56話
配信終了。
『おつしずでしたー!』
画面終了。
コメント欄が流れていく。
しずくは大きく息を吐いた。
「……楽しかったです!」
「元気ですねぇ」
「休日パワーです!」
かなり楽しそうだった。
真琴が横で少し笑う。
「今日はずっと元気ですね」
「だって遊んで配信してますし!」
「犬だなぁ」
「違います!」
でも否定の勢いが少し弱い。
「で」
俺は時計を見る。
夜十一時過ぎ。
「飯どうします?」
「あ」
しずくが止まる。
「そういえば食べてない……」
「配信してましたからね」
「伊織、何かあります?」
真琴がキッチンを見る。
「冷凍くらいなら」
「じゃあ作ります」
「真琴さん料理するんですか!?」
「普通にしますよ」
しずくが少し驚いていた。
真琴はかなり慣れた動きで冷蔵庫を開く。
「伊織、卵使いますね」
「どうぞ」
「ネギ切ります」
「お願いします」
自然、かなり自然。
しずくが静止していた。
「……」
「……?」
「なんかもう夫婦みたいですね……」
「違います」
「違います」
また揃う。
一瞬静止。
そしてしずくが爆笑した。
「ほんと毎回揃う!!」
「狙ってないんですよ」
真琴まで少し笑っていた。
数十分後。
テーブルに夜食。
チャーハン、スープ。
「美味しそう……!」
しずくの目がかなり輝いていた。
「真琴さんすごい」
「簡単なものですよ」
「いただきます」
三人で食べ始める。
かなり静か、落ち着いた空気。
しずくが一口食べて。
「……美味しい」
「良かったです」
「真琴さん何でも出来ますね」
「伊織が生活能力低いので」
「言い方」
「事実です」
否定しにくい。
しずくが少し笑う。
「クロさん一人だとどうなるんです?」
「編集しながら寝ます」
「終わってる」
「だから私が近くに住んでるんです」
「納得しました……」
真琴が居なかったら、生活リズム終わってそうだなと。
しずくは本気で思っていた。
「でも」
しずくが少し静かに言う。
「なんかいいですね」
「?」
「こういうの」
普通の夜。
配信終わり。
夜食、雑談。
かなり穏やかだった。
「……まあ」
俺はスープを飲む。
「騒がしくはありますけど」
「誰のせいですか?」
「しずく」
「ひどい!?」
真琴が吹き出していた。
でもその空気はかなり柔らかい。
昔の自分ならこういう時間は無かった気がする。
人を家へ呼ぶことも、配信以外で一緒に居ることも。
だから少しだけ不思議だった。
でも悪くないと思ってしまっていた。
その時、しずくが小さく欠伸をする。
「……眠いです」
「そりゃそうでしょうね」
真琴が時計を見る。
「もう0時ですし」
しずくは少し悩む。
そしてこちらを見る。
「……泊まっていいですか?」
「またです?」
「だめですか……?」
その顔かなり犬。
真琴がまた笑っていた。
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