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第96話 露天風呂

オーガロードとの戦闘の反省から、地面に足場を生やす魔法を練習する。

足場は底辺が直角二等辺三角形の三角柱を、斜辺を下にして倒した形。

日本の急な坂道では摩擦係数の高いコンクリートが使われていた。

それに溝や凹凸を加えて更に摩擦を大きくする。

戦闘で使うなら瞬時に出せるスピードと、思い切り踏める強度が必要だ。


一樹「ふんっ!」


使う状況を考えれば『発動句』なしで反射的に発動できる方がいい。

『発動句』なしで魔法を使ってると暴発リスクが高まるとは聞いた。

だが、この魔法は別に暴発しても問題はないだろう。

想像しやすい魔法だから発動自体は簡単だ。

これで体重で負けて吹っ飛ばされる、なんて事態は少なくなるはず。


ただ、これはこっちの方が力が強いと言う前提での戦術だ。

同格以上の敵が相手では通用しないだろう。

カシたちとの訓練で、敵の攻撃を往なす練習も平行して進めよう。

そっちは一朝一夕で習得できるものではないから気長にね。


あとは魔力の分配バランスをどうするかだな。

打ち合う瞬間の足場の強度、筋力強化、攻撃力強化、防御力強化。

防御力は強化しないと棍棒が折れちゃうから必須だな。

攻撃力強化は武器破壊を狙うか弾くだけかによる。


バランスは実際に練習して体感的に習得することにしよう。

ボス部屋で大盾と槌装備の乙女の裸像型ゴーレムと打ち合って練習する。

あとで、みどりのでかい騎士型ゴーレムとも練習させてもらおう。


みどりと言えば、彼女の『領域』だった森の防備も固めないといけない。

忍者600人とゴブリン5000匹を新たに召喚して派遣した。

忍者は紺色タイツのジュリエッタとシャルロッテを各150人ずつ。

これは西側に配置し、主に無許可の伐採などへの警告を行う。

あとは雪風300人を全体的に配置して警戒をする。


地上はこちらで担当し、みどりにはダンジョンの警備に専念してもらう。

あと防衛で気になるのは『領域』のぶつかっているマスター達の動きか。

ただ、基本的にはあまり心配は要らないだろうとは思っている。

『根』での殴り合いは効率も悪いしリスクも大きいからだ。


ただ、レベル差があれば一方的に蹂躙できる。

膠着状態になりやすいのは相手のレベルが分からないからだ。

山脈南部全域が黒曜さんの『領域』だったとすると150万ヘクス位か?

それに対して俺はようやく46万ちょい、ようやく約3割を確保した程度だ。

残りの7割の勢力図はどうなっているのだろうか?


俺はこの山脈の中ではレベルは高い方だろうと思っていた。

3割を確保したわけだから、少なくとも上位3位以内ではある。

しかし、俺以上の『領域』を確保した新人がいる可能性もあるわけだ。

もしそうだとしたら、かなり攻撃的なダンジョンマスターだろう。

俺のダンジョンレベルを知られれば、一気に併呑される可能性もある。

なんとか周辺のダンジョンの状況を確認したいな。


せっかく冒険者ギルドの開拓村出張所があるのだし、使ってみるか?

他のダンジョンが冒険者対策で勢力を伸ばせない状況になれば優位に立てる。

だが、ダンジョンを入ってはいけない場所と認識させたい目標からは逸れる。


どの道、ダンジョンに潜りたがる冒険者はいるだろう。

それをうまいこと近隣ダンジョンに誘導して・・・。

待て待て、それは周辺の転生者を殺すと言う話になるのか?


自分の優位を確保するために大きなダンジョンの力は削ぎたい。

しかし、他のダンジョンに冒険者を誘導すれば小さいダンジョンから潰される。

空いた土地には周辺のダンジョンが『根』を伸ばし、残りの大型化が進む。

その傾向は俺が冒険者を誘導するしないに関わらず進んでいくのか。


俺が手を拱いている間に周辺ダンジョンは確実に力を付けていく。

もし、俺が負けることになれば、なるみや仲間達、みどりたちはどうなる?

