第39話 再会
アーネストさん一行は総勢10人、馬車3台に食料を満載して到着した。
アーネスト商会の人間はアーネストさんを含めて3人、残りは護衛の冒険者だ。
冒険者たちは到着後の荷下ろしも仕事の内らしく、黙々と作業をこなしている。
一度しか話した事はないが、アーネストさんは感じのよい人だった。
疑いたくはない。だが、タイミング的にはスパイや工作員を警戒すべきだろう。
それとも、あやしいのは冒険者のほうだろうか?
冒険者は男3人と女4人、珍しく女のほうが多い。
調味料などの小物を丁寧に運んでいるメガネの女は見覚えがある気がする。
いや、この世界でこの村以外に人間族の知り合いはいない。
他人の空似だろう。
アーネスト「一樹様!お待たせいたしました。ルビーはまだ手配できていませんが、食料のほうはなんとか集められましたよ」
一樹「感謝します。しかし、大変なタイミングになってしまいまたね。これから王国軍と衝突することになりそうでして、しばらく帰れないかもしれませんよ?」
アーネスト「そうなんですか。それは困りましたね。ではしばらくご厄介になってもいいですか?念のため食料は多めに持ってきてますので、その点で負担はかけないとは思いますが」
街道の安全は商人にとっては死活問題だろう。
それに軍が動くとなれば、人も物も金も大量に動く。
商会の人間が把握していなかったはずはない。
一樹「もちろんです。ただ、小さな宿ですので、護衛のみなさんには空き家を使ってもらいましょうか。幸か不幸か、空き家はたくさんありますので」
アーネスト「ありがたいです。今回は2つのパーティーにお願いしているのですが、2軒でも大丈夫ですか?」
一樹「ええ、問題ありません。風呂は男性陣は砦の兵士用のものを使ってください。女性陣には北側にある私の家のものをお貸ししましょう。砦の方はやはり男性メインの設備になりますので、女性用の浴室はちょっと窮屈なんですよ」
アーネスト「風呂までお貸しいただけるとはありがたい。みな喜びますよ」
砦の女性用の浴室が男性用より狭いのは事実だが、それでも10人程度は入れる。
だが、工作員が紛れ込んでいた場合の対処となるとやはり難しい。
砦には弓使いなどの鬼族の女性戦士もいるが、数はあまり多くない。
単独または少人数で裸でいるところを奇襲されるのは避けたいものだ。
何かあったときに踏み込みづらいという問題もある。
北側の拠点の風呂なら、使うのは基本的に俺とガーディアンだけだ。
それに、なにかあっても地下には女剣士型ガーディアンが30人控えている。
また、場所を分けたのは可能な限り彼らを分断するためでもある。
アーネスト「ところで、ご注文のハムル油はどこに置いておきましょう?」
一樹「では、北側の私の家にお願いします。前に買取商品を見て頂いたところです」
俺が瞬間移動でメインダンジョンに運ぶからどこでもいいんだけどな。
わざわざこちらの手の内を見せる必要もないだろう。
アーネスト「承知しました。ところで、この量の油をどうなさるので?売っておいて言うのもなんですが、あまり摂り過ぎると体に悪いとも聞きますよ」
一樹「いろいろです。料理もいろいろ試してみたいですが、あとは石鹸とかですかね」
アーネスト「ほう、石鹸ですか。いいですな!この時期は石鹸はよく売れます。お売りいただけるならいい値をつけますよ?」
石鹸にも時期があるのか?
汗をかく夏場ではなく冬場に売れるということは感染症対策?
一樹「まずは領民に行き渡らせたいと思っていますが、将来的にはぜひお願いしたいですね」
アーネスト「将来的といわずすぐにでもお願いしたいですね、今が売りど・・・」
男「アーネストさん!」
荷下ろしをしていた男が言葉を遮る。
剣を持っているところからして護衛の冒険者か?
男「これはどこに置いておきましょう?」
アーネスト「ああ、それはほかのと一緒でいい。奥のほうに積んでおいてくれ」
男「わかりました」
アーネスト「失礼しました」
一樹「いえ。石鹸は風呂場においてありますので、品質はぜひご確認ください」
アーネスト「わかりました。楽しみにしておきます」
商談の最中に言葉を遮るとは、商人に雇われている自覚があるのかね?
