第8話 覚色
深夜の街角。
紅紋の残響がまだ微かに漂い、街全体を淡い光が包む。
リムは小さく揺れ、青と金の光を混ぜながら、徐々に赤色を抑えている。
『……みなと……ぼく、わかる……あいつの力……』
「よし、じゃあ次の手を試すぞ」
レナも手帳を握り、分析したパターンを書き込みながら頷く。
黒い影の動きは、感情に触れるほど強くなる。
つまり、感情の色を操れば、逆に影の力を弱めることができる――
それが、リムの光の特性を使った唯一の対抗手段だった。
『……ぼく、混ざる……青と金で、赤を抑える……!』
リムが体を震わせ、光を爆発的に広げる。
街の空気が微かに揺れ、影の赤黒い光が小さく乱れる。
「やった……これなら、奴の動きを封じられる!」
レナが叫び、俺は拳を握る。
「よし、リム、行くぞ! 今度は三人で動くんだ!」
三人はタイミングを合わせ、街角の影を追う。
リムの光が青と金に変化し、影の赤を打ち消すように揺れる。
レナが解析した動きの癖を利用し、俺が影の隙を突く――初めての完全連携だ。
影は一瞬、動きを止め、揺らぐ赤黒い光が裂けるように広がった。
『……できた……!』
リムが小さく光を爆発させ、喜びを示す。
黒い影に初めて抵抗する手段を見つけた三人。
しかし、影の核心はまだ遠く、真の脅威はこれから現れる。
――覚色。
色で意志を覚え、力を覚える。
リムの光が示した新しい戦術の始まりだった。




