第20話 戦いの余韻
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その日の晩、ユーゴは父ジョージに今日一日の出来事を話していた。アイラの遅刻の話から始まり、ハインに教えて貰った素材採取のコツの話まで。
咄嗟の判断が出来ず、ゴブリンアーチャーの矢で死にかけた話をした時には『初動が遅いのは、緊張感が足りないからだっ』とゲンコツを貰った。めちゃくちゃ痛かったが、ユーゴは父なりの愛情を感じた。
実は父さんとハインさんは短い期間だが同じパーティにいた事があるらしい。この日の父さんはお酒も入って上機嫌だったのか、昔のことを少しだけ話してくれた。
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「何ぃーっ!俺が若い頃によく魔物を真っ二つにしてたって?アイツ余計なことをペラペラと」
ジョージは息子の初戦利品であるゴブリンリーダーの魔石を弄りながら、楽しそうにそう答えた。
「もしかしてあの剣がそうなの?やたらと切れ味が良かったけど。アイラさんの見立てだと絶対エンチャントが付いてるってさ」
「ああ、こないだお前にやった剣か。確かにそんな付与がついてた様な……忘れちゃったよ。しかし矢を掴んで止めたり、エンチャントに気付くあたりアイラも腕を上げたんだな〜」
実はジョージはアイラの腕を信用していた。何故なら以前、ユーゴと同様の稽古をつけてやった事があるのだ。
「うん、凄かった。ハインさんの風魔法も一撃でゴブリンアーチャーを仕留めてたしね」
「風魔法ねえ、でもアイツ学者肌だろ?実際攻撃魔法はそんなに得意じゃねーんだよなー」
「えっ、アレでそうなの?それで薬屋さんなのか」
「エルフってのは人間の四倍は生きる種族だからな。100歳までは子供扱いで村から出られねーのさ。だから本格的に魔法なんかを覚えるのはそれからっていう事だ。
アイツは元々薬師になりたくて村の外に出た変わり種でな、稼げる様になるまでは俺のパーティにいたって訳さ。
歳ばっかり食ってるけど、エルフの100歳なんてマジで世間知らずのガキと変わらねーからな、出逢って最初の頃は俺も苦労したんだぜ」
「なるほど、そういう訳なんだね」
「意外だな、お前ハインの歳聞いて驚かねーのな?」
「えっ?いやっ、驚いたよ。でも本でエルフの長寿は知ってからさっ」
「いや俺も後で知ったんだけどな。流石に本人から初めて聞いた時、固まっちゃってさあー。ロリババアって言ったらひっぱたかれたわ。ハハハ」
「あはは、でもハインさんって父さんの話になるといつもはぐらかすんだよなあ、何でだと思う?」
「あー?そんな事俺が知るかっ、なんだか飲みすぎたな。明日も早いんだから早く寝るぞ」
ヒョイっと、魔石を僕に投げ返す。
「う、うん、そだね。ちょっと話聞けて面白かったよ、おやすみなさーい」
「おう、よく休めよっ」
(もしかして二人は当時付き合ってた!?なんて聞けないよな……)
ユーゴは何となく大人の事情を察して、そそくさと部屋に戻った。その日は命のやり取りをしたせいで、興奮してなかなか寝付けなかった。
ハインの風魔法を初めて見たせいか、この世界の魔法について気になり始めたユーゴはどうせ眠れないのならと、魔法概論を本棚から取り出し読み始めた。
ざっくりと読んだ感じをまとめると、魔法には属性がある。いわゆるお馴染みの4大属性と言われる
火魔法
水魔法
風魔法
土魔法
それに光と闇を加えた六大属性の魔法がこの世界には存在する。僧侶が使う治癒魔法などが光魔法にあたる様だ。逆に闇魔法はネクロマンサーが死者を操ったりするやつだ。付与魔法にはこれらとはまた少し違うスキルが必要らしい。
魔法を使うには魔力が必要で、魔力は自然界の全てのものに宿り、空気の様に存在している。また魔力が結晶化したものは魔石と呼ばれ、魔導具の動力などに使われている。ちなみに魔物とそうでない動物の違いは魔石を持つかどうかが、一つの基準になっているようだ。
どちらにせよバーテンダーのユーゴが使うのは火や水の初級生活魔法くらいであろう。しかし将来蒸留器を設置したりするのならば、土魔法くらいは出来た方が良いのかも知れない。そもそも製氷機すらない時代なので、水魔法の上位に当たる氷魔法まで習得する必要があるのだろうか?
錬金術を使うにも魔力が必要な事から、まずは魔力の感じ方や魔力の操作の仕方などから覚える必要があるだろう。
そんな楽しい妄想をしているうちに、ユーゴは疲れていたのであろう、いつの間にかぐっすりと眠っていたのだった。
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