第43話 おっぱい魔法
俺は谷を埋め尽くす王国軍を見て思案する。
敵の戦意はほぼほぼ挫いたと見てよさそうではある。
だが、敵2000に対してこちらは300、砦を出て対峙するのはリスクが大きい。
武装解除、負傷兵の応急処置と搬送、戦死者の輸送、敵兵の撤退。
相手が大人しく従ってくれるなら問題はないだろう。
しかし、相手はついさっきまで殺し合いをしていた兵士たちだ。
これだけの作業の指示・監督を寡兵で大過なく進めるのは困難だろう。
オークを出すわけにもいかないし、張りぼてゴーレムで威圧するか?
なるみ「かずきおにぃちゃん、敵の親玉が逃げるよ!10時の方向!」
見れば数騎の騎士たちが後退しようとしている。
その中に一際豪華な鎧を身に着けた騎士の姿、奴か?
一樹「逃げるか!ヘーゼルホーヘン!!」
俺は敵の歩兵たちの頭上を飛び越えて奴に迫る。
岩を蹴り、樹上を駆けて馬群に併走する。
力がみなぎるのを感じる。これは怒りか?
護衛の騎士が馬上からクロスボウを放つ。
加速された思考の中、矢がひどくゆっくりと俺に迫る。
防ぐまでもない。
一樹「ストーンバレット!」
クロスボウの騎士の兜が、赤い水風船のように爆ぜる。
俺は豪華な鎧の男のやや前方に向けて跳躍する。
馬から引き剥がすように、前方から斜め上に向けて胸板を叩く。
男は後方に転がり、馬は一度よろめきつつも走り去った。
バルバスの時とは違う。
ここは俺の『領域』、俺のフィールドだ。
俺を追い越した騎士たちが急停止し、こちらを向いて剣を抜く。
3人か、伯爵様の護衛にしては少ないのは急な逃走だったからか?
まあ、こちらとしては少ないほうが助かる。
さて、背後の1人と前の3人、どちらを先に片付けるべきか?
3人の騎士はなにやら戸惑いがちに顔を見合わせる。
そのまま踵を返して走り去った。
どういうことだ?
まあ、大将でもなければ逃げる相手を無理に追うこともないが。
振り返ると、豪華な鎧の男は仰向けに転がったままだ。
よく見れば胸が完全につぶれている。
なるほど、護衛対象が死んだあとでは命をかける意味もないか。
一樹「なるみ、こいつが親玉で間違いないか?」
なるみ「たぶん。アウラエルさん、どう?」
アウラエル「はい、その男で間違いありません」
なるみとアウラエルの声だけが俺の耳元に届く。
アウラエルは今回も留守番だ。
そういえば、棍棒で人を殺したのはこれで2人目か。
いまひとつ実感が湧かない。
夢中だったせいか、それとも慣れてしまったのか。
砦の方向から蹄の音が近づいてくる。
遅ればせながら主人の護衛に駆けつけたか?
一樹「降伏しろ。お前たちの親玉は死んだぞ」
突きつけるのが棍棒ではいまいち様にならないか?
だが、俺が聖騎士を倒したのはこいつらも見ていたはず。
加えて、大きく凹んだ鎧の胸当てから威力は推し量れるだろう。
一樹「どうした?武器を捨てろ。お前たちもこうなりたいのか?」
追いついてきた騎士は4人。
4対1で、こちらの武器は棍棒。
この状態で降伏勧告は厳しいか?
戸惑いつつも、4人は武器を捨てる。
どうやらこれ以上は戦わずに済みそうだ。
そういえば、途中に頭のつぶれた騎士も転がっていたはず。
それもきいたのかも知れない。
一樹「砦の前に戻って指示に従え。兵たちにも武器を捨ててこちらの指示に従うよう伝えろ」
4人の騎士は無言のまま手綱を操り、砦の方向に去っていった。
右手が思い出したように震えだし、棍棒を取り落としそうになる。
今更のように胸骨を砕く感触を思い出し、吐き気に安堵する。
一樹「なるみ、砦の様子はどうだ?」
なるみ「大きな衝突は起きてないみたい。かずきおにぃちゃんの威圧がきいたね。今は鬼族のみんなが武器の回収に回ってるよ」
俺の威圧?無意識に魔力でプレッシャーをかけていたのか?
さっきの騎士たちが素直に従ったのもそのせいかもしれない。
一樹「分かった。俺も今からそっちに行く。街道に死体が2つあるから、ゴブリンたちで回収しといてくれ」
なるみ「りょーかい」
鬼族への依存度が高すぎるな。
こういう場面で出せる人員も用意しないといけない。
しかし、オークやビキニアーマーはちょっと出せないしな。
あ、フルプレートメイルにしとけばよかったのか?