スタートダッシュに成功しているなら、この優位を利用して併呑すべきなのか?

或いは、いっそのことさっさとシュバルツの傘下に入れてもらうか?


何が正解なのか分からない。

戦う前から逃げ出して守ってもらおうなんてのは情けないよな。

けど、攻撃されたわけでも無いのに暴力で奪うのはもっと下劣だ。

どうも思考が何かに毒されすぎて鬱々としているようだ。


こういうときは無理に考えようとするより気分転換が大事だな。

まずは目の前の問題から片付けていこう。


『聖騎士』一行は『えろえろダンジョン』付近で野営をしている。

約束どおり聞き込みや周囲の探索から始めるようだ。

俺がボス部屋に入るのは『聖騎士』がダンジョンに入った後で良い。

むしろ、先に入ろうとして出入りを目撃されると面倒だ。

雪風たちを監視につけているから、報告を待つとしよう。


一樹「なるみ、マリーたちはどうしてる?」

なるみ「マリーちゃんたちなら、露天大浴場を体験中だね」


自動的に画面が切り替わり、入浴中の3人の姿が映し出される。

口頭で言うだけでいいのに、毎度自動で画面が切り替わる。

なぜかこの設定は変えられないらしい。

みずきも似たような事を言っていたし、そういうものなのだろう。


マリーは庭木が気になるのか、植え直したばかりの庭木を1つ1つ見て回る。

アーニャは入浴しつつもお仕事モードなのか、備品などを見て回っているようだ。

リリーは湯船にどっかりと浸かり、大きなおっぱいを湯に浮かべている。

俺が期待した楽しみ方にはリリーが一番近いかな。

庭木の所はまだ苔も育ってなくて見栄えが洗練されていない感じがする。


というか、俺がこういう光景を見ることに慣れてきつつあるのも問題だな。

お風呂を覗きたかった訳じゃなくてマリーの・・・ん?


画面に小ぶりなおっぱいが大きく映し出される。

これはマリーのおっぱい?植木型ゴーレムのすぐ前に来たのか?

しばらくすると、今度は覗き込むようなマリーの顔が大映しになる。


防犯カメラとして仕込んだ植木風ゴーレムを見ているのだろう。

坪庭に多く使われるのは背が低く葉の小さい常緑樹だときいた。

ただ、既存の種を真似ても細かい所でぼろがでるかもしれない。

だから、これはそれっぽい樹をなるみにデザインしてもらったものだ。


一樹「なるみ、これってばれてるんじゃないか?」

なるみ「どうなんだろ?カモフラージュはしてるし、ダンジョンの気配にも紛れて分かりにくいはずだけどね。分かったならすごいなー」


いや、確かにすごいんだろうけど、ばれてるならこっちがやばいだろう。

さっきから植木を順番に見て回っていたし、単純に見てるだけかもだけど。

マリーの顔が遠ざかり、再び全身が映し出される。

隣の植木の観察に移ったらしく、画面にはマリーのお尻が映っている。


一樹「大丈夫なのか?心臓に悪いな」

なるみ「うーん、どうなんだろ?よっぽど高精度の魔道具でも無い限り分からないと思うんだけど。そだ!隣に夜の照明用の魔道具を置いたらどうかな?それなら違和感を覚えても魔道具のせいだと思ってくれると思うよ。防犯カメラの夜間の逆光も緩和できるしね」

一樹「なるほど・・・・」


山の上から覗かれない様に、脱衣所側には長めの庇が付いている。

夜間はその庇の下に照明が付く予定にはなっている。

けど、確かに反対側にも照明があったほうが明るくはなりそうだ。

っていうか、なんで俺はナチュラルにお風呂覗いてるんだっけ?

そうだ、マリーを整備中の植物園に誘おうと思ってたんだ。


一樹「『聖騎士』たちの侵入まではまだ時間がありそうだ。植物園を案内したいから、マリーが風呂から上がったら呼びに行く様ローズに言っといてくれ」

なるみ「おっけー。じゃあ、こっちはしばらくこのまま待機だね」

一樹「そうだな」


ただ待つのもなんだし、鍛錬か野良仕事でもしとくかな?

