に追いかけるのをやめてしまったら、結局同じことになるので、狙いながら動くか、最初からだいぶ前を狙って銃を止めて待つかしないといけません」

「聞いていると普通にできそうだけれど難しいんですか?」

「そう思いますよねぇ・・・」

オカモトが遠い目になる。


「オカモトは初めてスキート射撃の練習に行ったとき、25発中1発もあたらなかったわ」

オカモトが涙目になる。

「今日の二人は、それよりはだいぶマシだったじゃない」

オカモトが顔を背けて俯く。

「それに、あなたが教えて、さらに良くなったものね」

「オカモトさんは今どれくらいあたるんですか?」

固まるオカモト。

「は・・・8割・・・くらい・・・で・・・す・・・」

視線が定まっていない

「シングルでね」

オカモトは斬首されたみたいに首が落ちたように俯いてる。


「スキートというのは、クレーという陶器のお皿みたいなのが飛んでくるのを撃つのだけれど」

あ。オカモトさんの心が折れちゃったからリーゼちゃんが説明するんだね。

「だいたい、競技レベルというのかしら?8割当たれば一人前と言っていいんじゃないかしら」

「じゃあ、オカモトさんはなんで凹んでるんですか?」

「その8割は、2枚同時に出てくる皿を連続して撃つ場合なの。オカモトは1枚ずつで撃ってやっと20枚なのよ。」

「じゃあ、2枚だとどれくらいなんですか」

明凪が反射的に聞いた。

「今日は撃たなかったね。この前は15だったかしら」

「それなら結構当たってるよね、リーゼちゃん?」

「すっかり、プロハンターだということを忘れられてしまったね、オカモト?」

完全にしょげてるオカモト。かろうじて斬首状態から首を戻して、向きなおる。


「申し訳ございません。お嬢様」

「いいのよ、そんな可哀そうな腕前のあなたを支えるのが、技術だものね」

なぜか、悲しそうな目で微笑んで技術と言いながら自分を指さすリーゼと、感極まったようなオカモト。

お邪魔そうだと、会話から抜けて家に帰る明凪。



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三日後、いい笑顔のリーゼとむにゅみゅにゅしたオカモトがシカ肉を持ってきた。

「オカモトは一発も撃たなかったけど、オカモトが教えて新人が一頭仕留めたんだよ!」

胸を張るリーゼ。呆れる明凪。




狩猟と一言に行っても、さまざまな要素技術が必要とされ、特に射撃関連の技術が低いまま銃猟に行けば、全く当たらないまま帰ってくることになるならまだいい方、獲物の数m~数十m後ろを撃てば、追跡している猟犬に当たる可能性があり、下手な方向を撃てば、器物破損や人的被害に及ぶ可能性があります。

銃猟に出る前に最低限押さえておきたい知識を、書いてみました。

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