第三話 『兄の大活躍(壱)』
本日三話投稿で、三話目です。
レイルは4歳になった。
これまでの4年間で身の回りのことや神助のこと、この国のことについて独学で勉強した。独学といっても、メイドさんに教えてもらったり父に教えてもらったりしたんだけど。
まず、この国の名前は、神聖弥栄皇国という。地図を見たが、ほぼ日本と同じ配置、形の島国だ。
首都はウキョウ。位置は東京と大体一緒。ウキョウの方が県土は大きい。
この国は多神教で、構成は日本の八百万の神に似ている。神話も古事記に似ている。国を作った神様は日本をモデルにしたのであろうか。
我が家はブレイクス家という。フギ県という県にある。名前からわかる通り位置は岐阜とほぼ一緒だ。
なんと我が家は代々宮廷魔術師や魔法使い最高位の称号である『魔人』の名を国から授かったりするような魔法使いを輩出するエリート一家であった。これを知った時、神助を得ることができなかった時のことを考えて身震いをしたことを覚えている。
家族構成としては、父のギャレク・ブレイクス。22歳。優しい一家の大黒柱。
母のミリア・ブレイクス。20歳。喉に怪我があり、喋ることができないが、4年も一緒にいたら何となく何が言いたいかくらいはわかるようになった。慈愛に溢れるママである。
兄のラウル・ブレイクス。5歳。ミステリアスな雰囲気を放つ人である。この三人。
他にメイドのレナアさん(赤髪)、イエルムさん(黄髪)、ブルムさん(青髪)の三人が家にいる。
レイルは密かに信号機三娘と読んでいる。全員前世の俺より若いのではないかと思う。
そして、異世界といえば剣と魔法である。
剣術には、古今一刀流と二剣一流という流派があるそうだ。剣術界の覇権を100年以上取り合っているらしい。
魔法使い一家のレイルにはあまり関係ないが。
お待ちかねの魔法についてである。この国の魔法の属性は、一般魔法として火、空、地、水、風があり、上位魔法に陽魔法、闇魔法がある。
さらに不可能とされてはいるが、無魔法というものもあるらしい。どういうものかはわからない。
魔法のレベルとして下から、初級、中級、上級、特級、聖級、王級、そして魔人。様々な種類の魔法が使えた場合は一番レベルの高い魔法を代表して名乗る。レイルの父であるギャレク・ブレイクスは、水、風魔法も使える地・火魔法特級魔術師である。
空魔法で雷とか使ってみたいな、と思った。
***
魔術の勉強を進めていたある日、父さんから明後日出かけるぞ、と言われた。
「なぜですか?」
「明後日はラウルの『降臨の儀』だからな。ヤーゴナの祠社に行くぞ。」
降臨の儀。神助があるかどうかを確かめる儀式のことだ。ちなみに祠社とは日本でいう神社と同じものだ。
「僕も行っていいんですか?」
ギャレクはにっこりと笑って言った。
「『降臨の儀』は家族全員で行くものなんだぞ。」
「そうなのですね。初めて街の外に出るので、楽しみです。」
そうと決まれば、どんな作法があるとかどんな所で行われるかとか後で調べよう、とレイルは思った。
***
3日後。
両親に準備してもらった服を着て出発した。出かける準備の時、初めて鏡を見たがかなりいい顔だった。髪は明るい茶色で、目は青っぽい。鼻は高く目も綺麗な二重であった。
移動は異世界らしく馬車だった。家からヤーゴナの祠社までは、30分ぐらいだそうだ。
レイルは兄のラウルに話しかける。ラウルと話すことはあまりない。庭でボーッとしているからである。
「兄様、今どんな気持ちですか?」
若干遅れて反応が返ってくる。
「ん?あー、そうだねぇ。あんまり緊張はしてないかな。神助は受けれたら光栄で受けられなかったら自分の力不足だからね。」
大人っぽい回答であった。ちなみにこのラウルもかなりのイケメンである。金髪の銀目。母のミリアも同じだから似たんだろう。
「まあ、現時点じゃ神助をいただける神様以外知りませんでしょうから、あまり緊張しなくても大丈夫ですよ。」
気楽に〜、と明るくブルムさんが言う。
この馬車はレナアさんとイエルムさんが運転してくれている。ブルムさんは馬を扱えないから車内にいるのだ。
実は、能天気すぎて厄介なことになってることが多々あるから、運転させてもらえないみたいな話を聞いたことがある。本人には怖くて聞けないけど。
「ブ、ブルムの言う通りだ。緊張したっていいことはないからな。」
ギャレクが言う。…が、一番緊張しているのはこの人だろう。声からバレバレだ。
「父様、声が震えていますよ。」
ラウルが言う。いや、言うなよ、とレイルは心の中で突っ込む。
「な、ななな、何のことだラウル!?」
この動揺し切った声にブルムさんが吹き出す。それを引き金に車内のみんなも一斉に笑い出す。
ギャレクは恥ずかしそうに照れ笑いをし、ミリアがふふっと微笑んだ。
***
約30分後。
家がある山の麓とは打って変わって都会の景色になったところで馬車が止まった。
「到着いたしました。」
とレナアさんとイエルムさんが扉を開けてくれる。
「お疲れだった、2人とも。」