いや、このタイミングで泥や汗に塗れる訳にもいかないか。


なるみ「アーニャちゃんは仕事熱心だねー」

一樹「そうだな。依頼内容とちょっとずれてる気はするが」


アーニャは手桶に1つ1つお湯を溜めて水漏れの様子を確認しているようだ。

そういうチェックは鬼族の職人がもう十二分にやっていると思うぞ。

マリーは今度は四つん這いになって苔や下草の観察を始めたようだ。

その辺は湯船に浸かって少し離れた位置から眺めて楽しんで欲しいな。

というか、年頃の娘がお風呂とはいえ全裸でその格好はどうなんだ?

リリーは今度は打たせ湯に移ったようだ。

リリーは分かってるな。というか、3人で役割を分けているのか?


一樹「しばらく終わりそうにないな」

なるみ「くふふー、マリーちゃんとのデートはもうしばらくお預けだねー」

一樹「いや、別にデートとかじゃ・・・そこはどうでもいいんだが、遅くなると暗くなるし、『聖騎士』もいつ動き出すか分からないからな」

なるみ「確かに、デートの最中に侵入されると困っちゃうね」

一樹「そうだな」


確かに、マリーを案内している最中に『聖騎士』が来ると面倒か。

「急用が出来た」と言えばマリーはごねたり追及したりはしないだろう。

だが、呼び出して置いて一方的に中断とかはさすがに失礼だよな。

植物園の案内は『聖騎士』を追い返した後の方がいいか。


マリーたちのいる露天風呂は山の北側斜面に設置されている。

北側は遮る物がなにもなく、谷の眺望が見渡せるようになっている。

だが、高さ8mほどの石垣の上だから逆に覗かれる事はそうそうないだろう。

それでも縁に立たれるとさすがにおっぱいとか見えちゃうかもしれない。

転落防止をかねて、北側の端には幅40cmほどの花壇を設置した。

例の植木型ゴーレムを含めた背の低い常緑樹などが植えられている。


女湯の両サイドは当然ながら高い塀で目隠しされている。

雰囲気を壊さないよう、木製の板の表面に竹を連ねた壁だ。

その手前はちょっとした庭のようになっていて植木で雰囲気を出す。

また、男湯の端の塀との間には2mほどの間隔がある。

仮に男湯側の塀にに穴を開けても女湯は覗けないというわけだ。

一番外側の土塀と女湯の塀の間にも2mほどの間隔がある。


男湯と女湯を挟むように存在する3筋の間隔。

これは覗き防止であると同時に、ウィセルたちの出入り口でもある。

有事の際には石垣の中に待機している天使達がここから出撃する。


一樹「アーニャはさっきから何をやってるんだ?」

なるみ「メモを取ってるみたいだね」


画面が脱衣所の様子に切り替わる。

アーニャが全裸のまま手帳になにやら書き込んでいる。

俺に報告するために、気付いた点を書き留めているのか。

浴室では濡れるから筆記具は持ち込みにくいもんね。

それでさっきから浴室と脱衣所を行ったり来たりしていたのか


アーニャがそのまま脱衣所の中に視線を巡らせる。

突貫工事だったので内装はまだ荒削りだ。

男湯の方はまだ脱衣所の棚も庭の植木もない。

アーニャたちが来るので大急ぎで女湯だけ形を整えたのだ。


アーニャがまた浴室に戻ると、それを追って画面も切り替わった。

浴槽から溢れるお湯を川に見立てた橋を渡って散策をしていく。

大露天浴場エリアの土台は幅100m、奥行き30mほどだ。

浴室は男女それぞれ幅40m、奥行き25mほど確保できた。

その中に温度や雰囲気の異なる複数の浴槽と打たせ湯を配置した。


三者三様の露天風呂体験は、約1時間に渡って続いた。

ようやく終わったのを確認すると、俺はマリーたちを訪ねる。

離れの客室はほとんどが無事だったので、ここはその1つだ。


アーニャ「今大浴場に関する報告書をまとめていた所よ。口頭で報告したほうがいいかしら?」

一樹「そうだな、せっかくだからきかせてもらえるか?」

アーニャ「そうね、備品の類はどれも質がいいと思うわ。外観も落ち着いた感じで好印象ね。まだ工事してる部分も多いから音が気にはなるけど、そこも完成後は静かになるんでしょうね。脱衣所の壁紙はこれからなのかしら?」

