39. 話における後悔は大体主人公で決まる。
少し日が開きました。
今回は、少し展開が変わります。リチ君に迫りくる試練とは一体...!?
それではどうぞ!
「そこ!腰が引けていますよ!もっと背筋を伸ばして!剣道位、体育の授業で習わなかったのですか!?」
「俺は剣道苦手だったんでハードル走に逃げました!!因みに柔道はもっと苦手です!」
「大声で自慢しないで下さい!そこは寧ろ落ち込むところですよ!?」
...俺は今、セバスチャンさんのスパルタ剣術指導を受けている。これが終わったら、次はジュリアによる魔法、その後、グランとの対人戦闘演習らしい。こんな生活が始まって早1週間が経過した。何でこうなったかは、その時まで遡る。
~1週間前~
「セバスチャンさんの話を纏めると『聖剣を抜いたのはセバスチャンさんの後から来た転移者で、俺より格段に強い』ってことだな。」
今後の方針を決めるための作戦会議は、初代勇者の館内にある客間にて行われていた。俺達は円形の机の周りを囲むように座り、目の前にある熱々の紅茶と焼きたてのクッキーを食していた。クーラン少年が作ったというそのクッキーは、前にアリスが作ったデンジャラスなものとは比べ物にならない位美味しくて、俺とグランは泣きながらそれを頬張っていた。
「そうですね。一度収められた聖剣は、元勇者であっても抜くこと叶わない。でしたら、その聖剣の回収は、必然的にクリさんの役目になりますね。」
一人深刻な顔をして久し振りに口を開くジュリアに、俺はリスのように膨らませていた頬をどうにかして元に戻しつつ聞き返した。
「俺達はあくまで『聖剣の在処を探すこと』が目的なんだ。なんでそこに俺が関わってくるわけ?」
元々この聖剣探しはグランに依頼されたものだ。俺はただ、ブラックな父親に無理矢理同行しろと言われた、ある意味お荷物だ。そんな俺が何で此処で関与してくるのか、さっぱり分からん。
「そうだな...。フラン殿下にも『グラディール・サイフォンに、聖剣を取り返してもらう』と、言われてしまったからなぁ。かと言って、俺は初代勇者の血を引いているってだけで異世界からの転移者じゃない。俺が聖剣を手にできるとは思えないんだよ。そこで、残る選択肢がお前ってわけだ。」
そうか、グランが転移者じゃないから聖剣を抜くと手がヤバいことになるのは、分かった。そして、セバスチャンさんは元勇者でも聖剣を抜くことはできない。ジュリアは論外だし...。残った奴で聖剣を扱えるかも知れなくもないかも知れないのが俺ってわけか...。あーハイハイ、理解りかi...
「って、チョット待てー!だってさっきセバスチャンさん言ってたじゃん!?『聖剣を抜くには、相当強くなる必要がある』って!俺、まだコッチに来たばっかりで、魔物内最弱のスライムでさえもまともに倒せないんだぞ!?そんな俺が聖剣を取り返すだと!?無理無理絶対無理だって!」
俺は、両手を机に強く叩きつけて立ち上がると、全員に向かって猛反発の態度を示した。しかし、他の奴等の表情は、いずれも爽やかな笑顔そのもので、俺の背筋が無意識に凍り付いたのが分かった。
「安心なさい。此処に居るのは『聖剣使いの元勇者』と『戦闘狂の大剣使い』と『弓の名手のハーフエルフ』です。こんなに人材に恵まれているのです。何を根拠に無理だなどと戯言を言うのですか?」
「諦めて下さいクリさん。これがあなたの運命なのです。私の持てる力、全てをあなたに授けましょう。」
「ま、俺は戦えたらそれで良いから、別に問題ないぞ?一緒に強くなろうな、クリ?」
上から毒舌元勇者、無口だったハーフエルフ、爽やか戦闘狂の猛攻撃を受け、俺の拒否権は端から存在していなかったことを、この時痛感したのだった。
余談と言いますか、設定の話をココでさせて下さい。リチ君ですが、彼は~道と名の付く種目が苦手です(例:柔道、剣道、合気道等)。代わりと言っては何ですが、走る種目なら平均よりやや上位ほどの実力の持ち主です。なので、本編冒頭の「ハードル走に逃げました!」発言は、敢えて苦手なものを避けて得意なものを選んだ、ということになります。せこい人間ですね、はい。過去の自分を見ているようだ...(苦笑)。以上、長文の設定説明でした!