さて、砦の要であるダンジョンコアが狙われる可能性もある。
コアルームの防備も強化しておく必要があるだろう。
まずはむき出しの土の壁を石造りの壁に変えていく。
防備としてはでこぼこの床や罠があったほうが効果的かもしれない。
しかし、ここは場所的に基地っぽい感じに仕上げたほうがいいだろう。
中央にまっすぐ通路の通った左右対称の作りにしておく。
遠距離攻撃から剣士が身を隠せるように、両脇から胸の高さの壁が伸びている。
両脇の壁からは2mほどの高さから壁付の廊下が張り出している。
これはアーチャーや魔女用で、コアルーム脇の階段から上がれるようになっている。
剣士たちの援護をするために、魔女型ガーディアンも召喚しよう。
今回は弥生のコピーを24体、名前は弥生001から連番だ。
服はワンピースの代わりにスリングショット(?)にしてみた。
両肩から股間に向けて、V字型の帯が伸びている形だ。
肩からはお尻がぎりぎり見え隠れするくらいのマントを羽織っている。
歩く姿を後ろから見ると、お尻がちらちら見える感じがなかなかエロい。
頭には大きなつば広の三角帽子、顔には仮面舞踏会のようなマスクを付ける。
顔だけ隠してほとんど裸に近い格好はかなり変態的だ。
なるみもさすがにこのオーダーにはちょっと引いていたようにも見える。
ビキニアーマーはOKでスリングショットがNGって、基準はなんだろうな?
まあ、自分でもちょっとやりすぎた感じがするのは否定しないけどね。
ついでなのでメインダンジョンと初期ダンジョンにもこの魔女を配置する。
まずはメインダンジョンと開拓村の北の拠点に各10体。
最初のダンジョンの3層と4層のボス部屋に各2体だ。
余ったゴブリンメイジは2層のオーク部屋に回すことにした。
これでオーク兵の生存率もまた上がることだろう。
召喚の際、万華鏡のように裸体が林立する様は何度見ても壮観だ。
同じ顔が並ぶ光景はやはり異様ではあるが、そろそろ慣れてきた。
今回は下着の代わりにニプレスと前貼りだけというのがちょっと新鮮。
砦の中央通路には、剣士型ゴーレムを2体追加しておく。
姿は剣と盾をもった高さ3mの乙女の裸像だ。
これはオークの待機場所に続くスロープの入り口に立てておく。
敵が通路まで侵入してきた場合、オーク50体とともに迎撃に当たる。
オークの体高が190cm、乙女像の高さが3m。
1m以上の差があるから、オークの頭越しに敵を攻撃できるだろう。
敵の上部からは油壺や矢も降ってくるし、けっこう守りは硬いんじゃないかな?
開拓村の住人に頼んで乙女像の前にポールを立て、リボンを渡してもらう。
これなら平時は往来を見守る守護像か展示品ってことで通るだろう。
念のためリボンの下に「立ち入り禁止」の立て札も立てておく。
仕上げに『領域』を谷の入り口あたりまで拡張しておく。
この辺りのダンジョンは人間族が滅ぼしたらしいから競合の心配はない。
これで今回の戦場はほぼ全域が俺の『領域』に収まったはずだ。
バルバスを追撃したときのような失態は繰り返さずに済むだろう。
こんなもんで準備は十分だろうか?
2000人もの敵が相手ではどれだけ準備しても足りないかもしれないが・・・。
加えて気になるのがアーネスト商会の10人だ。
いや、魔族対人間族という構図で見るなら村の住人が裏切ることも警戒すべきか。
鬼族は・・・・たぶん大丈夫だと思うけどな。
それにあのメガネの女の子、やっぱり気になる。
アウラエル「どうかなさいました?」
一樹「村の防備のことを考えていた。それと、、、いや、気のせいだとは思うんだが」
なるみ「なに?」
一樹「商隊にいたメガネの女の子、どっかで会ったような気がしてな」
なるみ「ああ、赤リボンのぱんつの時の子だね」
一樹「なんだそりゃ?」
アウラエル「何があったのですか?」
なるみ「んとね、見て」
画面に金髪の少女の入浴姿が映し出される。
背景はこの拠点の浴室か?
