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話の流れは大体主人公で決まる。  作者: 櫻井 千桜
2章 物語の序盤からの展開は大体場所で決まる。
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16/69

16. 話の関係は大体主人公で決まる。

今回は、リチ君が意識回復回です。それでは、どうぞ!

 

 可愛らしいがかなり悲痛な叫び声によって、俺の意識が若干浮上した。


 いやぁ、芸術的なお菓子って、予想を裏切らない味だったなぁ。ある程度覚悟があっても、いざ食べてみると気絶するものってあるんですね。この世界に来てそれを知るってどうよ。兄貴の作った、洗剤入りのカレーよか刺激的な味わいって...。



 俺の兄貴は、何をとち狂ったのか、洗剤の付いたままのおたまを、作りかけのカレーの中へとぶち込んで、ぐーるぐーると混ぜちまったことがある。俺はその時、「あ、兄貴に料理作らせたらダメだ」と思い、放置していたが、そのときのカレーが、茶色の中に微かな虹色をしていたのを、今でも鮮明に覚えている。



 あれはあれで殺傷能力ありまくりのカレーだったが、これはその時のカレーを遥かに圧倒するような、ある意味凄い代物だった。洗剤入りカレーの時でも、トイレに猛ダッシュした程度で済んでいた。だからだろう、気絶した俺が、一番このクッキーに驚いているんだよ。




 ちなみに、俺が口に入れたものは、一番色がクッキーらしかった(無難な物に逃げたと言えば、俺は間違いなく最低な男になりかねんからな、だから敢えてこの表記をする)黄色だった。ガリガリと、石を噛み砕くかの如き触感、砂を食べてしまった時のような、ざらざらとした舌触り。それに加えて、口いっぱいに強烈なまでに広がる洗濯用洗剤(自然豊かな木々の香り)とトイレの芳香剤(上品なラベンダーの香り)を連想させる匂い。俺の味覚がおかしくなければ、焼き餃子にワサビとイチゴオレを加え、梅シソと焼き肉のタレを追加し、生クリームをトッピングさせたような(自分で言ってもよく分からんが)、何とも得体の知れぬ、摩訶不思議なクッキーだった。


「大丈夫、クリ?」


目の前の可愛らしい少女が、一瞬にして畏怖の対象へと変わった。...どんな作り方したらこんなんができあがる訳?ある意味尊敬の域だよ。


「...何入れた?」


俺は恐る恐るアリスに聞く。先程のクッキーの後味が、いまだ俺の口内を苦しめ続けているんだ。下手したらまた意識が遠のきそうで気が抜けない。


「先生の教える通りに作った。間違いは........ない。」

「ねぇその間は一体何!?」


レシピ通りに作れば、絶対にこんな凶器紛いな代物ができる訳ないだろう!?ちょっとアリスさん、その先生の教えたレシピとやらを、このクリお兄様に見せなさい、今すぐに!!



「あ~、食べてしまったのですね、クリ。」


哀れみの表情を浮かべ、ギルが呟く。...ということは、やはりこの男は全てを知っていた上で、俺にこのクッキーを渡すよう仕向けたことになる。何という男だ。いくらこの世界で俺の父親となろうとも、俺は断じてギルという男を許さない...!!


「お~、何か美味そうなもん食ってんじゃねーかクリ。」

「そ、その声は!?」


ギルの後ろから「よぉ」と言いながらひょこっと顔を出したのは、いつぞや俺を此処まで連れてきてくれた、グランその人だった。相変わらずの爽やかフェイスに若干の苛立ちを感じたが、いい機会だ。あの時の借りを今此処で、キッチリと返させてもらうぜ!!



「....クリ、何だか笑顔が黒い。」


 アリスよ、君が怯えることは何もない。ただ、今からクリお兄ちゃんは少しだけ、このグランさんとお話しをしようとしているだけなんだからな。



「グラ~ン、はいっ、あ~ん!」

「え、何?」


男が男に「あ~ん」とかキモいだけだが、今だけは我慢して下さい。


 俺のいるベッドサイドに近づいてきたグランに向かって、俺は、一番匂いが強烈な(ラベンダーの香りが一番濃い、というと伝わるかもしれないが)、青いクッキーをグランに向けた。グランは戸惑いながらも俺の差し出すクッキーを、勢いよく口に入れた。俺はにやけながらそれを眺める。視界の端にいるギルは、あちゃーと言わんばかりにため息を吐き、額に手を当てていた。





「ん?不思議な味だな。それに触感も、心なしかおかs...」










 その言葉を最後に、グランは俺の視界から消えた(ベッドから落ち、倒れただけ)。

久し振りにグランさんが帰還してきましたが、早々にリチ君の罠に嵌り、意識のフェードアウトです。グランさん可哀想に。そして、クリ君が何故、借りを返す発言をしたのかにつきましては、第14話『話の痛み分け方法は大体主人公で決まる。』を見返していただけると分かるかと思います。


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