でも、戦闘終了後も兜つけっぱなしってのも不自然だよな。
さて、どうしたものか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
敵兵士の武器防具は回収し、砦の中央通路脇のスロープに集積した。
通路入り口からスロープまでは、開拓村の村人たちで運んでもらう。
ダンジョン内に放置された装備品は吸収され、素材として保管される。
敵の馬車や荷車にはまず負傷兵を乗せていく。
重傷者には鬼族の護衛の下、卯月や皐月たちが応急処置を施した。
荷台がいっぱいになると、無傷な兵に曳かせて帰らせる。
荷車が足りず、開拓村の備品も提供してもらった。
指揮官たちを人質に残し、部下に谷の入り口から馬車を持ってこさせる。
武器の類はすべて没収し、代わりに戦死者を積み込んで戻らせる。
ピストン輸送で遺体を谷の入り口の陣地に運び終えると、日も落ちかけていた。
敵陣地から大きな炎が上がっているのが見える。
その場で火葬する事にしたのだろうか?まあ、仲間の遺体の扱いは任せよう。
砦周辺の遺体の回収が終わったところで、指揮官を含め全員を解放する。
提供した荷車の代金や賠償金も請求したいところだがやめておこう。
そういうのはあまりいい結果には繋がりそうにないしね。
それに人質を取ろうにも、この村には牢屋の類はない。
人質はともかくとして、牢屋ってやっぱり必要かな?
昨晩の負傷兵たちも、牢屋があれば死なせずに済んだのかも知れない。
今後の戦いで捕虜が出る可能性もあるし、犯罪者を捕まえることもあるだろう。
犯罪者を野放しにはできないし、全員死刑ってわけにもいかないしな。
建物はダンジョンを使えばなんとかなるだろう。
看守も、脱走防止だけならガーディアンでなんとかなる。
しかし、更生指導や職業訓練などはどうする?
人材の確保や育成も考えなければならない。
いや、それ以前に金か?
安定した現金収入を確保しなければ人を雇うことなどできない。
しかし、王国と戦争中の状況では安定した交易など望めないよな。
アウラエル「失礼します」
風呂場で思案を巡らしていると、アウラエルが入ってきた。
アウラエル「今日もいつもの魔法の練習をいたしましょう」
アウラエルがかけ湯をしながら声をかけてくる。
いつもの魔法というと、あのエロいやつか。
一樹「悪いが今はそんな気分じゃない」
アウラエル「戦の後は昂ぶる方が多いと聞きますが、主様はそうでもないのでしょうか」
そういえば、生命の危機に瀕すると性欲が強くなるって話もあったな。
戦場付近でその手の被害が多いのは必然という事か。
負けられない理由が増えてしまうな。
そういえば、バルバスの時の敗残兵も村を通った筈だ。
その時はこの村の女たちは大丈夫だったのだろうか?
被害があったからこそ王国軍への反発が強く、俺の支配を受け入れた?
アウラエル「では、今日は新しい魔法をお教えしましょう。こちらへおいでください」
勝ったというのに、どうにも思考が鬱々としている。
新魔法とやらの練習で少しは気が紛れるかもしれない。
やれる事が増えるのは今後のためにもよいだろう。
聖騎士との戦いは恐ろしかった。
結果としてはこちらがノーダメで勝ったが、接近戦では勝てる気がしない。
パワーもスピードもこちらが上らしいが、圧倒的な技術の差をどこまで埋められるのか。
俺は促されるままに浴槽を出てアウラエルの前に立つ。
アウラエルは俺の胸に背中をぴったりつけると、俺の両手をおっぱいに当てがった。
アウラエル「魔力を通しながら、優しく揉んでください」
そういえば彼女が教えてくれるのは主に生体操作魔法だ。
なんで戦闘に使える魔法を期待したんだろうな。
まあ、やれる事が増えるには違いないし、気晴らしにはなるだろう。
一樹「こうか?」
アウラエル「はい。揉む力に反発して内側から乳房を支えている筋が有るのがわかりますか?」
クーパー靭帯のことだろうか?
俺は浸透させた魔力でアウラエルのおっぱいの内部を探る。
一樹「わかる、と思う」
アウラエル「ん・・・今日はその筋を縮める魔法を練習します」
一樹「どんな効果がある?」
アウラエル「乳房の弛みを引き締めることができます」
一樹「それだけか?」
アウラエル「女には、、大事なことなんですよ?」
いや、それを男の俺に教えてどうしようというんだ?
