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第67話 色街

集団検診は開拓村の学校兼診療所で3日に分けて行われた。

俺は患者の体に魔力を流して違和感の有る部分を探っていく。

軽度の打ち身や擦り傷なんかは治癒魔法の練習に使わせてもらう。


人間が持つ自己治癒能力を魔力で増幅するのが基本的な治癒魔法。

健康体には無い魔力の流れを探り、それを俺の魔力でなぞって増幅する。

うっかりすると「痛み」の方を増幅してしまうので注意が必要だ。

また、魔法の特質上、患者の体力を消耗することになる。

軽傷なら特に気にする必要はないが、重傷患者はやはり要注意だ。

その辺はまた次の機会に習う事にしよう。


最後に、俺の診察練習への協力に対しアウラエルが約束した『報酬』を払う。

王都で受けると1回で銀貨10枚は取られるというおっぱい引き締め魔法だ。

俺は補助する態で後ろから手を回しておっぱいをすくう様に支える。

そうして魔力を浸透させ、アウラエルのかける魔法を読み取るのだ。


最初の数人は読み取る事に集中する。

途中からは弱めにかけたアウラエルの魔法をなぞって増幅する。

そして3日目にはなんとか、自力での発動に成功した。

3日目といえば、キャシーまで俺の担当だったのでやけに緊張してしまった。

使い所があるのか分からないが、これだけ苦労したのだから忘れたくはない。


『経済特区』の百貨店ではテナントも徐々に増えてきた。

アーネスト商会などの王国の商会もいくつか店舗を構えている。

鬼族も店を出してくれて、日用品や保存食などを並べている。

店を出したい領民へは初期費用を低金利で貸し出す政策も始めた。

俺の知るデパートと比べると庶民的な雰囲気だが、徐々に賑わいつつある。


百貨店のテナントの家賃はとりあえず売り上げの5%で様子を見る。

将来的には固定額にするつもりだが、現状では金額を決める目安がない。

少なくとも家賃が赤字要因にならないなら、出店のハードルは下がるだろう。


俺も若い娘を中心に雇ってクッキー販売店を出すことにする。

クッキーの提供元は、なぜかお菓子研究を続けているシュバルツだ。

女子人気が知りたいらしいから、女の子が立ち寄りやすい店にしないとな。

若い娘の働き口を増やすという意味合いもある。


最初は男性の肉体労働者が目立つ街だった。

次に増えてきたのはその肉体労働者たちを客とする人間たちだ。

飲食店や古着屋、鍛冶屋、そして娼婦。


女たちが街頭で客を取ったり、半裸で踊っておひねりを集めたりしている。

そういう職業を嫌悪するつもりはないし、完全に排除しようとも思わない。

エロ本もエロサイトもない世界だし、同じ男として欲しくなるのもわかる。

だが、街頭でやられるとさすがに雰囲気が悪い。


そういった女たちの流入の背景には戦争の影響もあるらしい。

戦費確保のための重税を払い切れずに売られてしまった娘たち。

男手が居なくなって畑を維持できなくなり、村に居られなくなった女たち。

或いは稼ぎ頭を戦死で失った親から売られたり捨てられた娘たち。


俺は攻められて自衛しただけとはいえ、無関係とは言えない。

だが、彼女らが王国側の人間である以上は王国側が救済するのが筋だろう。

うちの領民から受け取った税金を王国の民のために使うわけにはいかない。


女に限ったことではないが、俺は王国からの移住者を募集した。

領民ならば当面の生活は保障するし、働き口も都合しよう。

農地はもっと拡張していく予定だし、ショービジネスとかもはじめたい。

読み書きはもちろん、その他の教育も提供していく予定だ。


それでもなお王国の民として生きたいなら強制するわけにもいかない。

俺が『魔族』な上に、彼女らの父や夫の仇って事もあるんだろうしね。

あと俺にできるのは、安全に働ける環境を整備することくらいだろう。


『経済特区』の地下の一角には、性的サービス用の色街エリアも作った。

戦争の影響は抜きにして考えても、こういったエリアは必要だろう。

性的サービスの店というのは、禁止してもそうそう無くなる物ではない。

むしろ手を変え品を変えて法の網をくぐり、闇に潜むようになる。

そうなれば従事者の労働環境は劣悪なものになってしまうだろう。


また、売春は提供者が女、客が男という組み合わせが多い。

となると、腕力に関しては基本的に客のほうが強い事が多いわけだ。

暴力を振るわれたり、代金を踏み倒されたりしても反撃はしにくい。

高い上納金を払ってでも、「怖いおにいさん」の後ろ盾が必要になる。

犯罪者の巣窟、犯罪組織の資金源となる可能性も高いわけだ。


ならばいっそ商売の1つ、職業の1つと認知して管理下においたほうがよい。

事業者はもちろん、売春婦やヌードダンサーもすべて登録制にする。

従事者には定期的な健康診断と労働環境のヒアリングを行うことにする。

売春によって生じた債権を法的に認め、労災や失業保険も適用対象にする。

これは地球でも国によっては実際に行われている政策を参考にしたものだ。


色街エリア以外での性的サービスの提供はもちろん禁止だ。

登録なしでの商売も禁止だし、未成年は立ち入り自体禁止にする。

人間族は15歳で成人と見做すらしいので、それに倣うことにしよう。


これだけで違法売春を根絶できるほど甘くはないかもしれない。

だが、これで彼女らが堂々と安全かつ確実に稼げる場が出来たことになる。

わざわざ警察の目におびえながら商売をするものは少なくなるだろう。

その分、「怖いおにいさん」の出番も少なくなるというわけだ。


