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ミューズの旅

 夏希に会いに行く。

 夏希に会いたい。

 そして伝えたい。

 私とハーモニーとフォルテで決めたことを。

 女神よりも世界よりも、あなただけが大切だということを。


「見つからないなぁ」


 そう1人で呟く。

 夏希が出て行ってから結構経ってしまっている。

 もう街や村、場合によっては都市に到着していてもおかしくない。


 まずは夏希と会って話をするということでまとまった私とハーモニー、フォルテはそれぞれ1人で夏希を探すことにしていた。

 3人で同じところを探しても効率が悪いだけ。

 どの方向に夏希が行ったか分からないのだから、1人1人で別方向を探すのがいい。


「出現するモンスターが弱いところに庭を作っておいて本当に良かったよ。もし周りが強いモンスターが出たら夏希じゃ突破できなかった」


 ここら辺に出るのは主にツノウサギと、たまにゴブリンという程度。

 わざわざそういう所を選んで庭を作ったのだ。

 万が一夏希が外に出てしまっても安全なように。

 まさか本当に出てしまうとは夢にも思っていなかったのだけど。


 崖の下や小さな洞窟の中、地面の割れ目、川のそばなど、危なさそうなところを念入りに探していたらかなりの日数を浪費してしまった。

 もし出られないような所に夏希がはまってしまって困っていたら助けなくちゃならないからね。

 耳を澄ましながら、どんな小さな声も聞き逃さないようにしている。

 

 それでも、夏希は見つからない。

 こうなると、草原を探すよりも人のいる所に行ってみた方がいいかもしれないなぁ。

 いなかったら、また草原に戻ってきて探し直せばいいんだし。


「ここから1番近いのは、トリネロかぁ。うーん、叢雲がどういう判断をしているかだよね。七都市にいきなり夏希を連れていくというのはリスキーだし、叢雲が別の選択をしている可能性も高いんだよね。でも、他の小さな街や村をしらみ潰しに探すというのも時間がかかり過ぎるし……やっぱりまずはトリネロに行ってみてから、それから考えた方がいいか」


 うん、それがいい。

 叢雲がどういう選択をしたか分からないが、一番近い都市にまず入ってみるという可能性は高い。

 それにトリネロなら、しばらく労務に服すれば身分証明書が貰えたはずだから、それ目当てにトリネロに入ったという可能性も十分に考えられる。


「道中を楽しんで……っていう必要はないわよね。飛んでいこう」


 背中から白く透き通った羽根を出す。

 女神なら大抵の者が持つ能力。

 飛んで行けば、もし夏希がいれば上から見つけやすいし、何よりトリネロにすぐに到着できる。


「3時間ってところかな」


 もし夏希がトリネロにいるなら、あと3時間で夏希と会える。

 そう考えるといてもたってもいられなくなる。

 早く会いたいよ夏希。


「いっそげー! ……ん?」


 上空から、草原にある物を見つけ下に降りてみる。

 ゴブリンの死体だ。

 斜めに一刀のもと斬り伏せられている。

 死後かなり経ってしまっているようだが、この切り口は間違いない。


「こんなの、叢雲じゃなきゃ無理だよね」


 剣技は全然得意じゃないが、それでもそのくらいは分かる。

 どんな達人が持っても、ナマクラじゃ限界があるのだ。

 叢雲を振るった夏希がやったものと見てまず間違いない。

 そして、庭とこのゴブリンの死体がある場所の位置関係を考えると……やはりトリネロに行った可能性は高い。


「今行くよー!」


 もう間違いない。

 夏希はこの先のトリネロにいる。

 母の勘!

 女の勘!

 というかゴブリンが証拠だし!


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