第16話 食料集め
食料集めに先立ってまずは倉庫を作らなければならない。
しかし、ダンジョン内では防衛との兼ね合いが難しい。
ダンジョンの北側、川の上流に小屋を作ることにした。
冒険者は南側からやってくることが多いからだ。
そんなわけで木こり型と大工型のガーディアンを召還する。
生産職もガーディアンと呼ぶことに少し違和感はあるが気にしない。
冒険者と会ったときに開拓者といえるよう、西側の人間族風にする。
身長190cmほどのずんぐりした熊のようなおっさんだ。
それぞれミカエルとガブリエルと名づけた。
今回作ってもらうのは簡単な小屋と保存用の木箱だ。
これなら2人でもなんとかなるだろう。
切ったばかりの生木は建材としてはよろしくないと聞く。
しかし、それも今回は目を瞑るしかない。
小屋が立て終わったら木材の備蓄も考えよう。
魔力が溜まるのを待って今度は採集人を2人召還した。
やはり西側の人間族風の容姿でパンジーとデイジーと名づけた。
服は普通に山仕事ができそうな長袖と長ズボンである。
保存のききそうなナッツとイモ類を中心に集めてもらう。
天日干しで保存食にできそうなキノコや果実も集める。
偵察用のカラスも5羽増員した。
冒険者と採集人の鉢合わせを避けるためだ。
森のあちこちに緊急用の隠れ家も用意する。
それでも見つかりそうなときは俺が出ていって追い散らすしかないだろう。
ミカエルとガブリエルは小屋もあるし音も出すから逃げようがない。
冒険者に見つかったときは、開拓者としての演技で切り抜けてもらう。
小屋を作り終わった二人には、10m四方ほどの伐採と開墾をお願いする。
鬼族への食糧支援には間に合わないが、畑作りも試験的にやっておきたい。
採集を始めてからまだ数日だが、すでに木箱2つ分のナッツが集まった。
乾燥がまだ終わっていないが、キノコもけっこうな量が集まっている。
未開の原生林だからこそなのだろうが、予想以上の収穫だ。
それでも国レベルでの食糧援助としては焼け石に水だろう。
ただの友好アピールにしかならないだろうか?
一樹「なるみ、カエデの様子はどうだ?」
なるみ「んーとね」
水音とともに画面いっぱいに小ぶりなおっぱいが映し出される。
なるみ「シャワー中だね」
一樹「なにを見せるんだ、お前は」
なるみ「ちょっとズームしすぎたかな。ちょっとカメラ引くね」
一樹「やらんでいい」
なるみ「あ、でも見て。傷はもうだいぶいいみたいだよ」
おそるおそる画面に視線を戻す。
未だ画面上部で存在を主張する乳房をみないようにわき腹を確認する。
言われないと分からないくらい、傷跡は目立たなくなっている。
といっても、最初の状態を見ていないので比較のしようがないが・・・。
一樹「そろそろ帰らせても大丈夫かな?」
なるみ「うん、そうだね」
秋風と春風が洗濯・補修したカエデの服と刀を手に3層の部屋に向かう。
刀も忍者娘たちが手入れをしたので、水没したにしては状態はいいはずだ。
俺が直接やったことと言えば魚を焼いたことと芋を焼いたことくらいか?
