それはほんとうの、はじまり (第17話)負傷
<ザ。ザザザ。。。>
<17番より23番(相模)応答してください。取れますか。>
<ツッ・・・フーフウ。やらかしました。ハハ、ハァ。ハア>
相模の息が酷く荒れている。
<99番です。大切なところですが失礼します。熊C16抜けて北へ。無傷か、浅そうです。走っています。>
センサーカメラが捉えたツキノワグマの画像から、一応の危険は脱したように思える。
無論、これが親子熊であとからもう一頭という最悪の状況は一考すべきだけれど。
<すみません。23番(相模)ですが、滑って肘を痛めました。ちょっと犬を引いて帰るのは難しいです。誰かお願いできますか>
<17番すぐ行きます!出血・骨折等ないですか。>
<大丈夫です。聞いての通り落ち着いてるよ。エド君も無事さ。ついでにシカもね>
<あほが。いや馬鹿が。シカどころじゃないだろ。オレもそっちに行く>
<すみません、2番(川島)。お手煩いですが、お願いします。>
<おう。すぐ向かう。24番(村上)、弾抜いとけ。写真と背ロースだけ取ったらすぐ車戻れ>
<23番(相模)可能なら患部を撮れますか?ネット経由で医師の助言を受けましょう。オカモトが応急処置に協力できるかと思います>
<こちら23番(相模)。了解。体制を整えるのでしばらく待ってください。>
ベテラン組は概ね状況を把握したようだ。
一方、一難去った駆け出しにはぴんと来ていない。
「埋めなくていいんですか」
「開拓地の端に3分で埋めろ。わかるな?」
村上に答える川島の声にも幾分いら立ちが混じっているようだ。
「はい。え。それって?」
鳥獣保護管理法ではやむを得ない場合に限り生態系に影響を与えないような適切な方法で埋設することとされている。
具体的な根拠となる法令の参照は難しいが、野生鳥獣の掘り起こしに対策することを考えると、2メートル程度は掘るのが一つの目安となっている。
「畑は土柔らかいだろ。適当にかけて隠せ。私有地ならどうせ入れないしあとから片付けられる。」
「はい・・・」
「けが人が出てんだ!うだうだ言ってんじゃねえ!!」
「ひゃっ。は、はひ」
当然だが、物事には優先順位がある。
今回の場合、それはまず人命であり、埋設については人命に影響ないように並行して鋭意対応していく形だ。
上空をカラスやトビが徘徊していればそれこそものの数分で死臭に寄って来るように思われるが、
彼らが発見に使っているのは視覚である。まずは見た目をごまかしつつ、罠で地上の動物も寄れない状況ならば
当面数時間をごまかして後から捕獲個体のの処理ができるというのが川島の見解のようだ。
その場合、当然食肉としての活用は困難なので、ここで一度埋めるということは廃棄という決断をとることと同義だ。
そこからはもう、ぐだぐだだった。
体力が切れていた川島とオカモトは相模と合流するのに20分超。
お嬢様が用意してくれた医者へのライブ中継しながら応急処置(幸いにも軽傷そうだ)と写真や片付けに15分、そのあと車に戻るのに60分近くかかった。
車に戻ったら戻ったでマニュアルの軽トラである相模カーを村上が運転できないことで車のやりくりに窮する。
一旦オカモトの車を村上に頼んで麓の病院まで行った。
残念ながら村上のコンディションと運転は褒められたものではなかったが、自動運転とリーゼのサポートで余裕だった。
相模は軽く骨にひびは入っていたが、大事は無く、一応ギプスは被せるが問題ないとのこと。
こんな軽傷ならハンター保険もいらないねと苦笑していた。




