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Vtuberになったのに裏方をしてます  作者: 東海林


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9/29

9話

午後三時。


珍しく、俺は配信も仕事も無かった。

正確には、無理やり空けた。


案件編集は昨日終わらせたし、動画予約も済んでいる。

だから今日は休み。


……まあ、完全な休みではないんだけど。


「伊織、本当に休み取ったんですね」


事務所エントランス。

真琴が少し意外そうに言った。


「俺だって休みますよ」


「半年ぶりくらいでは?」


「そんなに?」


「そんなにです」


否定出来ない。

Vtuberって、家で仕事出来る分、逆にずっと働けてしまう。


配信、編集、サムネ、確認。

気付けば終わらない。


「で」


真琴がこちらを見る。


「今日はどこ行くんです?」


「あー……ちょっと知り合いの所」


「珍しい」


それは本当にそう。

俺はあまり外へ出ない。


他事務所との交流も少ない。

コラボもしない。

業界イベントも最低限。

だからこそ。


「……友達居たんですね」


「失礼だな?」


真琴が少し笑った。


「何時戻ります?」


「夜には」


「分かりました」


軽く手を振って事務所を出る。

そして電車を乗り継ぎ。

向かった先はRe:Burst本社。


ゲーム系に強いVtuber事務所。

FPSや大会系で有名な箱だ。


俺がエントランスへ入ると、受付スタッフがこちらを見る。


「えっと……」


「あ、焔崎さんに呼ばれてます」


「……焔崎さん?」


「鬼灯ガクです」


「あっ」


名前を出した瞬間、納得した顔をされた。

まあ、そうなるか。


鬼灯ガク。

本名、焔崎岳。


Re:Burst所属の人気Vtuber。

そして、俺の数少ない友人だった。


「伊織ぃぃ!!」


エレベーター前。

大声、でかい。


「うるさ」


「久々じゃねぇか!」


ガクが豪快に肩を組んでくる。

身長高い、声でかい、距離近い。

全部うるさい。


「なんでお前毎回元気なんだよ」


「お前が陰キャすぎるだけ!」


「否定しにくいな……」


そのままRe:Burst内部へ。

LIVENTOとは空気が違った。


向こうよりもっとゲーム寄り。

モニター、大会配信。

ストリーマー文化。


体育会系っぽい騒がしさもある。


「で、今日は何するんです?」


「ん?」


ガクがニヤつく。


「遊ぶ」


「雑」


「あと相談」


「嫌な予感するな……」


すると。


「鬼灯さーん、会議……って」


廊下の向こうから別の男が来た。

天狼シュウ。

本名、三上修哉。


Re:Burst所属V。

そして。


「……え?」


止まった、俺を見る。


「……クロ?」


「どうも」


「なんで居んの!?」


まあその反応にはなるか。

配信者同士でも、リアルで会う事は少ない。

しかも当然Vtuberだから、互いの素顔は知らない。

だからシュウも、久しぶりにクロの中身を見ている。


「いや待って待って」


シュウが混乱していた。


「マジでクロなの!?」


「マジですね」


「え、普通に男前じゃん」


「やめろ」


「もっと陰キャだと思ってた!」


「そこは否定する」


ガクが横で爆笑している。


「お前ら反応おもしれぇな!」


「いやだってクロだぞ!?」


シュウがまだ驚いていた。

すると。


「……騒がしいと思ったら」


更に奥から女性の声。

Re:Burst所属V、黒羽ノア。


本名、黒羽乃愛。


FPS系女性V。


「……あ」


止まる、俺を見る。


「クロさん?」


「どうも」


「……本物?」


「偽物だったら怖いだろ」


「いやでも……」


ノアが少し笑った。


「なんか思ったより普通ですね」


「それよく言われます」


最近本当に多いなそれ。


「で」


数十分後。

Re:Burst休憩スペース。


ガクが缶コーヒーを投げて寄越す。


「伊織」


「はい」


「来月、マリカ大会ある」


「嫌な予感」


「出ろ」


「嫌です」


「即答すんな!」


やっぱりそれか。

Re:Burst主催、大型マリオカートイベント。


箱内イベントらしい。


「いやお前んとこだけでやれば良くないです?」


「一人足りねぇ」


「知らんがな」


「あと借りあるだろ」


「……」


それを言われると弱い。

昔、俺が機材トラブルで死にかけた時、ガクがかなり助けてくれた。

あの時の借りはまだ返してない。


「しかも」


ガクが続ける。


「外部枠お前だけ」


「は?」


「Re:Burstメンバー+クロ」


「なんで?」


「面白いから」


「雑すぎる……」


でも少しだけ興味はあった。

マリカ大会自体は嫌いじゃない。


コラボも、ゲームなら比較的やりやすい。


「……いつです?」


俺が聞くとガクがニヤッと笑った。


「出る気になった?」


「借り返すだけです」


「はいはい」


完全に見抜かれていた。


もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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