カエデ「はーい」
ノックに応えてカエデが顔を出す。
相変わらず上だけのきぐるみパジャマだ。
ボタンをきっちり下まで留めて、ぎりぎりパンツが隠れる長さ。
アウラエルによるとカエデが無理に帰ろうするのを防ぐ意味もあるのだとか。
一樹「傷の具合はもうだいぶいいときいたから、装備を返そうと思ってね」
カエデ「ああ、体はもうまったく問題ない。世話になった」
一樹「帰る前にちょっと見て欲しい物がある。準備ができたら教えてくれ」
カエデ「わかった。すぐに準備する」
カエデの着替えが済むと、俺たちは川上の小屋に向かった。
ミカエルたちについては先に説明しておく。
一樹「カエデの国が戦場になっていると聞いて、なにかできないかと考えてね。だが、助勢しようにも俺たちは『領域』の外では戦えない。だから、せめて食料くらいは援助できないかと思ったんだ」
カエデ「せっかくだがこれ以上の施しは受けられない。気持ちだけ受け取っておこう」
一樹「そういわずに、里の子供たちの為に受け取ってくれないか?」
カエデ「子供たち?」
一樹「戦があったのなら田畑も備蓄食料もけっこうな被害があっただろうと思うんだ。飢えた子供たちがいるのだろうと思うとどうにも居たたまれなくてね。それで急遽この小屋を作り、皆で手分けして山の幸を集めたんだよ。まあ、うちには田んぼも畑もないから、大してうまいもんじゃないかもしれないけどね」
下心がないとは言わないが、子供たちが心配なのは本当だ。
カエデ「いや、そんなことはないと思う。皆きっと喜ぶ」
一樹「そうか、ありがとう」
カエデ「いや、こちらこそ。お気遣い感謝する」
一樹「それで、悪いんだけど、運ぶのはそっちでやってもらってもいいかな?」
カエデ「もちろんだ。それくらいはやらせてもらおう」
一樹「ありがとう。『領域』内なら俺が小屋ごと運んでもいいんだけど、外にとなると、情けないことに木箱1つ運ぶのもつらくてね」
カエデ「任せてくれ。この程度の木箱なら余裕だ」
一樹「それは頼もしい。じゃあ、これを預けておくよ」
カエデ「これは?」
一樹「この小屋の鍵だ。ここにある食料は全部持って行っていい。今はまだ少ないが、今も仲間たちが森の中で採集を続けている」
カエデ「いや、これだけでも十分すぎるほどだ。皆にはもう休んでもらってくれ」
一樹「その判断は里の状況を見てからでもいいんじゃないかな?鬼族の食料事情が今どうなっているか俺にはわからない。問題ないならそれでいいが、不足しているようなら、貰えるものはもらっておいたほうがいい」
カエデ「わかった。父に相談してみる」
一樹「そうしてくれ。それと、伝言をお願いしたい」
カエデ「なんだ?」
一樹「鬼族とはよき隣人でありたいと思っている、と」
鬼族とは友好的な関係を築きたい。
今後『領域』を西に伸ばす上での最重要課題だ。
カエデ「わかった。しかと伝えよう」
一樹「頼む。それともうひとつ。うちの『領域』にはジャイアントボアがいるらしいんだ。もし、塩を融通してもらえるなら、塩漬けにして提供しよう」
カエデ「わかった。本当に世話になった。この恩は必ず返す」
一樹「好きでお節介を焼いただけだ。そう硬く考えないでくれ」
カエデ「では失礼する。皆によろしく伝えてくれ」
一樹「わかった。気をつけて帰れよ」
木箱を1つ抱えたカエデは深々と礼をして去っていった。
ナッツの詰まった40cm四方ほどの木箱を抱え、飛ぶように山道を走る。
1週間前には死にそうだった者の姿とは到底思えない。
アウラエルの魔法がすごいのか、鬼族の体がすごいのか。
なるみ「かずきおにぃちゃん、冒険者だよ」
なるみの声が耳元に聞こえてくる。
一樹「パンジーとデイジーは無事か?」
なるみ「二人は退避したから大丈夫そうだけど、うちのダンジョンに向かってるみたい」
一樹「分かった。すぐ戻る」
転移したコントロールルームは、一時期よりは少しすっきりしている。
コントロールルームの両脇に小さな倉庫を作ったのだ。
というのも、最近は冒険者からの戦利品が増えてきたからだ。
ここしばらく、オーク部屋で命を落とす冒険者が多い。
彼らは広い空間でオークだけと戦うつもりで来ている。
しかも、いつでも撤退可能なつもりで来ている。
しかし、実際には狭い空間で忍者と挟撃される。
その上、背後の扉はロックされ、撤退もできない。
忍者を見た者を生かして帰すわけにはいかない。
しかし、死人を増やすことが目的ではない。
できればもっと手前、ゴブリンフロアで撤退して欲しい。
少し前にオーク部屋を覗き見て、そのまま入らずに撤退した冒険者もいた。
忍者は見られていないはずだが、扉増設の情報はすぐに共有されるだろう。
未帰還パーティーが出ていることもあって警戒され、対策されるはずだ。
そろそろまた1層と2層の強化を考えなければならない。