一樹「こら、なに映してるんだ。消しなさい」
なるみ「いいから見ててよ」
画面が2分割され、反対側にでてきたのはやはり金髪の少女。
裸身で水浴びしているのは最初のダンジョンの近くの川か。
なるみ「もう!かずきおにぃちゃん、ちゃんと見てってば。同じ人でしょ?」
一樹「そうみたいだな。けど、わざわざ裸を見せなくてもさ、顔でいいだろ、顔で!」
なるみ「顔だけでもある程度は分かるけど、人物の同定をするなら照合データが多いほうが精度あがるでしょ?それに全身と背景もあったほうが状況が分かりやすいじゃん!」
そりゃそうだろうけどさ。
服はどうとでも変わるし、変装する者はまず顔からだろうしね。
アウラエル「なるみちゃんの言うとおりですね。それで、これはどういう状況ですか?」
なるみ「なるみたちのダンジョンにこの人たちが近づいてきたから、かずきおにぃちゃんが追い払ったの。そのときにこの人の赤いリボンのぱんつを持ち帰ったんだよ」
アウラエル「なるほど」
なるみ「かずきおにぃちゃんが初めて自分の手で持ち帰った戦利品なの」
アウラエル「それが赤いリボンのパンツだったのですか」
川原で撃退した3人組か。
あれが俺の初めての戦利品?
そういえば最初の戦闘では戦利品回収はやってないな。
一樹「待て、なるみ!妙な切り取り方をするな!俺が奪ったのは剣だ!武器だよ!パンツは引っかかってただけだからな!」
アウラエル「主様、落ち着いてください。ダンジョンマスターと冒険者という関係性ならば殺し合い奪い合うのが常です。何を奪ったところで責める者などおりません」
一樹「いや、そうなんだけど、じゃなくて。別に俺はこいつのパンツが欲しかったわけじゃないからな?」
なるみ「うん、なんとなく分かった。欲しかったのはこっちだったんだね」
画面が栗毛の少女の入浴姿に切り替わる。
メガネは外しているが、確かに商隊にいたあの女の子だ。
金髪の少女のような華やかさはないが、どこかほっとするような容姿。
続けて画面が2分割され、隣にかつての水浴びの映像が現れる。
水浴びのほうはメガネをかけたままだが、確かに同一人物だ。
綺麗だ。見覚えがあると思ったのは気のせいではなかったか。
アウラエル「なるほど。主様、ご入用とあらば適当に理由を付けて買い取ってきましょうか?」
一樹「ん?あ、いや・・・」
しまった!俺としたことが、盗撮映像にまじまじと見入ってしまうだなんて!
しかも人前で、それも女の前で・・・。
アウラエル「冗談ですよ。最近ちょっとふさいでらっしゃるようでしたが、如何です?」
一樹「そうか?そうかもな。気を使わせてしまったようだな」
アウラエル「いえ。それはそうと、あの娘が気に入ったのであれば、妾にでも迎えてみては如何ですか?」
一樹「いや、別に好きとかじゃなくてな。そもそも、まだ話した事もないからどんな人かも分からないし、単純に外見的にかわいいなってだけだから」
アウラエル「惚れさせてしまえば、内面はある程度調整がきくものですよ?」
あれ?なんか怖いこと言ってる?
アウラエル「もっとも、今回は例の魔法はやめておいたほうよいでしょうね」
一樹「ああ、そうだな」
この状況で使うのは道義的に問題があるよな。
アウラエル「主様は視線からの魔力の注ぎ方にまだぎこちなさがありますので、感付かれる可能性が高いです。ましてや魔道士が相手ではかなり厳しいですね」
技術的な問題でしたか。
一樹「いや、そもそもあの子に手を出す気はないから」
アウラエル「分かりました。ただ、彼女の歳の頃から考えて、1年もすればだれかと結婚するかもしれません。主様のダンジョンならともかく、他のダンジョンにもぐれば死ぬことも陵辱されることもありえます。どうか、後悔なさらぬように」
一樹「ああ、そう・・だな」
アウラエル「出すぎたことを申しました。どうかお忘れください」
結婚するというなら、少し悔しい気もするが、まあ問題はない。
だが、彼女が魔物や野盗の類に陵辱されるとしたら・・・・?
何か事情があって止む無く危険な冒険者をやっているのだろうか?
それとも何か目的があって敢えてこの職業を選んだのか?
アウラエル「今日のところはこれで失礼しますね。おやすみなさいませ」
一樹「ああ、おやすみ」
なるみ「おやすみー」
なるみとアウラエルが退出する。
画面にはリピート再生されている彼女の裸身。
いけないと思いつつも視線が吸い寄せられてしまう。
駄目だ、今の俺は最高に気持ち悪いな。
それでなくともこんなことをしている場合ではない。
とりあえず今日はもう休もう。
彼女の攻略法・・、いや対処は戦いの後にでも考えるとしよう。




