第九話 帰宅ラッシュ
※本作品はフィクションです。
登場する人物・団体・企業・鉄道・駅名・路線・車両などはすべて架空のものであり、実在するものとは一切関係ありません。
夜空を彩っていた最後の花火が打ち上がり、大きな拍手と歓声が舞川河川敷に響き渡る。
それと同時に、花火を見終えた大勢の利用者が一斉に舞川駅へ向かって歩き始めた。
『司令長、舞川駅周辺の利用者が一斉に移動を開始しました。』
司令室のモニターには、駅前のライブ映像が映し出されている。
改札前には長い列ができ始め、駅係員が拡声器を手に利用者を誘導していた。
『ホームの混雑率、七十五パーセントです。』
『まだ余裕はありますが、このあと一気に増加する見込みです。』
司令長はモニターから目を離さず、静かに指示を出す。
『計画どおり進めます。臨時列車第一便、発車してください。』
『了解。』
無線が鳴る。
『舞川駅、こちら運転司令。』
『舞川駅です。』
『三番線の臨時列車を予定どおり発車させてください。』
『了解。ドア扱い終了後、発車します。』
数十秒後。
『三番線、臨時列車発車しました。』
『了解。引き上げ線の編成を三番線へ移動させてください。』
『進路設定します。』
モニターには、引き上げ線で待機していた臨時列車がゆっくりと三番線へ進入していく様子が映し出される。
その頃、舞洲車両センター。
『運転司令より連絡です。回送第一便9501Mを舞川駅へ送り込みます。』
了解。回9501M、出発準備完了しました。』
『出発してください。』
『回9501M、出発。』
静かだった車両センターから、一編成の回送列車が夜の舞洲本線へ走り出した。
司令室では次々と報告が入る。
『司令長、舞川駅ホーム混雑率九十五パーセント。』
『改札前も大変混雑しています。』
『駅係員より入場規制実施の要請です。』
司令長は即座に答えた。
『実施してください。ホームの安全を最優先に。』
『了解。入場規制を開始します。』
駅では係員が利用者へ呼びかける。
『安全確保のため、順番にご案内します。』
『係員の案内に従ってお進みください。』
列はゆっくりと進み、ホームでは到着した臨時列車へ多くの利用者が乗り込んでいく。
『三番線、乗車率ほぼ一〇〇パーセントです。』
『ドア閉めます。』
『臨時列車、発車しました。』
『引き上げ線の編成を三番線へ。』
『了解。』
ほぼ同じタイミングで新たな報告が届く。
『司令長、回9501Mが舞川駅接近中です。』
『四番線到着後、引き上げ線へ収容してください。』
『了解。』
司令長はモニターを見つめながら口を開く。
『列車を切らさないでください。』
その一言に司令室全体が引き締まる。
『はい!』
担当司令員たちは次々と進路を設定し、駅や車両センターへ連絡を続ける。
舞川駅では一本の列車が発車すると、すぐに次の列車がホームへ入り、さらにその後ろから回送列車が送り込まれる。
利用者を待たせないための運転整理が、休むことなく続いていた。
夜が深まるにつれ、司令室の緊張感はさらに高まっていく。
しかし、その誰もが同じ思いでモニターを見つめていた。
「最後のお客様を、安全に目的地まで送り届ける。」
その使命を胸に、舞洲鉄道の長い夜は、まだ終わらなかった。
第九話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、花火大会終了後の帰宅ラッシュを描きました。
一見すると「列車が次々と来るだけ」のように見えるかもしれませんが、その裏では司令室や駅係員、車両センターなど、多くの人が連携しながら運行を支えています。
今回登場した回送列車や引き上げ線も、大勢のお客様を安全かつスムーズにお帰りいただくための大切な役割を担っています。
次回は、花火大会輸送の締めくくりとなるお話を予定しています。
最後の一本まで安全に運行を続ける司令室の姿を、ぜひ見届けていただけるとうれしいです。
次回、第十話もよろしくお願いします。




