12. 話の再開方法は大体主人公で決まる。
リチ君の回想で一話分開いてしまったので、話を現在に戻します。
お父さんと呼ぶには大分若すぎるように感じる神官長のギースウェールさんと、この世界に来て初めてできた仲間の戦闘狂のグラン、そして、皆さんお忘れだろうか、今だオレンジジュースの少量入ったペットボトルを片手に持ち、両手が蛍光黄色をしている主人公、俺こと、リチ・ホノセ。この状況だけを文面でなぞるとかなりカオスなものだ。
「ですから、クリ。私のことは『お父さん』と呼んで下さいね?」
「いや、流石にそれは...ちょっと抵抗が...。」
俺が苦笑しながら答えると、悲しそうな表情を浮かべる神官長。何か今の俺、罪悪感がとてつもないのですが...。
「なら、『ギル』ってのはどうだ?ギースウェールを略してみた。」
「いや、だからお前のその略し方ちょっとおかしいから。」
「そうか?」「そうだよ。」と俺たちが漫才みたくテンポの良い会話を繰り広げている間、神官長は顎に手をあて、何か考え込んでいる様子を見せた。俺たちがそれに気付くと、何でもないような顔をして、にこりと微笑んだ。
「『ギル』ですか...。今までそのように呼ばれたことはなかったので、とても新鮮です。気に入りました。ありがとうございますグラン。これから、クリは私のことを『ギル』と呼ぶように。これは父親命令です!」
そう言った神官長もといギルは、花も微笑むような幸せ一杯の笑顔を俺たちに見せた。喜んでもらえて良かったんだろうが、何分、グランの略し方は、もう少し考えるべきだなということを再確認した俺だった。
「それにしても、リチのその恰好はかなり目立ちますね。今、着替えを持って来させましょう。」
「あ、ついでに手を洗う水と、何か食事をもらえるとさらに嬉しいです。」
「手を洗う水ですか?それは構いませんが、理由を聞いてもよろしいですか?」
ギルからの素朴な疑問に、俺は説明するより実物を見せた方が早いとばかりにペットボトルを左脇に挟み、両方の掌をギルの前に突き出した。相変わらず表面は粉っぽい感触で、いい加減この感触をどうにかしたいと思っていたんだよ。凄い気になってしょうがなくて、さっきから時々、手をハエの如くこすり合わせていたが、中々上手くいかない。この蛍光黄色は目の毒で、見るたびに目がチカチカする。何とかならないのかな...。キイロケイコークサなんてもん、触らなければ良かった。
強力な魔力と引き換えに一生その色が落ちることはないと言われているこの草を、俺はつい先ほど、触ってしまっていたのだ。見た目は蛍光黄色の猫じゃらし。触ったら粉が大量に降ってきて、気付いたらこの有様だ。全然笑えない状況である。
この両手をマジマジと見ていたギルも、「これは、キイロケイコ―クサですか...。」と言ったきり、何も言わない。せめてこの感触をどうにか払拭したいんですけど...?
「これは、水でどうにかできる代物ではありませんね。少しの間、おとなしくしていて下さい。」
ギルはそう言うと、俺の前にどっから取り出したか分からないが、長杖を手にした。そして俺に向かって、何か呪文らしきものを長ったらしく唱え始めた。俺はそれが聞き取れなかったが、俺の足元にオレンジ色の大きな魔法陣が展開され始めて、あぁ、これが魔法ってやつですかそうですかと、呑気に考えていた。下から風が起こり、俺のスーツや髪がたなびく。あ、心配しなくても、俺の相棒愛しのオレンジジュースはグランにきちんと託したぜ。
「いきます!クリ、どうか私を恨まないで下さいね?」
「へ?。それってどういうk」
俺の下からオレンジ色の光がヴェールのように俺を包み込む。俺は訳も分からず周りをキョロキョロしてしまった。そして、杖を俺に向け、苦し気な表情のギルと目が合うと、俺はその視線から目が離せなくなった。ギルは俺の視線を感じてか、苦し紛れに微笑んだ。そして、何か話してきた。俺はよく聞き取れなかったが、口の動きから『ごめんなさい』と言っているのが、辛うじて分かった。どういう意味なんだろう...。
しかし、その本当の意味を、俺は嫌でもすぐに思い知ることになる。
さあ、リチ君の身に一体何が起こるのでしょうか?気になる続きは次回までのお預けです。
お楽しみに!
活動報告を始めました。とは言っても、面白い事は書けないので、この話を投稿した際に報告として書こうかなと考えています。そして、新作の投稿も始めました。そちらの方もどうぞ、生温かい目で読んで下さると、自分嬉しくて涙出ます。これからもよろしくお願いします。