とギャレクが労いの言葉をかける。
レナアさんが言う。
「私たちはブルムも連れて馬車を移動させておきます。終わり次第連絡をお願いします。」
「わかった。連絡をするまでゆっくりしておいてくれ。」
「承知いたしました。それでは、また。」
と三人は馬車に乗って離れていった。
ギャレクが俺たちに声をかける。
「それじゃ、祠社に移動しようか。」
歩いてここから2分ほどで着くらしい。
レイルは聞く。
「父様、ヤーゴナの祠社はどんなものなのですか?」
「ヤーゴナの祠社はな、『天宮』と呼ばれる国に24社しかない大事な祠社の一つなんだ。」
『天宮』。24社は奇遇にも日本の神宮の数と一緒であった。神宮が天皇家と関わりがあるように、天宮も国王と関わり深いのかもしれないと疑問に思ってギャレクに聞いてみる。
「皇王様と関わりが深いのですか?」
ギャレクはびっくりした顔で答える。
「よくわかったな!『天宮』は三貴神の一柱である弥栄の最高神『照貴神』の子孫である皇王一族と関わり深い場所に建てられるんだ。」
神宮と似ているようだ。日本だと愛知で神宮と言えば熱田神宮である、。草薙剣が祀られている神社であるから、こちらには聖剣でも祀ってるのだろうか。
「聖剣とか祀ってあるんですか?」
ギャレクはまたまたびっくりした顔で答える。
「何で知ってるんだ!?…まあ、その通りで神代の弥栄統一の時に『英神』様がおつかいになった『地破剣』が祀ってあるんだ。英神様の神助を受けた者が出たら、その剣を英神様に返すことになっている。」
まさにロマンの塊であった。予感的中したレイルは、その神助を受けれる人だったりしないかな…と淡い期待を抱く。
しかし、神様に対して無礼だと思い、ブンブンと頭を振って邪な考えを飛ばした。
***
「着いたぞ。ここがヤーゴナの祠社、『克駄天宮』だ。」
目の前には石造りの立派な鳥居(?)と豊かな自然が広がっていた。
俺たち4人は鳥居の前で一礼し、境内に入る。
長い石畳を歩き、拝殿前に着く。
かなり大きな拝殿であった。ブレイクス家もかなり大きいと思ったが、拝殿だけでさらにそれを超える大きさ。さらに懐かしい和風建築。前世日本の神社の風情が蘇ってくるようだった。
境内の中には家族連れが沢山いた。各々いい服を着ているから、貴族か何かなのだろうか、と思った。
拝殿の前には祭殿のようなものがあり、そこで宮司や禰宜と思われる人が準備している。
そんなことを考えて周りをキョロキョロと見回していると、ギャレクが話しかけてきた。
「どうだい、初めての祠社は。」
「とても広いですね。なんか落ち着かないです。」
「はっはっは。そうか。家の方が好きか?」
「そうではないんですけど、なんか落ち着かないです。」
レイル自身は前世で海外に行ったことはないが、この祠社の外は本物の洋風建築だから、チグハグな感じが否めなかった。
ギャレクは話題を変えてレイルとラウルに言った。
「それはそうと、『降臨の儀』の時にラウルの名前が呼ばれたら家族全員で前に出て俺と母さんとレイルはあの箱の2歩ほど前に立つ。その時ラウルだけは箱の一歩手前に行って宮司さんの指示に従うんだぞ。」
「はい!」「はあい」
そして、降臨の儀が始まった。
宮司さんが呼ぶ。
「ラウル・ブレイクス、前へ!」
出番は最初であった。ラウルがんばれ!と心の奥でエールを送りながら祭壇の前に行く。
祭壇ーーというより日本の神棚は拝殿より5メートルほど手前にあり、何と空中に浮いていた。
台の上には『七百万の神』と書かれた札や榊のような植物が白い花瓶に生けてある。
神棚の一歩手前に賽銭箱のような箱があり、その上に大きな翡翠の玉が置かれている。その翡翠の後ろに宮司さんと紙垂を持った禰宜さん2人がいる。
ブレイクス家一行は、賽銭箱風の一歩手前に立ち、ラウルだけが翡翠の前に出る。
二礼二拍手をし、頭を下げる。その瞬間、境内は水を打ったように静かになり、こちらに注目する。
そして、宮司さんが祝詞のようなものを読み上げる。
「かけまくもかしこき神々、現人神にあられる皇王陛下よ!」
一陣の風が吹き抜ける。
「梛原中国にましましてーー」
風が強くなり、場の静寂の中に音が落とされる。
「このものに多大なるお力添えをくださらんこと聞こしめせとーー」
刹那、何と翡翠が光り始めた。暖かい光が視界に点として映る。
「恐み恐み申す!」
言い終えたところで、点のように小さかった光が徐々に大きくなり、最初にラウルを包み、その勢いで後ろのレイルたち、遂には拝殿前全体を包み込んだ。
光は温かく、しかしやんわりと視界を抑えてきた。目を開けることができず、平衡感覚が失われ、宙に浮いたようになっていく。
(何だこの光…。これが神の放つ光なのか…?ただただ暖かい…。)
心が落ち着いてくる。ずっとこのままでいたいと思うほど心地が良かった——。
いつの間にか光は止んでいた。目を開けて箱を見る。翡翠は無くなっていた。
その代わりに目の前にはーー
黄金のオーラを纏ったラウルが佇んでいた。
お読みくださりありがとうございます。