アウラエル「それに、この魔法は全身の他の靭帯にも有効です」
一樹「なるほど・・・」
手足の靭帯を縮めれば、相手の動きを制限できるか。
戦闘にはやはり使えないが、殺さずに拘束するには使えるかもしれない。
アウラエル「ん・・・相手は筋を伸ばす運動を続ければ、数週間で元に戻ります。後遺症もほぼありません」
一樹「それはいいな」
アウラエル「はい。ただ、これは本来は体にはない働きです。今までの魔法よりぐっと難易度は上がりますよ?」
今までの魔法は体が本来持っている働きを強めたり、促したりするものだった。
体が本来持たない働きを魔法で作り出すとなると、確かに難易度は上がるのだろう。
だが、今後もっと高度な生体操作魔法を習得するには必要な技術とも思える。
一樹「望むところだ」
おっぱい揉みながら言っても様にならないがな。
アウラエル「ん・・・では、私が今からかける魔法をよく覚えてください。一度しかやりませんから、注意してよく感じ取ってくださいね」
一樹「分かった」
一度だけか、なかなか厳しいな。
前の魔法は数十回、いや、百回以上は観察して習得した。
アウラエル「では、右の乳房の上部に魔法をかけます。主様は下から支えておいてください」
一樹「わかった」
俺は揉む手を止めて、おっぱいをすくうように支えて神経を集中させる。
アウラエルが手を添えて、魔力をゆっくりと流し込む。
魔力で捕捉した筋が、ほんの少し縮んだのが分かる。
アウラエル「どうです?分かりました?」
一樹「魔力は感じ取れたが、分かったかといえば自信はない」
アウラエル「試しにやってみてください。左側をお願いします」
俺は左手で下から支えつつ、上に右手を添えて魔力を浸透させる。
発動句はなんにしよう?靭帯を縮めるんだよな?
一樹「シュリンク」
先ほどの魔法を再現しようとするが、魔力がすぐに散ってしまう。
アウラエル「本来は体内にない働きですから、確固たるイメージがないと魔力はすぐに拡散しますよ」
一樹「シュリンク」
2度目もやはり不発に終わる。
アウラエル「さすがに1回では無理ですね。今回は感じ取るところまでにしましょう。もう一度やってみせますので、しっかり感じ取ってください」
一樹「わかった」
下からおっぱいを支えながら、もう一度アウラエルの魔法を感じてみる。
アウラエル「では、なじませるために最後によく揉みほぐしてください」
一樹「わかった」
なんか、結局揉む事しかしてないな。
一樹「もっと回数をこなしたいな。連続してやってもらうのは難しいのか?」
アウラエル「ん・・・過度に引き締めると痛みや病気の原因になってしまいます。一度にやれるのは少しだけですね。間隔も1週間以上あける必要があります」
一樹「なるほど」
アウラエル「明日はカエデさんの乳房で練習して見ましょう」
一樹「そうだな、頼んでみよう。ん?これっておっぱいに拘る必要あるのか?」
クーパー靭帯に限った魔法ではないという話だったはず。
アウラエル「あっ、、他の部位でもできますが、手足の靭帯を縮められては困ってしまいます」
一樹「それもそうか」
アウラエル「山賊でも捕らえて練習してみますか?」
武装強盗は処刑でいいとは思うが、実験台にするのはどうなんだ?
ただ殺すよりは有益かもしれないが・・・。
一樹「いや、それはやめておこう」
アウラエル「ん・・・では、村の娘たちに協力してもらうのもいいですね」
一樹「この村はまだ半ば以上恐怖で支配しているような状態だからな。この状況では嫌とは言えないだろうし、反感も大きいだろう」
アウラエル「では、快く、協力、して、くれる状態なら、よいの、ですね?」
一樹「それができるならな。期待はできそうにないが」
アウラエル「あっ、、分かりました。主様、もう、十分、です」
一樹「ん、そうか?」
俺はアウラエルのおっぱいを揉む手を止めた。
アウラエル「この魔法の練習については考えておきましょう。ですが今は・・・」
アウラエルは振り返って俺の胸におっぱいを押し付ける。
そして片手を俺の下半身に這わせた。
アウラエル「別のところがやる気になっているですので、そちらを済ませましょうか」
一樹「ああ、そうだな」
アウラエル「ではいつものように洗って頂けますか?主様の手で、すみずみまで」
一樹「ああ、任せろ」
俺はアウラエルを抱いたまま自領産の石鹸を手にとって泡立てる。
防衛戦に勝利し、石鹸の生産も目処が立った。
冬越しの食料の確保もできているし、開拓も進んでいる。
とりあえず、一段落って事でいいんじゃないのか?
今はこの場を楽しむことだけ考えよう。