一樹「ああ、その予定だ」

アーニャ「脱衣所での置き引き予防策はどうなってるの?」

一樹「開拓村の大衆浴場のようにコインロッカーを置こうと思ってる。あとは、適宜女性従業員が巡回だな」


加えて観葉植物を模した防犯カメラゴーレムも設置してある。

怪しい動きがあればサーバからなるみや俺に通報がくる手筈だ。


アーニャ「そう。後は、谷を見下ろせる所の転落防止が気になるところね」

一樹「花壇を置いたがまだ対策が必要かな?柵とか置いても良いんだが、見晴らしが悪くなるしな」

アーニャ「大人が落ちることは無いと思うけど、子供がよじ登ると危険だわ」

一樹「なるほど。では、下にネットでも設置すればいいかな?」

アーニャ「そうね、それでいいと思うわ」

一樹「まだ未完成な部分も多いんだ。あまり難しく考えずに気楽にやってくれ」


アーニャは散策中もちょっと表情が硬かったか。

仕事として有益な提案をしようと意気込んでいたのだろう。


アーニャ「それにしても変な気分ね。異国風の庭園を裸で周るなんて」

一樹「居心地悪かったか?」

アーニャ「いいえ、悪くはなかったわ。慣れたら癖になっちゃうかも」

一樹「ああ、気持ちいいと思うぞ」

リリー「俺の体格でもゆったり浸かれる湯船があるのはいいな。客の体格に合わせて浴槽内の椅子の高さを段階的にしてあるんだな」

一樹「造ってる鬼族が全体的に大柄だからな。だが、もちろん小柄な人間にも配慮はしてある」

リリー「打たせ湯も気持ちよかった。手前のは物足りなかったが、奥の奴はちょうどいい」

一樹「それも強さが段階的に変わっていて、客が選べるようにする工夫だな」


リリーは体格的にも鬼族に近いのかもしれない。

鬼族も肌は強いみたいだし、強めの打たせ湯もあるようだ。


マリー「植木は全体的にちょっと元気がなさそうなのが気になりますが、植え替えたばかりでしょうから仕方ないですね」

一樹「そうだな。体験評価を依頼するにはちょっと早すぎたかもしれない」

マリー「時間が経てばしっかり根付いて元気になるでしょうし、綺麗になるでしょうから楽しみです」

一樹「ああ、その頃にぜひまた来てくれ」

マリー「はい!」

アーニャ「このタイミングでやる仕事じゃなかったみたいね。無理にねじ込んで悪かったわ」

一樹「いや、こっちこそ迷惑かけたみたいで済まないな。今回は気にせずゆっくりしてってくれ」

アーニャ「そういうわけにもいかないわ。毒虫と毒草の確認はしっかりするから」

一樹「そこは鬼族のほうで一通りチェックはしている。今回の依頼のメインは飽くまで客目線での感想の報告だ。問題点の指摘は気付いたら、程度で構わない」

アーニャ「そう言われても・・・」


先日のオーガ騒動でアーニャたちの評価にけちがついてしまった。

アーニャとしてはなんとしてでも任務完遂の評価に拘りたいのだろう。


一樹「今回の仕事はここでくつろぐことだ。ここは寛ぎを提供する場所であって、来た時よりも元気になって帰ってもらわないと意味が無い。寛ぎの邪魔になる物があったら教えてくれ。リリーのようにここがよかったという意見も大歓迎だ。もし、設備や接客の不備以外で寛げなかったとしたら、それこそ任務失敗だよ?」

リリー「くくっ、妙な仕事もあったもんだ」

マリー「私は楽しめてますよ。魔界の植生の中を武器も持たずにこんな薄着で散策できるなんて不思議な感じです」


マリーはあんな目にあったのにトラウマになってないようでよかった。

強いな。或いは、すぐに仲間が駆けつけてくれたのがよかったのかな?