なるみ「今度はなにを探してるの?」

一樹「警官かな。警吏?警邏?なんかそう言うのは無いのか?」

なるみ「んー、ちょっと無いかも。ガーディアンは基本的にダンジョンの防衛やダンジョンマスターの生活環境の整備用にデザインされてるからね」

一樹「なら剣士型ガーディアンで行くしか無いかな」

なるみ「うん、悪人や暴徒を叩き斬るならそれで対応できるよ」

一樹「いや、いきなり斬られても困るんだが」

なるみ「じゃあ、木剣に持ち替えとく?手足を狙えば骨折程度で済むよ」

一樹「出来ればもうちょい穏便に、秩序維持を主眼とした方向で頼む」

なるみ「んー、なら牧畜人とかどう?牛に羊に豚、鶏や鴨や七面鳥まで、メジャーな家畜や家禽の管理なら大抵出来るよ」

一樹「そりゃまたハイスペックだな」

なるみ「でしょー?ただヒトの群れの管理はやった事ないんだよね。どうなるかやってみないと分かんないかも」


いや、家畜として飼うわけじゃないんだけどな。


一樹「人間に対する観察能力とか、方法はなんでもいいから無傷か軽傷で制圧する能力に優れたのは居ないかな?」

なるみ「そう言う事なら忍者型がいいんじゃない?直接戦闘はあんまり得意じゃないから、暴徒鎮圧とかには別に剣士部隊を用意した方がいいと思うけどね」

一樹「なるほど。ではそれで行こう」

なるみ「デザインはどうする?また雪風さん並べるの?」

一樹「いや、雪風たちは影の存在だから別にしよう。ところで、嗅覚強化とかできたりする?」

なるみ「できるよ。ただ、嗅覚重視なら犬耳タイプがいいかな。他のデザインでもカスタムできるけど、コストが割高になっちゃうからね」

一樹「外見の違いだけじゃなかったのか。ちなみに猫耳の特徴は?」

なるみ「動体視力が高いのとジグザグ走行や空中での姿勢制御が得意な点かな。あと犬耳は平地で走るの速いよ」

一樹「なるほど、なら・・・・」


打ち合わせを終えた俺たちの前に、いつものように女の裸体が林立する。

犬耳の女が21人、猫耳の女が21人、顔はそれぞれ同じものが並んでいる。

同じ顔が並ぶ不気味さに、これは忍者の分身の術なのだと自分に言い聞かせる。


42体の分身、いや、2人の忍者と40体の分身はゆっくりと回転する。

胸元に虹色の光が走り、それぞれ11人には色とりどりのブラジャーが現れる。

それぞれ残り10体の分身には二プレスが貼られたのみだ。

続けてお尻を見せ付けるようにゆっくりと周り、腰周りに虹色の光が走る。

それぞれ11人にはブラと合わせたパンツ、残り10人はブルーのTバックだ。

最後にいつものように全身を虹色の光が包み、衣装を完成させた。


それぞれ先頭の1人、忍者本体は警官風の濃紺のジャケットとパンツルックだ。

ウエストポーチに潜ませた縄分銅は、平時は先端にゴムボールが付いている。

ゴムボールは状況次第で鉄塊や鉤爪、クナイなどに換装可能だ。

腰には警棒、首からは警笛をぶら下げている。


Tバック組の10人はボディペイントかと思える程にぴっちりした全身タイツ。

肘と膝にはプロテクター、顔はフルフェイスヘルメットで覆われている。

ただ、人間用と違って耳の所が尖っていて、外側は音が通るように格子状だ。

腰にはウエストポーチと警棒、左手には仕込み刀付の大きな篭手を着けている。


残りの10人はそれぞればらばらの庶民風の服装だ。

大き目の帽子とサングラスに加え、ばらばらのメイクで誰が誰だかわからない。


一樹「犬耳の方はジュリエッタ、猫耳の方はシャルロッテだ。制服の2人は交代で第一の砦の検問、私服組は交代で街の巡回。あと、えーとボディスーツ組は原則警察署に待機し、制服組、私服組の指示に従わない者や反抗する者が居た場合に出動、状況に応じて警告ないし制圧をするように」

ジュリエッタ・シャルロッテ「了解しました!」

一樹「状況ごとの対応方法について細かい所は順次指示する。配置に付け!」

ジュリエッタ・シャルロッテ「はっ!」


現状は門衛に加えて街の治安維持まで鬼族に頼っている状態だ。

門衛はそのまま続けてくれるらしいが、治安維持はそうもいかない。

将来的には住民から警邏隊を組織したり傭兵を雇ったりするつもりだ。


しかし、税収がまだ少なく不安定な現状では難しいだろう。

ガーディアンの基本対応は見敵必殺だから、対応能力に不安はあるけどね。

とりあえずは彼女らに頑張って貰いつつ、持続可能な今後の計画を考えていこう。

国防もそうだけど、治安維持も終わりの無い仕事だもんね。

例えば「売春は禁止」と通達すればそれで無くなるなら楽でいいのにな。


売春を根絶できない理由のひとつには客観的に証明しにくい点もあるのだろう。

まず、セックス自体が恋人や夫婦間で日常的に行われていることだ。

酔った勢いとかで行きずりの相手とやってしまうこともあるらしい。

そして、そういった関係で金品を贈りあうことも珍しくはないだろう。

となると、客を「恋人」、対価を「プレゼント」と言い張られたらどうなる?

逮捕したところで起訴や有罪判決まで持っていくのは難しいかもしれない。

警察や裁判所など、治安維持に必要なリソースが無意味に浪費されることになる。


ただ、相手がそこまでするようならこちらも従事者を保護する義理はないだろう。

金を取りっぱぐれようが、性病をもらおうが自己責任というわけだ。

売春関連で警戒すべきなのは、売春の強要など違法な管理売春って事になるかな。

それについてはしっかり警戒を続けていくことにしよう。

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