一樹「それはよかった。植物園も整備中なんだ。まだ未完成だけど、時間のある時に案内するよ」

マリー「ありがとうございます!」


マリーが目を輝かせている。

これは社交辞令じゃなくて本気で楽しみにしてるっぽいな。

だが、案内すると言っても植物について詳しくは無いんだよな。

アーニャには悪いが、ローズも一緒に案内してもらうか。


一樹「アーニャももう少し肩の力を抜いてくれ。基本的にはこの間のクッキーの依頼と同じような感じでかまわない」

アーニャ「そう、あんな感じね」

一樹「大浴場はまだ未完成だが、この離れは一応完成してるんだ。あとで感想を聞かせてくれ」

アーニャ「ええ、やってみるわ」


そう応えるアーニャの表情はまだ硬い。

まあ、肩の力を抜けと言われてすぐ抜けるもんでもないよな。

俺が出て行った後で3人で内湯を楽しみながら寛いでもらおう。


なるみ「かずきおにぃちゃん、『聖騎士』たちがダンジョンに入るみたいだよ」


なるみが俺の耳元に声だけ送ってくる。


一樹「そうか、すぐ行く」

アーニャ「どうしたの?」

一樹「ちょっと用事ができた。前回も似たようなのを見たと思うが、ここにも坪庭を眺めながら入れる半露天風呂が付いてる。そっちも楽しんでいってくれ」

アーニャ「ええ、そうするわ」

リリー「気をつけてな」

マリー「いってらっしゃい」

一樹「行ってきます」


マリーに「いってらっしゃい」と送り出されるのがなんかうれしい。

いや、それより「気をつけて」?リリーには何か感づかれたか?

ここは危険な『魔界』で、しかもダンジョンマスターには敵が多い。

俺の声音から敵の出現を察したとしても、相手を特定は出来ない筈。


一樹「なるみ、温泉宿周辺に怪しい気配はないか?」

なるみ「雪風さん達が警戒してるけど、特にそれっぽいのは見当たらないね。狼も最近は近づかなくなってきたよ」

一樹「そうか。もし、マリーたちに危険が及ぶようであればすぐに教えてくれ。その時は、悪いが最初のダンジョンは放棄する」

なるみ「わかった。ちょっと痛いけど仕方ないね」


俺は物陰からメインダンジョンのコアルームに瞬間移動する。

モニターには『ゴブリンダンジョン』地上1層の『聖騎士』一行。

野良ゴブリンたちは魔力を込めた威圧だけで蹴散らされている。

ちょっと強い敵が相手だとほんとに役に立たないな。

まあ、ゴブリンとは言え無駄に死なれても寝覚めが悪いか。


俺は『プライベート・ブラック』の衣装に着替えて山頂の拠点を出る。

屋上から西側に降り、人目に付かないように木々の間を走る。

この格好で出撃するとき用の秘密の通路も作ったほうがよさそうだな。


ダンジョンに付くと、石造りの壁に偽装された隠し通路に入る。

俺以外の者が入ってくれば正面の固定型単機能ゴーレムが攻撃する。

突き当たりの左側には鍵のかかった扉がある。

頑張って開ければ中には魔石と銅貨が少々置いてある。


一樹「なるみ、開けてくれ」


念のため背後を確認して声をかけると、右の壁が一部スライドする。

現れた小部屋に入り込むが、中には操作パネルの類は無い。

自動的に扉は閉まり、小部屋が降下していくのを感じる。


さて、『聖騎士』は約束どおり途中で退いてくれるだろうか?

退くなら良し、そうでないなら死んで貰わなければならない。

退いてくれよ?お前が心配する囚われの娘なんて居ないんだからさ。

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